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第120号(2001年1月28日発行)

資料

 土地収用制度調査研究会報告(00.12.25)

2 収用裁決手続について
(1)土地・物件調書作成の特例
@    土地所有者及び関係人が多数であることにより、土地調書及び物件調書(以下単に「調書」という。)を事業認定が失効するまでの間に作成することに相当の困難がある場合又は
A    1人当たりの補償金見積額が僅少であるため、簡便な手続によることが合理的である場合
     としてそれぞれ政令で定める場合には、土地所有者及び関係人の立会い及び署名押印に代えて、以下に記載する手続に従い、調書の作成ができる制度を創設すること。
 (制度の概要)
@    起業者は、作成した調書を添付して、特例手続の申出書を対象土地等が所在する市町村長に提出する。
A    当該市町村長は、対象土地等の所在地等を1か月間公告し、その期間内、申出書及びその添付書類である調書を土地所有者等の縦覧に供する。
B    調書の記載に異議のある土地所有者等は、縦覧期間内に、市町村長に対し、その旨を記載し署名押印をした異議申出書を提出することができる。
C 市町村長は、公告・縦覧期間の終了後、公告・縦覧手続を経た旨を証する署名押印のある書面を起業者に交付する。
D 起業者は、裁決申請に際しては、調書にCの書面(Bの異議申出書の提出がある場合にあっては、更にその異議申出書)を添付する。
E 調書の証明力については、土地収用法第38条に規定するものと同じ取扱いとする。
 (理由)
@ 現行の調書作成手続によれば、土地所有者等が多数である場合には、事業認定が失効するまでの間に調書作成手続を終えることは相当に困難があり、また、一人当たりの補償金見込額が僅少であると見込まれる場合には、煩瑣な手続を執らなければならないことの合理性には疑問があり、簡略な手続によることができることとするのが相当である。
A 具体的には、土地所在地の市町村において1か月間の公告・縦覧を行って、調書の記載に異議のある者がその旨を申し出る機会を確保することとし、なお当該期間内に異議を申し出ない者については、調書についての土地所有者等の署名押印を要しないこととすべきである。これにより、土地所有者等の権利を損なうことなく、円滑に調書作成手続を進める方策となり得る。
     この特例手続を執ることができる場合は、政令で限定的に規定することとなるが、調書の作成は、一筆の土地を最小の単位として行われている実情にかんがみ、過去の事例を基礎とし、通常の場合の一筆の土地についての所有者数及び一人当たりの補償金の額の極限値を求め、これを踏まえて定めることも一案である。
(2)代表当事者制度の創設
 共同の利益を有する当事者が多数である場合には、収用委員会の審理に際し、自ら代表当事者を選定することができ、また、収用委員会は、代表当事者の選定をすべき旨の勧告をすることができること。
 (制度の概要)
@ 共同の利益を有する多数の者は、その中から全員のために審理手続において当事者となる3人を超えない者を代表当事者として選定することができる。 
A    収用委員会は、共同の利益を有する者が著しく多数であり、かつ、審理の円滑な遂行を確保するため必要と認める場合には、当該共同の利益を有する者に対し、代表当事者の選定をすべき旨の勧告をすることができる。
 (理由)
@ 収用委員会の審理においては、補償額の決定がその中心であるが、例えば、土地の共有者が多数存在する場合であっても、権利の目的たる土地は同一であり、それに対する補償金額が正当なものであることが各共有者の共通の利益であるといえる。
     したがって、そのような場合には、当該共有者が代表当事者を選定することができるよう措置すべきである。
     また、共同の利益を有する多数の当事者がいる場合には、代表当事者を選定することは審理の円滑かつ合理的な遂行に寄与することになる。したがって、そのような場合において必要があると認めるときは、収用委員会からその選定を勧告することができる旨明示することが相当である。
