巻頭言
六月七日の沖縄タイムス「寄稿」欄に「土地収用委 審理継続を」と、名護市真喜屋ダム用地の強制収用審理について島袋さんという農家の方より投稿が寄せられていた。
第一回の公開審理で、ダム建設者である国側の冒頭陳述と地主側の意見陳述が行われたのだが、国側の意見を文書および口頭でも初めて聞いた地主側が次回の公開審理の開催を確認したところ、沖縄県収用委員会は「会議はもうない、意見を陳述したいのであれば書面にて一ヶ月以内に事務局長あてに提出しなさい」と言い審理を終了してしまったらしい。
以前の米軍用地強制使用の公開審理でも、同様に一方的に審理が打ち切られてきた。収用委員会は使用期限切れに間に合うように地主の意見は敢えて切り捨て、事業者である防衛施設局の意向にそって審理を行っていたのである。
しかし、前回は少し違った。収用委員会は土地所有者を含め利害関係人の意見を十分に聞き取る姿勢を明らかにした。結果裁決前に期限切れを迎えるという事態が発生し、国は使用期限が切れても審理中は使用を継続できるよう特措法を再改悪せざるを得なくなった。
「公共事業=国策」として一旦国が決めれば、ほとんどは「名ばかりの公聴会」など通り一遍の事務手続きを経て国が事業認定し、金をばらまきそれでも任意交渉に応じない者がいれば収用委員会にかける。反対の声をあげるまもなく事態は進行してしまう。だからこそ原発のような巨大事業がいざ住民投票にかかるとひっくり返る例も起こってくる。ましてやダム事業などは何十年も前に決定したものを使用目的を変更してでも事業を継続するというような不当がまかり通っているのが明らかになっている。
収用委員会の裁決によって地主は憲法で保障された私有財産を"収用"されることになる。収用委員会は先の米軍用地の公開審理で示した方針を思い出し、ぜひとも十分な審理を行うよう望みたい。
(I)
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