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第136号(2002年5月28日発行)

【新刊紹介】

『イスラエル・パレスチナ
平和への架け橋

 二〇〇一年五月、世界一周の旅に出たピースボートの船上で、ある「出会い」があった。パレスチナ人の青年ラミと、イスラエル人の女性ケレン。二人は、ピースボートが企画した「インターナショナル・ステューデント(国際学生)」として招かれたのだった。

 ラミは二三歳。「パレスチニアン・ビジョン」というNGOでパレスチナ人の現状を世界にアピールする活動をしていた。彼は「イスラエル人だけに都合のいい情報を流されてたまるか。僕がパレスチナの置かれている本当の状況を伝えるんだ!」という信念のもとに乗船を決意した。一方のケレンは二〇歳。複数のNGOで活動する「フリーランスの平和運動家」で、パレスチナ人との共生を目指す運動を模索していた。このようなイスラエル人は非常に稀な存在と言える。

 二人は故郷にいる限り、出会って友だちになるチャンスはなかった。その二人の、船上でのぎごちない「はじめての握手」。そして船内でイスラエル・パレスチナ問題の講座を開く中で、乗船者たちに問題を知らせるために共に苦心惨憺し、次第に人間同士の信頼と友情をつちかっていく。その過程で、ラミはイスラエル警察に投獄された十代の経験を語る。それは日本人の若者には衝撃的だった。

 こうした学びを経て、ピースボートはイスラエルとパレスチナ難民キャンプを訪れる。厳しい検問、弾痕生々しい家に住むパレスチナ住民、難民キャンプの壁に書かれた故郷の家の鍵の絵、「夢は自分の国をもつこと」と言うキャンプの子どもたち。こんなことが実際にあるのか…日本人参加者たちは今まで考えもしなかった事実にふれ、イスラエル・パレスチナを身近な問題として感じはじめる。

 ラミとケレンもまた、他の紛争地域から来た国際学生や乗船者たち、各寄港地から多くのことを学んだ。船から降りたあと、二人はパレスチナ人とイスラエル人の若者が交流し、信頼関係を築く場をつくる活動を始めている。イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫する中、二人の活動は、もしかしたら政治家同士の交渉よりも明日の平和への可能性につながるのではないかと思わせる。そして二人に出会った日本人の若者たちも、それぞれの活動を模索してゆく。「出会い」――それは希望の種子であったのだ。

 やんちゃなラミ、お茶目なケレン、国際学生たち、日本人の若者、それぞれの個性を生かした瑞々しい文章を書いたのは、自身も二十代であるピースボートスタッフの高橋真樹さん。この出会いを何とかして伝えなければいけない! と、突き動かされるような思いで執筆したという。この本に出会う多くの人びとが、希望の種子を受け取って撒くことで、イスラエルとパレスチナの和平をつくるきっかけになれば良いと切に願う。
                  (芦澤礼子) 

高橋和夫監修/ピースボート編
高橋真樹著
高文研刊
四六版 255ページ
本体価格1600円
ISBN4-87498-283-2