A なお、代表当事者選定の強制については、収用手続は望まずして手続に取り入れられる当事者について行うものであるから、自らの意思で開始した手続の当事者を対象とする類似制度の存在を理由として、それに関する制度を設けることは相当でない。
(3)補償金払渡方法の合理化
 補償金等の払渡しについて、一定の日までに、現金又は郵便為替証書等を書留郵便に付して発送した場合には、権利取得裁決は、権利取得の時期までにその払渡しがないことを理由としては、その効力を失わないこと。
 郵便為替証書等の直接交付をした場合についても、権利取得裁決及び明渡裁決につき、同様とすること。
 (制度の概要)
@    起業者の責めに帰すことのできない事由により権利取得の時期までに補償金等の払渡しが困難である場合において、政令で定める日までに、補償金等を受けるべき者に対し、現金又は郵便為替証書等を書留郵便に付して発送したときは、権利取得の期日までにその払渡しがないことを理由としては、権利取得裁決は効力を失わない。
A    @の場合において、権利取得の時期までに補償金等の払渡しがないときは、起業者は、速やかに当該補償金等の払渡しのため必要な措置をとらなければならない。
B    権利取得の時期又は明渡しの期限までに、補償金等の払渡しのために、郵便為替証書等支払いについて確実性がある証書等を直接交付した場合についても、@と同様に権利取得裁決又は明渡裁決の効力を失わないこととする。
 (理由)
@    収用に伴う補償金等の払渡しは、「先補償・後取得」が基本であり、しかも、権利者等がいかに多数であっても、権利の範囲が明確である限り、各人にそれを払い渡さなければならないことはいうまでもない。このため、現行土地収用法は、権利取得の時期までに補償金等の払渡しをしなければ権利取得裁決を失効させることにより、その確保が図られている(第100条)。
    もっとも、権利取得裁決から権利取得の時期までは比較的短期間と定められる実情にあることから、その期間内に補償金等の払渡しを終えることが著しく困難である場合があることは否定できない。
    そこで、我が国の郵便事情を踏まえ、権利取得の時期前に到達することが確実と認められる政令で定める日前に、権利者等に対し、現金又は郵便為替証書等を書留郵便に付して発送すれば、仮に、権利取得の時期までにその払渡しがないときでも、そのことのみを理由としては、権利取得裁決の効力が失われないとすることには、合理性がある。
A    なお、@の措置による場合は、権利取得の時期までに補償金等の払渡しがないこともあり得るが、その際には、速やかに当該補償金の払渡しのための措置をとるべきことを起業者に義務付けることは、例外的な事態を最小限度にとどめるために必要である。
B    権利取得の時期又は明渡しの期限までに、補償金等の払渡しのため、郵便為替証書等支払いが確実な証書等を補償金等を受けるべき者に直接交付する場合は、未だ「弁済の提供」にとどまるとしても、受領者の意思によりその現金化を図ることができる状態にあり、その保護に欠けることにはならないから、仮に、補償金等の払渡しがないとしても、そのことのみを理由としては、権利取得裁決又は明渡裁決の効力が失なわれないこととするのが相当である。
(4)収用委員会審理における主張制限
 収用又は使用の裁決に関する収用委員会の審理において、事業認定が違法である等の主張を制限し得ることを条文上明確化すること。
 (理由)
 収用又は使用の裁決に関する収用委員会の審理において、土地所有者及び関係人から事業認定の是非に関する主張をされることが多いが、当該事項については、事業認定が無効であるというような極めて稀な場合を除き、裁決に影響を及ぼさない事項であると解されている。
 もし、そのような主張により円滑な審理が阻害されることになれば、ひいては事業遂行の遅延を来し、公共の福祉に反する結果を生ずることになる。審理の円滑な進行は、収用委員会の適切な手続指揮に待たなければ確保できないが、明文上、事業認定に関する主張は制限することができることを規定することは、その一助にはなると考えられる。
  (以下略)
       (出典:http://www.mlit.go.jp/kisha01/pubcom/pubcom3/mokuji_.html)