後藤聡の
沖縄・新刊案内

◆沖縄県史ビジュアル版９　近代２『旧南洋群島と沖縄県人　-テニアン-』沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室　沖縄県教育委員会発行　二〇〇二年二月一二日　五〇〇円　問合せ先=098-888-3939
　沖縄の「島唄」の「南洋小唄」には、「サイパン、テニヤン、ロタ、パラオ」という歌詞がある。戦前の沖縄は、南洋移民を抜きに語れない。膨大な写真、地図などビジュアルに見せる。「移民」名簿には多くの朝鮮人の名もある。

◆沖縄県史　資料編１４　現代２『琉球列島の軍政1945-1950（和訳編）』沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室　沖縄県教育委員会発行　二〇〇二年二月二六日　三〇〇〇円　問合せ先=098-888-3939
　これは「米国陸軍歴史編纂所」一九八八年発行の翻訳で、戦後沖縄の、初期の米軍の民衆支配の様子がわかる。　

◆沖縄県史ビジュアル版１０　近代３『空から見た昔の沖縄　-沖縄島中部・南部域の空中写真-』沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室　沖縄県教育委員会発行　二〇〇二年二月二七日　五〇〇円　問合せ先=098-888-3939
　もちろん、撮影したのは米軍で、一九四五年一月から二月にかけて沖縄中南部全域を網羅している。今、米軍基地になったままの土地も、集落があり、人々の生活があったのだ。

◆『沖縄独立宣言　-日本連邦・琉球王国の王様になる？』上野健一著　心泉社　二〇〇二年三月七日　一四〇〇円　ISBN4-916109-35-X
　テレビ番組「マネーの虎」をご存知だろうか。上野は「虎」で、年商一〇〇億の会社代表。浦添出身で、もちろん沖縄への思いは強い。論理はめちゃくちゃで、彼のお友達一覧にも、旭鷲山からデビ夫人、共産党から自民党の国会議員とわけがわからない。しかし、上野は「沖縄の自治独立を考える会」準備委員としてまじめに考えている。でも、こんな計画では「虎」は金を出すまい。
　
◆『沖縄版　相続税の実際　-トートーメー（位牌）に相続財産がついてくる！-』山内著　草輝出版　二〇〇二年三月一二日　一八〇〇円　ISBN4-88273-069-3
　日本国の民法は、もちろん、とりあえず沖縄でも通用する、はずなのだが、沖縄の相続問題を理解するには、　琉球王国の家系承継／トートーメーとユタ／門中の財産承継／所有者不明用地と相続／軍用地と相続税評価／沖縄の特殊土地問題／日本復帰前の税制／海外移住者と相続　などのファクターが必要と著者は語る。基礎知識に事例、検証、用語解説、そして「しーぶん」もところどころにある。山内は那覇で活躍中の税理士。在ヤマトのウチナーンチュで財産が心配な方は著者まで連絡されたし（tadashit@ryukyu.nejp）。

◆『史料編集室紀要』第二七号　沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室　沖縄県教育委員会発行　二〇〇二年三月二六日　非売品　問合せ先=098-888-3939　ISSN 0914-4137
　二〇編の論文等は、古代から近代にいたる。それぞれ内容深いのだが、もっと活用する方法はないだろうか。個人的には吉浜忍「米軍上陸前後の日本軍ー第二四師団山第八九連隊　『陣中日誌』に見る日本軍の対応ー」、今泉裕美子「日本統治下ミクロネシアへの移民研究」などが興味深い。

◆『2001　沖縄県民意識調査報告書　-調査期間01.12.7〜9-』琉球新報社　編集発行　二〇〇二年四月五日　九五〇円
　二〇〇二年元旦号に掲載された新報記事及び考察記事をまとめたもの。地元紙なのだから、このようなアンケートは定期的に、継続して行われるべきだろう。

◆『泡瀬干潟　-春-』泡瀬干潟を守る連絡会　二〇〇二年四月一四日　五〇〇円　問合せ先=098-921-4455
　三〇頁あまりのパンフレット。二九〇ヘクタールの干潟で沖縄で一番大きい。一八五ヘクタールを埋め立て開発するんだと。きれいな、青い海、の沖縄だが実際はあっちもこっちも埋め立てられ、本土リゾートが買い占めている。あげく「カジノ」誘致までもくろんでいる。小橋川共男の写真が美しい。

◆『沖縄の歴史と旅』陳舜臣著　ＰＨＰエル新書　二〇〇二年四月一九日　八六〇円　ISBN4-569-62042-6
　学術書でもないし、紀行文というわけでもない。分野の広さと量のエネルギーは大したもの。ねたもと、は、高良倉吉だな。「廃藩置県で国王が王宮を退出した……」（一〇二頁）、それを「琉球処分」という、ことは出てこない。ま、沖縄の行き帰りに、睡眠導入として読んだらいい。