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第113号(2000年6月28日発行)

「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の構成員等による損害賠償法」案

その重要性と特別立法について

 「米軍人・軍属による事件被害者の会」代表  海老原大祐

 一九九六年四月、「被害者の会」は沖縄で結成されました。その後、四つの裁判闘争(いずれも勝訴)を経て(注)、現在上記法案特別立法に向け取り組んでいます。

 被害者という当事者が発した叫びはこの間さまざまな成果をあげました。その一つに、一九九六年一二月SACO最終報告があります。その内容は以下の通りです。

1    在日米軍構成員全員への自動車任意保険加入義務化(九七年一月〜)
2    公務外不法行為に対する支払い手続きの改善
▲    米国側による前払い(慰謝料制度)支払の迅速化
▲    日本国側による無利子融資制度の導入
▲    日本国裁判判決額に対し、米国側慰謝料との差額を日本国側が埋める

 以上のことは、地位協定運用上の改善とはいえ、過去の実態に比べ大きな前進をここに見ることができました。しかしこれで問題が解決したわけではありません。                       
△     資力に乏しい米兵たちは期限三ヶ月の任意保険にしか加入せず、その後は更新していません。現実としてその後の事故では保険期限切れが殆どなのです。
△    米側慰謝料制度は未だにその支払までに一年半から二年を有しています。
△     日本側による無利子融資制度もその振込みまでに四ヶ月半も有し、被害者の緊急的生活資金としては用を成していません。
△     判決額の一部である遅延損害金については、対象外とされ支払われません。

 いずれにしても現行日米地位協定下で処理される以上、裁量権は全て日米両政府側にあり、被害者は国民の権利として補償されることはないのです。              

 つまり米側慰謝料制度においては、支払うかどうかや支払額の決定権も全て米国側にあり、その低額な決定額(請求額の約一五〜四○%)に対して被害者側は一切文句も言えないシステムになっています。      

 また、日本国側による裁判判決額の穴埋めも、日本国民の税金によって賄われます。その額の殆どは米国側の恩恵的慰謝料よりはるかに高額(六○〜八五%)となっており、なぜ加害国側である米国側支払いが被害国側である日本より少ないのか理解に苦しむところです。 

 また、被告米兵はこのような制度により結局一円も支払わずに済みます。これでは米兵たちの軍隊としての特権意識はますます助長され、事件・事故は減るはずがないのです。

 これらの問題は、安保が破棄され地位協定が消滅すれば解決します。しかし、現情勢の中ではすぐには望めません。しかし安保に基づき米軍が駐留する以上、必ず事件・事故は発生し被害者は苦しまなければならないのです。基地周辺で生活する人々にとって米兵犯罪の根絶とその補償は最大の関心事であり問題なのです。

 そのためにも、国民の私権として駐留国の法(民法)に従えという「損害賠償法」案の特別立法は、国民に対する補償を権利として制度化するという意味からも重要なのです。

 (編集部注 裁判の概略は九頁の表参照


日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の構成員等による損害賠償法(案)


(目的)
第一条   この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊(以下、合衆国軍隊という)の構成員、軍属、若しくは被用者による公務執行中に行われたものでない不法行為又はこれらの者の家族による不法行為によって、被害を受けた場合における損害賠償制度を確立することにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

(定義)
第二条   この法律で、合衆国軍隊の「構成員」、「軍属」、「家族」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下、日米地位協定という)第一条に定めるものをいう。
   2   この法律で、合衆国軍隊の「被用者」とは、合衆国の被用者(日本国民である被用者又は通常日本国に居住する被用者を除く)で日米地位協定第一四条一項により日本国の法令に服するものをいう。

(損害賠償責任)
第三条   国は、合衆国軍隊の構成員、軍属、若しくは被用者による公務執行中に行われたものではない不法行為又はこれらの者の家族による不法行為により損害が生じたときは、その損害を賠償する責に任ずる。

(民法の適用)
第四条  合衆国軍隊の構成員、軍属、若しくは被用者による公務執行中に行われたものでない不法行為から生ずる損害賠償責任、又は、その家族による不法行為から生ずる損害賠償責任については、前条による規定によるほか、民法の規定による。