【書評】
『阿波根昌鴻 その闘いと思想』
佐々木辰夫著
阿波根昌鴻さんの本が出るので、推薦人になって貰いたいとの電話があって、著者や、出版社について何も知らないまま、承諾の返事をした。阿波根さんの反戦地主としてのその足跡については、自著を含めてすでに何冊かの本が出ているが、亡くなってしまった今というこの時点で、新たに一冊が加わるのはいいことだという気軽な気持ちで受けた。
寄贈された本の目次を眺めていて、巻末の参考資料「阿波根喜代さんの証言」が目に留まった。九一年の反戦地主に対する「不当課税取り消し裁判」以来、昌鴻さんと共に軍用地の所有者として名を連ねている喜代さんがどんな方か気になっていたので、まず、この部分から読んだ。この参考資料で、喜代さんが昌鴻さんと共に闘いを続けた気持ちがしっかりわかったような気持ちになった。この証言は類書では得られない内容で、阿波根さん夫妻の一九五〇年代から半世紀に及ぶ「反戦」と「平和な世界」を求める闘いが、自然な流れとして発露したものであると納得させられた。
昌鴻さん自身についても、一点の揺るぎも見えないその強い生き方に、私はこれまで、深い敬意を払いながらも、近寄りがたい違和感を持っていた。この本の「農本主義と農本ファシズムをめぐって」という節を読んで、阿波根さんも普通の人だったのだなと、親近感を持てるようになった。
人によって受け止め方はさまざま、私とは違う読み方になる人もいるだろうが、まずは一読を勧めたい。
(U)
スペース伽耶 星雲社(発売)
本体2200円 21cm 243p
ISBN4-434-02964-9
阿波根昌鴻さんの本:
- 『命こそ宝―沖縄反戦の心』 岩波新書
阿波根昌鴻 (著) ISBN: 4004302498
- 『米軍と農民―沖縄県伊江島』 岩波新書 青版
阿波根 昌鴻 (著)岩波書店 ; ISBN: 4004111048
- 『沖縄反戦地主・こころの源流―フォト・ドキュメント阿波根昌鴻』
真鍋和子 (著), 相原 宏 ふきのとう書房 ; ISBN: 4795260990
- 『反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘い』高文研
亀井淳 (著), 伊江島反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」
ISBN: 487498214X
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