私たちは、去る7月3日に発生した在沖海兵隊兵士による女子中学生に対するわいせつ事件に満身の怒りをもって糾弾し、目に余る米軍関係の事件・事故の連続発生に重大な危機感をもち「口先だけの綱紀粛正・再発防止」を絶対に許さないという強い決意をもって、本日ここに集まった。
今度のわいせつ事件は、1995年9月の少女暴行事件の悪夢を再び呼び覚ましまし、家族や関係者だけじゃなく、全県民に激しいショックを与えた非人道的な蛮行である。また、同じ日に、器物損壊犯の米軍人の逃亡を米海兵隊員がほう助するという事件も発覚した。
沖縄県警によると、1986年から1999年の14年間の米軍関係凶悪犯の検挙件数は、全国の50.1%、九州の84.7%を占めている。今年に入ってからも、1月の婦女暴行未遂事件をはじめ、強盗・窃盗事件などの凶悪犯罪が続々と発生し、刑法犯検挙者は昨年同期の2倍という増え方である。米軍戦闘機やヘリコプターの墜落事故、油もれ事故、民間地への不時着、民間地域への流れ弾、昼夜を問わない離発着訓練に伴う騒音被害、水陸両用車による珊瑚礁破壊と漁場荒しなどの事故も発生している。特に、県下各地で沖縄戦で亡くなった方々を慰め、不戦と平和を誓う慰霊祭などを行なっている「沖縄慰霊の日」に実弾演習を強行し、山火事を発生させている米軍の行為などは占領意識丸出しそのものである。
連続発生の事件・事故に対する県民の怒りの行動に対し、7月7日(七夕)に在沖米4軍調整官と米国総領事がそろって「綱紀粛正」を表明したが、その直後の9日には、基地内で酒を飲んだ米兵が、酒気帯び運転で道路横断中の日本人男性をひき逃げした後、虚偽の申告をしていたことが発覚するという事件が発生している。この事実は、沖縄市議が全会一致の決議で「米軍の言う綱紀粛正は空手形である」と断言していることに代表されるとおり、「口先だけの綱紀粛正」であることを証明するものである。
私たち沖縄県民は、世界一強い軍隊と言われている米軍と50年以上も付き合わされてきた。この長い体験を通じて、いくら綱紀粛正を唱えても米兵による犯罪や事件・事故はおさまらない、という軍隊の本質をどこよりもよく知っている。また、再発防止と称して行なわれる兵士の夜間外出や飲酒を禁止する封じ込み対策が、結果として、県民対立を生みこそすれ何も解決しない、対症療法では解決しないということを、この間の体験を通じてよく知っている。
日本政府は、「政府がどうこういう話じゃない、処理は海兵隊が考えること」という認識を改め、「なぜ米軍の事件・事故が後をたたないのか、どうすれば防げるのか」ということを、基地を提供している側の責務として米国政府と交渉すべきである。また、日本国民である沖縄県民が、基地の重圧に耐えながら切実に叫んでいることを真剣に受け止め、口先だけの綱紀粛正や再発防止対策ではなく、基地の整理縮小を含む具体的かつ明確な対応を示すべきである。
私たちは、本日の緊急県民総決起大会の名において、次の4項目を日米政府に対して要求し、両政府及び関係機関の迅速な行動によって解決が図られるよう強く求めるものである。
記
- 米軍人の綱紀粛正と人権教育を徹底し、犯罪及び事件・事故の根絶に向けた具体的なプログラムを沖縄県民に明らかにすること。
- 被害者とその家族及び関係者に対する謝罪と誠意ある対応と行動をとること。
- 米軍基地の整理縮小を促進すること。
- 日米地位協定の抜本的な見直しを早急に図ること。
以上決議する。
2000年7月15日
米兵によるわいせつ事件糾弾及び連続する事件・事故に抗議する緊急県民総決起大会
米軍の綱紀粛正と米軍人による犯罪の再発防止を求める会長声明
去る7月3日未明、米海兵隊普天間基地所属の上等兵が、沖縄市内のアパートに侵入し、就寝中の女子中学生にわいせつ行為を行い、現行犯逮捕される事件が発生した。
これは深夜に家の中で就寝していた何ら落ち度のない未成年者が性犯罪の被害者とされた悪質な事件であり、基地と隣り合わせの生活を強いられるわが県の現状を象徴する事件である。
さらに右事件に対する世論の厳しい批判のさめやらぬ中、7月9日未明には、同じく沖縄市内で、米空軍嘉手納基地所属の三等軍曹が、自動車で会社員をはねてけがを負わせ、その場から逃走するというひき逃げ事件が発生した。
わが沖縄県は復帰後28年を経た今なお、米軍人軍属の事件事故の発生が一向にやまないという、悲しむべき状況にある。とりわけ九州沖縄サミットを直前に控えたこの時期に、開催地の沖縄県でこのような悪質な事件が相次いで発生することは、米軍当局の綱紀粛正・犯罪再発防止に対する態度の真摯さを強く疑わせるものである。
当会は、犯罪が直接的な人権侵害であるとの認識の下、県民の人権を擁護する見地から、長年に渡り、かつ多数回に渡って、米軍人軍属による事件事故の再発防止と綱紀粛正を求めてきた。しかるにここに至り、またもこのような犯罪が続発したことに対し、強い怒りを禁じ得ない。
当会は、米軍当局に対し、あらためて綱紀粛正と犯罪の再発防止への真摯なる取り組みを強く求めるものである。
2000年(平成12年)7月11日
沖縄弁護士会会長 亀川栄一