土地収用法改悪案に対する一坪反戦地主会の呼びかけ(2001年3月14日)(抄)
今年3月2日、「土地収用法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、同日、衆議院に提出されました。この法案(以下、改悪案とします)は下記のような問題をはらんでいます。改悪案は、第一に事業認定手続きの過程で、(1)事業内容の周知を図るため事前説明会の改正を義務付ける、(2)幅広い意見聴取のため公聴会の開催を義務付ける、(3)事業認定の中立性を担保するため第三者機関からの意見聴取を行う、(4)公正の確保と透明性の向上のため、事業認定理由を公表する、の4点を制度化することとしています。しかし、これによる示された地主等の意向が起業者側を拘束するという保証はありません。それどころか、「地主や第三者機関等の意見を聴取した」ということで、起業者側の「アリバイ」作りになる懸念があります。
また、収用手続きについても、(1)地主等が多数の場合は、土地調書・物件調書の作成を簡略化するようにする(調書への地主等の署名・押印に代え、市町村長による公告・縦覧で済ませることができる)、(2)地主等が多数の場合は審理が迅速に行えるよう、代表当事者を選定できるようにする。また、地主等が著しく多数の場合は、収用委員会が代表当事者を選定すべきことを勧告することができる、(3)損失補償金を現金書留郵便等で支払えるようにする、(4)収用委員会の審理において、事業認定の違法性の主張を制限できるようにする(収用委員会審理の場で土地収用の違法性を主張することができなくなる)。
これらは、土地収用手続きをさらに形骸化させるとともに、地主等の意見表示の機会を奪うことで、迅速に土地収用ができるようにするものです。
国の狙いは、第一に公共事業の見直しや反対を求める住民運動(各種の一坪運動)の押さえ込みです。公共事業のあり方を根本的に見直すこともせず、土地収用法を改悪して住民運動を押さえ込もうとする国の姿勢は、断じて容認できません。また国は米軍用地特措法の改悪だけでは飽きたらず、今後は土地収用法そのものを改悪し、一坪反戦運動や反戦地主の闘いを終局的に抹殺しようとしています。あらゆる住民運動を総体的に抑圧する今回の改悪案は、まさしく「有事法制」の一環です。改悪案は絶対に廃案に追い込まなければなりません。
土地収用法の一部を改正する法律案に対する修正案要綱 (民主提出)成立 社共反対
第一 社会資本整備審議会等の意見の尊重
一 国土交通大臣は、事業の認定に関する処分を行うに際して聴取した社会資本整備審議会の意見を尊重しなければならないものとすること。
二 都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行うに際して聴取した審議会等の意見を尊重しなければならないものとすること。
第二 検討政府は、公共の利益の増進と私有財産との調整を図りつつ公共の利益となる事業を実施するためには、その事業の施行について利害関係を有する者等の理解を得ることが重要であることにかんがみ、事業に関する情報の公開等その他の施行についてこれらの者の理解を得るための措置について、総合的な見地から検討を加えるものとすること。
土地収用法の一部を改正する法律案に対する附帯決議 与党・民主賛成 社共反対
政府は、本法律の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一 社会資本整備審議会のうち、事業認定の審議に携わる委員については、法学界、法曹界、都市計画、環境、マスコミ、経済界等の分野からバランスよく人選するとともに、事業推進の立場にある中央省庁のOBの任命は原則として行わないこととし、事業認定の中立性、公正性等の確保に努めること。
二 事業認定の審議にあたっては、当該事業に利害関係を有する委員は当該審議に関わらないようにするなど厳格な運用を行い、事業認定の中立性、公正性等の確保に努めること。
三 公聴会については、その透明性を高めるため、開催に当たっては、開催期日・場所等について事前に十分な周知を図るとともに、議事録の公開など情報公開の徹底に努めること。
四 公聴会が形骸化することのないよう、公聴会で述べられた住民等の意見は第三者期間に適切に伝えるとともに、公述人相互の間で質疑を行えるような仕組みとするなど、住民意見の吸収の場という公聴会の本来の役割を果たすよう、規則改正を含め必要な措置を講ずること。
五 事業認定判断の透明性の向上を図るという法改正の趣旨を踏まえ、改正法の公布後に事業認定申請された事業については、公聴会の義務的開催など改正法の内容を踏まえた運用を図ること。
六 今回の法改正の趣旨にかんがみ、政府は各都道府県と協議して、収用委員会の役割が適格に果たされるよう努めること。
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