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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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第131号(2001年12月28日発行)

 反戦地主の生き方に学ぶ

 私たち一坪反戦地主は、これからどのような状況になろうと、戦争に反対し、反戦地主と共に歩んでいくことが必要だと思っています。そこで、改めて会員・読者に対して反戦地主の生の声をできる限り伝えていくために、この企画を立てました。今回は米軍用地特別措置法違憲訴訟判決の日に真栄城玄徳さん、知花昌一さん、平安山良有さん、謝花悦子さんにお話を伺いました。
 (本文敬称略、聞き手・テープおこしはI)

●平安山良有(へんざん りょうゆう):伊江島補助飛行場地主。沖縄戦時は小学校一年、米軍に慶良間・今帰仁へ連行される。甥の良福さんは演習地外で演習弾にあたって死亡、反戦地主の意思を貫く。
●謝花悦子(じゃはな えつこ):伊江島補助飛行場地主。四歳時に発病、激しくなる沖縄戦のため治療を受けられずに熱と激痛に苦しむ。「反戦平和資料館・ヌチドゥタカラの家」責任者。
●聞き手: I 関東ブロック運営委員。嘉手納共有者。沖縄と本土を振子のように往復。


◆    今日の判決について、どう思われましたか。

★平安山
    私たちが当然勝つはずだと思っていました。このような判決を受けて、憲法より安保を優先する裁判官の姿勢がよくわかりました。

★謝花
    今日の判決で国内の犯罪が増えることは当然のことだと思いました。盗んだ人には罪はなくて、盗まれた人の方が悪いというような結果だったという報告を受けまして、子供たちが悪いことをしても大人がそれを戒める資格はないんじゃないのかな、裁判官がこのような判決をくだすようであれば、今のような政治では良心的な国民を罪人に落とすんじゃないかな、とそういう感じがしました。良心をもっている国民を罪に陥れる。国の側を理解する人を優先する。裁判といっても権力と国を守ることを中心にしているという気がしました。今日の八名の原告と弁護団、支援者の方々が、大変な時間と苦労をかけてこられたのにこの結果です。これから先どうすればいいのかなと思って、とても苦しい思いです。

 今日は名護のほうで全国平和大会が行われます。そこの場でも勉強したい。どうすればこのようなことを乗り越えられるかということを考えたいと思います。今日のことについてはとても理解できません。何が正しく何が悪いものであるか、私自身もわからなくなりました。


◆    現在の沖縄の状況について、どう見ていますか。

★謝花
    戦争前の五六年前の状況(と同じ)ではないかと思っております。あのときに戦争はこわいとか、戦争をするために伊江島に工場を造るとか、そういったことがあっても誰も反対運動をやった人はいません。心配もありませんでした。そういうような中でいろいろなことが行われて、それでも「大丈夫」ということを言われたように覚えております。今、事実を押さえて「大丈夫さ」という、知事を含めアピールに行っているという、あのあほらしいやり方。大丈夫だよと言ったら大丈夫、危険だよといったら危険、それを信じるような、そんな国民になってしまっているのかと思っています。戦争というのは愚民を作らなければいけませんから、あの支持率を見たときに、いかに愚民が作られたかと感じます。

 みなさんのような平和運動家の先輩たちの良心的な闘いがあったから、この五六年間日本は戦争というものを起こさないですんだと思います。だが日本は戦争以外の歴史を知りません。ずっと戦争だけをやってきて、今日まで反省をしない、痛みがわからない国、政治だと思っています。だがこの政治家は誰が作ったのか、それは国民でありますから、その国民のひとりとして反省もするし、国の政策を最近悩んでいる状態です。

 沖縄が危険であることは誰の目からもわかるとおりです。病気なら危篤ですね。私は朝になると「殺されなかった。無事だった」といつも思います。戦争を経験してきましたからね。大丈夫さと言って押さえておいて、突然殺される、殺される寸前まで大丈夫だよというような今のやり方です。とても大変なことです。そういうことを本土からの弁護士の方々もおられるので、これをまた原点に戻って訴えられるんじゃないかなと思って期待しております。

 報復戦争が始まって、伊江島も県外からの予約がすべてキャンセルになりました。日米間の大きな基地は沖縄にしかない。昔は戦争の前は大変幼稚な教えとだましがあったのです。竹やりで戦えと言われたら、アメリカは地球の反対のほうだからよかったねと言って一生懸命練習していました。こんな幼稚なうそとだましでだまされ続けて終戦をむかえました。今は高度な教育とだましがありますね。それを国民は知らないのではないかなと私は思っています。戦争をするには戦争の必要さを理解させること、協力させること、無知にすること、愚民にすることですね。そうでなければ人殺しはできません。今その状況にあるのではないかなと私は思います。戦前の戦争はわからなくて殺されたんです。知らなくて犠牲になったんです。伊江島なんて片っ端から犠牲になりました。今はわかっているんですね。どういうことをすればどういうことになるか。わかりながら殺されるということはこれは絶対にできない。わかっている以上はみんなで殺されないように闘わなければと、今私は思うんです。

