辺野古海上の
ボーリング調査に
「警告」
八月一三日、「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団準備会」(ヘリ基地反対協、平和市民連絡会、ジュゴン保護基金委員会、ジュゴンネットワーク沖縄の4団体で構成)は、那覇防衛施設局に対して、辺野古沖合のボーリング調査を行わないよう求める警告書を提出しました。
ご承知の通り、辺野古海上にはジュゴンが生息しています。ジュゴン生息地の北限が沖縄とされており、国の天然記念物に指定されています。また、ジュゴンは、国やIUCN(国際自然保護連合)等のレッドデーターブックで絶滅危惧種に指定されており、緊急かつ実効的な保護施策が必要な生きものです。
今回那覇防衛施設局が予定しているボーリング調査は、辺野古海域の六三箇所で行なわれる見込みです。調査予定地には、ジュゴンが目撃された地点や、ジュゴンの餌場となる藻場が含まれています。ボーリング調査は、周辺の環境を著しく損なうため、騒音や環境の変化に敏感なジュゴンが生息環境を失い、絶滅することにもなりかねません。また、このボーリング調査は海上基地建設の端緒です。海上基地建設は、辺野古の海だけではなく周辺のすべての自然環境や生態系を永久に破壊するものです。これはジュゴンの絶滅だけでなく、自然とともに培われてきた地域の生活や文化を破壊するものです。
今回の警告書は、県内外の一五名の弁護士の連名で作成されており、ボーリング調査が文化庁長官の許可を受けずに行なわれようとしている点や、調査がジュゴンの生存や周辺海域の自然環境を破壊するものである点を明確に指摘し、仮に、那覇防衛施設局がボーリング調査を強行した場合は、文化財保護法等違反で刑事告発することを警告しています。
一三日の警告書提出行動は、弁護団や前記四団体のメンバーが参加しました。那覇防衛施設局側は広報室長が対応しましたが、事務的に警告書を受け取り、「上司に報告する」と述べただけの極めて官僚的な対応でした。
なお、ボーリング調査の実施にあたっては、海域の岩礁を破壊しなければならないため、調査実施者である那覇防衛施設局は、「漁業調整規則」に基づく沖縄県知事の事前許可を得なければなりません。ところが沖縄県は、「日米安全保障の公益性を考慮して(中略)県知事の許可手続きは必要ない」とし、ボーリング調査にゴーサインを出しました。沖縄県の対応は、「漁業調整規則」違反の不法な行政行為です。この沖縄県の対応に対して、ヘリ基地反対協が抗議を行っています(七月二八日)。
ここ数年間で沖縄の基地問題をめぐる状況は、以前にも増して困難な様相を呈してきているように思われます。それは、基地問題と沖縄社会の抱えるさまざまな問題(例えば、経済や雇用問題等)が、複雑に絡み合っていることによるものだと思います。そのように認識した上で、「それでは、海上基地建設を阻止するためにはどうしたらよいか」を考えた場合に言えることは、あらゆる場面での闘いや取り組みをていねいに実践していくことだと思います。基地・軍隊の存在を許さない闘い、地域の生活や文化を守る取り組み、公共投資に依存しない地域社会を模索する取り組み、労働運動、人権を守る闘い、自然を守る取り組み等々、狭い沖縄でも課題は山積しています。今すぐには実現困難かもしれませんが、これらの闘いを総合的に担う運動の構築あるいはネットワーク作りが必要な時期に来ていると思います。
その意味において、今回の「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団準備会」の活動は、沖縄の運動に新たな画期を切り開く動きであり、皆で積極的に支えていくべき取り組みと言えるでしょう。
本永 春樹
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