ペテン的SACO合意は許されない
崎原盛秀/平和市民連絡会
◆政府は沖縄には口を出すな◆
私は、日本の沖縄への関わりあいについて常に疑問に思っていることがある。それは今日に於ても何ら反省することなく、沖縄に対する植民地的差別支配を平然と行なっていることである。「国体護持」、本土防衛の「捨て石作戦」をもって沖縄を唯一地上戦に追い込み地獄の惨劇と多大な住民の犠牲を生み出した沖縄地上戦。占領政策からの解放と独立とを引き換えに、沖縄を米国の苛酷な軍事支配植民地へと委ねた一九五二年のサンフランシスコ条約の発効。日米合作による沖縄差別的植民地支配へと進んだ一九七二年沖縄返還の内実。沖縄の反基地運動弾圧を目論んでの「基地強制使用暫定法」の強行措置(一九七二年五・一五)と再度の強制(一九七五)、米軍特措法の再度の改悪(一九九七、一九九九)をもって住民の財産権、生活権の侵害と民衆の抵抗権を奪い去るなど、軍事が優先する社会へと沖縄を追い込んでいる。そして、今日、県民投票での住民意思は無視され、民主主義は死に瀕している。そこに大手を振ってまかり通っているのが卑劣にも振興策という「金」の支配である。このように、許しがたい差別と抑圧の歴史を積み上げ繰り返された数多くの暴挙は断じて許されるものではないし、沖縄民衆の決定権に日本政府が口出しすべきではないことは当然のことである。
◆日米安保の要は沖縄◆
ところで、仮想敵国を常につくりだし、それを押さえ込む事が、世界の平和と安定を保つ唯一の方法であり、日米の権益に合致するものであるとばかり、独善的安保体制の強化に務めているのが、日米両政府である。特に、ブッシュ政権の誕生は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を「ならず者国家」呼ばわりし、中国敵視政策を推進する中で、東アジアに緊張をつくりだしている。
「国益優先」「同盟国負担」を基本姿勢とするブッシュ政権は、これまでの「二正面戦略」を見直しアジア重視へと軍事戦略を転換しはじめている。その基軸は「日米安保」であり、その強化策が進められる中、新ミサイル防衛計画と集団的自衛権への参加が、今日本に求められている。日米安保の「要」としての沖縄基地の再編・強化と永久固定化が準備されている。六月八日、辺野古沿岸域に建設予定の工法案(三工法八案)が普天間基地代替施設協議会に提案された。ところが、それより先の六月三日、政府案と同じ予定地に一九六〇年代、米軍が海上基地構想と基地の恒久化を目指している米軍文書がマスコミで明らかにされている。それは約三〇〇〇メートルの埋め立て式滑走路や核兵器を貯蔵できる弾薬庫を一体化した施設計画となっていて政府案はそれを基本に作成されたものであることは、素人にもハッキリと知ることができる。いずれにしても、それが恒久的基地建設であること、また九八年にアメリカ国防省資料から明らかになったように、辺野古への新基地建設は、「耐応年数二百年、使用期限が四十年以上」と符合し、長期戦略のもとに新基地建設はなされようとしていることである。
◆知事・市長の住民裏切り◆
沖縄県知事は、選挙公約に「軍民共用空港」「使用期限一五年」をかかげ、名護市長は、それに加え、使用協定、北部振興策等が明確に示されない限り、基地建設には応じられない旨を明確にしている。ところが、政府提案は、それらに何ら答えることなく、建設計画を先行させている。知事も市長もこれには抗議すべきなのに、それを黙認し、今では、基本計画の策定作業を見守るなどの姿勢に終始し、二、三年先に引き延ばそうとしている。来年二月の市長選、同じく一一月の知事選を射程においての政治戦略がみえみえで、住民裏切りと基地建設に向けた策動は、沖縄側からもなされている。
◆動きだす民衆のこころのマグマ◆
沖縄の反基地運動は、日米両政府は勿論のこと、構造的支配形態の中でつくり出された政府依存経済体制に組み込まれた企業やそれに支えられる政治組織との闘いでもある。自治体にしても政府の財政的支援がなければ成り立たない。政府支配体制に多くの民衆が怒りを感じても、即行動というわけにはいかない。それだけに反基地運動の組織化の難しさもある。だが、いざという時は、沖縄民衆のエネルギーは燃え上がる。一九九五年の少女暴行事件や二〇〇〇年サミット対抗嘉手納基地包囲の決起は、そのことを物語っている。私たちは、政府が強引に基地建設をすすめるときは、民衆が大挙して決起することを信じているし、それがまた沖縄の反基地運動の原動力ともなっている。辺野古海上基地建設、浦添軍港建設阻止に向け住民のマグマは動きはじめている。
二〇〇一年六月二八日
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