 けれど沖縄県民だけでそれを食い止めることはできません。国民の目覚めを待っています。今度目覚めきれなかったら沖縄の県民と共に全国民が殺されるということですよ。今日の裁判もその殺すための人間が必要とする土地を奪った結果です。許されたもんじゃないですよ。これから生まれてくる子供たち、今いる子供たちに、この危険な戦争への道を与えるのか、平和への道を与えるのか、これは今生きている大人の責任だと私は思います。だから精一杯やらなければ申し訳ないと思っています。

★平安山
    沖縄は去った戦争で大変な爆撃を受けて、戦争が終わったとき伊江島では青々とした木は一本もなかった。ようやく伊江島に帰って、食料の増産に励んでいるうちに土地を盗られました。あれからもう四六年(*)が過ぎました。私たちは土地が返ってくることを願いながら一日たりとも忘れたことはありません。これからも土地を取り戻すために闘い続けていきます。そのためには政治を変えていくことが必要だと思います。阿波根さんは農業を勉強しながら平和な世の中ををつくりたいというのが夢で、戦争がなければ実現できました。八〇%くらい土地を集めていますから実現できたと思います。(*編集部注 一九五五年三月一一日、完全武装の米兵三〇〇名が伊江島に上陸。一三軒の農民の家を破壊、焼き払った。)


◆    何故反戦地主になったのか。また反戦地主であって良かったこと、つらかったことは何ですか。阿波根さんの裁判についてもお聞かせください。

★謝花
    阿波根の裁判は法律的には難しいということは専門の先生方からも言われました。でも阿波根は心筋梗塞で身体が弱りましたから、自分が元気であれば勝つ自信はあると言っておりました。自分が裁判所に行って闘えることであれば自信があったと。だがこの身では医者が許さないし、死んでは闘えないから、医者の指示に従うということで行かれませんでしたけれど、弁護士の先生方や平和運動の方々のご支援によって裁判を起こしまして一審では完全勝利しました。国が控訴して二審で負けたわけなんですけれども、私たちは最高裁まで行って闘う決意でいました。けれども最高裁というその入り口までも行かさないで、途中で却下してしまったんですね。難しいことは法律で判断しよう、決めようというのが司法でしたけれど、今の司法は権力の方に有利か否か、それで決められるということもわかりました。

 反戦地主になってよかったとか悪かったかというようなことを考えたことは私はありません。反戦地主にならざるを得ない、ならなければいけない、国の勝手な戦争で殺されてはいけない、と今怒っておられる反戦地主の人たちは、たとえ命にかかわる危険なことになっても、最後まで闘うと言われる面々が残っておられるわけです。

 阿波根は戦争屋を喜ばさない生き方をするということを常に言ってきました。戦争の敵は学習であるから、うんと学習をしなければいけない。かつては幼稚なうそとだましでだまされた、そしていかに無知だったか、無知のこわさを経験したということで生きてきましたので、私は反戦地主になって、この間違った権力と闘うことは当然のことだと思っています。きついとか犠牲とかいう思いがあるならば、平和運動をする資格はないから辞めなさいと、阿波根に言われたこともあります。平和運動は誇るべき仕事であり、社会のため自分を含んでの人々の幸せのために闘うことが反戦地主の仕事であるということを言って来ました。私はそれを自覚しました。沖縄にサミットが来るということを知ったときに、私たちは反対運動をやろうかと思ったんですけど、反対運動をやってもそれを食い止める力はないし、じゃあ平和サミットをやろうということで、読谷で開催したことがあります。その時みなさんにお揃いで参加していただいて、沖縄結集ということで打ち上げたんですけれども、確かに沖縄結集になりまして、これだけのみなさんの結集を見たときに、平和運動をしないと損だと言えるような状況は必ず創れると、私は確信致しました。金と地位、権利だけを守ろうとする人間は、それしかないわけですね。平和運動家というのは金も時間もかかります。殺されるような危険な目に合うことも当然あります。それを喜びとする人たちの結集というのが、平和運動をする中での幸せじゃないかなと思っております。

 伊江島は離れたところではありますけれども、毎日いろいろな思いをもった若い人たちが出入りしていて、阿波根の生き方と平和運動の考え方をみんなで作ろうというような状況にありますね。平和は作らなければいけない、この情勢を原点に返って食い止めなければいけない。殺される前に食い止めなければいけないと思っております。反戦地主になって私は誇りと喜びを持っております。

◆    今回のテロ、報復戦争のことについてご意見をお聞かせください。

★平安山
    私は今度のテロを起こした人間はそれを好んで起こしたんじゃなくて、テロの原因を究明しないと、悪いこと悪い人だと決め付けることはできないんじゃないかと思っています。アメリカは何か理由があったからテロにあったんじゃないかと。そしてまた大国の力をかさに報復をしていますが、そのアメリカを日本政府が後押しして、自衛隊を派遣した。テロを肯定するわけではありませんが、報復戦争は悪いことです。許されることではないと思っています。

