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第125号(2001年6月28日発行)

【報告】

 米軍用地特措法・違憲訴訟

         司法判断に準備整う

  結審に反戦地主が勢揃い

 六月五日午後三時、那覇地裁にて最終陳述が行われた。二月末に予定されていた結審だったが、四月・五月と国側の引き延ばしに合い、ようやくこの日を迎えた。原告席は代理人と原告合わせて一七名も並び、ぎゅう詰め状態に。国側は九名。支援者・マスコミも多く四〇席の傍聴席は満杯になり外で待つ人もいた。

 開廷後、原告側の提出した意見陳述に反論したいと国側はさらに公判の引き延ばしを主張したが、原告側の早期結審の決意は固く、裁判長もこれに応じた。原告側が用意した最終準備書面は五〇ページに及ぶ。九八年の提訴から数えて二年半、二〇回の公判での主張をまとめたものだ。約一時間かけて四名の代理人(東京の松島、大阪の西、沖縄の新垣・伊志嶺各弁護士)がその主張を余すところ無く陳述した。焦点は楚辺通信所の知花土地と改定米軍用地特措法に絞られた。

 要約すると、

 ◆国は法治国家において真っ先に法を順守すべきであるのに自ら「特措法」を改悪して土地の暫定使用を計った。とりわけ知花土地においては付則二項を適用、遡及して暫定使用することで不法占拠を合法化しようとした。これは法の不遡及の原則を定めた憲法三一条に違反するものである。したがって九六年四月一日から九七年四月二四日までの三八九日間は、どのような法にも基づかない「裸の占有」というべきものである。また補償金の支払いによって不法占拠を合法化しようと計ったことは許されないものであり、この場合に支払われるべきは違法に基づく損害賠償金である。

 ◆国は自らの必要性のためには強制使用しながら、期限が来れば返還されるという地主の当然の期待等についていっさい考慮していない。地主知花昌一が九六年時点で土地明け渡しの訴えを起こしていたにもかかわらず、裁判所の頭越しに暫定使用の措置を執ってきた。これは地主に防御の機会さえ与えない一方的なやり方である。あらゆる場面に安保条約を持ち出して、そのことによる国民の権利が踏みにじられることは一顧だにしない、そうした姿勢は糾されて然るべきである。

 ◆国会が国民の財産権を積極的に侵害する特措法改定を行ったことは立法行為における違法性を免れないものである。
 
 大詰めを迎えた裁判に原告地主八名全員が顔を揃えた。有銘・真栄城・島袋・宮城・津波・池原・大城・知花の各氏。また牧港補給地区の地主・内間清子さんが浦添から、伊江島から謝花悦子さん、平安山良有さんが来られた。過去の公開審理でも見られなかった反戦地主の勢揃いは一坪地主にとってうれしいことこの上ない。事後集会では有銘さんが、特措法の違憲性を明らかにする闘いが日本の民主化にとり重要であることが強調された。その言葉をかみしめながら、闘いを自分の身に引き受けて来られた地主一人一人の姿をあらためて胸に刻んだ。
 

 特措法は沖縄差別法

 今回の訴訟の意義は改定特措法の違憲性を明らかにすることだけに止まらない。伊志嶺代理人が意見陳述の最後に述べたように、日本政府が七二年の施政権返還から今日まで土地を取り上げ続けた歴史を問い、その差別性を糾す。

 「復帰」を前に日本政府は五年の時限立法である「公用地暫定使用法」を強行成立させて米軍への安定的提供を確保した。次の五年間には「地籍明確化法」を当て、八二年からは「米軍用地特措法」(六二年に「本土」で使われて以来)を持ち出して九七年の改定、九九年の再改定を経て今日に至っている。

 ここには明確に安保条約を沖縄民衆の権利の上に据え、基地使用の根幹である土地をどのようにしても返さない政府の姿勢がある。しかも時限立法に継ぐ時限立法、果ては眠っていた法律まで引き出すなど場当たり的で沖縄だけに適用する差別的なものである。

 これまで地主側は幾度か提訴してきたが常に時限立法の壁に阻まれ訴えの利益なしのケースを余儀なくされてきた。ところが反戦地主の粘り強う闘いに対応して改定された特措法であるがゆえに、政府は今後の土地確保のためにはこれを使い続けざるを得なくなっている。今回の訴訟はこのような背景の下で、初の司法判断を迎える。判決は九月以降に予想される。 
 (N)

土地収用法改悪過程

・土地収用制度調査研究会
 2000年 05月24日    第1回研究会
        07月12日    第2回研究会
        09月07日    第3回研究会
        09月28日    第4回研究会
        11月30日    第5回研究会
        12月25日    第6回研究会 土地収用制度調査研究会報告
・国会
 2001年 03月02日    土地収用法改正案閣議決定、衆院に提出
        06月07日    土地収用法改正案趣旨説明・質疑、衆院本会議
        06月15日    土地収用法民主党修正案を与党・民主党で可決、社共は反対

                (付録4ページの資料参照)