★謝花
    テロ事件は当然のことじゃないかと思います。八〇年間もいじめられた国が永遠にいじめられるということはないですよ。それをまた日米間が勝つと思って報復戦争をやる。また戦争ができる。すでにどんどんそういう方向ができています。

 テロが起きる一〇日前におかしいぞと私は言ったんですね。伊江島の演習が夜昼すごく騒がしかったんです。これはおかしい、これは何かが起きる、真謝(()まで行ってみようかと思うくらいに大変な状況だったんです。それが三日間続きました。その演習が終わったらまた静かになって、そしてテロが起きた。やっぱりあれは関係していたんだと思いました。あとで聞いたところではどこかのインターネットに、基地を攻撃するという情報があったんですね。だから基地はすべて知っていたんです。けれどどこがやられるかわからない。アメリカの心臓部がやられたということがいかに悔しかったか。大いに反省すべきなのはアメリカじゃないかなと思っております。

 こういう状態が続けばきっとアメリカは完全に滅びるのではないですか。私は当然のことだと思っています。原因を追求していかなければいけないはずなのに、いまだに原因さえも公表されていない。去った戦争では、新聞は今日は何機攻撃した、何隻沈没させたということばかり報道していましたね。今の情報、マスコミもみんな同じでしょう。攻撃を受けている国の国民の苦しい立場や反対運動を何も載せていないじゃないですか。それもすごく似ています。

 ですからやっぱり五〇年余り戦争ができなかったことはみなさんの力であったことを思います。日本は戦争をやりたかったはずです。だが国民の平和運動の力、みなさんの力で今日まで押さえられてきたというふうに私は解釈しています。


◆    数の力でとんでもない法律を通す政治になっていますが、それを止めるのは民衆の力ですか。

★謝花
   それ以外ないんじゃないでしょうか。まっすぐ戦争への道を進む総理を引き止めて交代させるか、今の攻撃をやめさせるかも、民衆の力によるものだと思います。それがこれからの大きな課題じゃないかなと思います。


◆    関東ブロックは本土の会員が中心ですので、沖縄から本土のみなさんに何か一言ありますか。

★謝花
    言いたいことはたくさんあります。沖縄だけが殺される問題じゃないです。去った戦争は沖縄が防波堤になったじゃないですか。さきほど平安山さんがおっしゃったように軍備のある伊江島は木の一本も残らなかった。住宅一軒も残らなかったほどの攻撃を受けました。それで軍備のあるところに戦争がくるということはもう試験済みです。それを本土のみなさんはわからない。社会的にもわからない。ですからその事実をひとりでも多くの人に知ってもらいたいです。知ってもらうことによって今のこの危険な状況を乗り越えることが可能だと思います。できないとすればお互いの結集と自覚が足りなかったと思わなければいけません。今回のこの危険さは沖縄だけの問題じゃないですよ。沖縄の米軍基地の弾薬庫をNHKが撮影し、放送しておりました。そのニュースがこれは沖縄だけを守るためのものではない。日本国だけを守るためのものでもない。アジアを防衛するためのものであると言いましたね。こういう危険な沖縄に火がついたら、アジアが全滅になります。

 明日も平和運動の分科会が伊江島で開催されます。本土のみなさんが自分の命を守ると思って学習してもらいたい、と私は望んでおります。それがなければ遠い沖縄のことだ、がんばってくださいねと済ませてしまうでしょう。沖縄の問題じゃないですよ、日本政府がやったことですよ、日本政府はどこが作ったか、国民の代表じゃないですか。その一員ではありますけれど、沖縄県民が結集しても日本政府を変えることができない。日本政府を変えることは国民お互いじゃないですか、ということを私は言いたい。必死でそれを訴えたいですね。

★平安山
    謝花さんと同じ思いです。国民が政治を変えないと、これまでの去った戦争に、戦前の軍国主義に一歩一歩近づいていっている気がします。現在、私たちひとりひとりが反対し、考えていかなければならないと思います。

★謝花
    関東ブロックのみなさんが頑張っておられることを、みなさんのご活躍を、私たち沖縄の地元にいる者たち以上に頑張っておられるということを、うれしく聞いております。伊江島にもよく来てもらっていますから、みなさんの情報も届いております。距離は離れておりますけれども心は身近にあり、同じ思いで運動を続けておられるということを心強く思っております。また伊江島に来られたことがない人たちは伊江島にいらしてください。伊江島は平和運動とはこのようなものだということをしっかりと位置付けて、学びの場として置かれておりますから。私たちは学習が大事だと教えられまして、懸命に努力しています。平和をつくるには金も時間もいります。それでもやらなければいけないですね。

 若い人たちがこのようにご熱心であられることがわかりまして、更に力がつきました。

(*編集部注 伊江島の西部、米軍飛行場がある)