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第107号(1999年12月13日発行)

沖縄だけに基地をなぜ押しつける?

名護の仲間たちを孤立させるな!


 橋本龍太郎前首相が「普天間飛行場全面返還で日米合意」と発表したのが三年半前の九六年四月。

 年表を繰ってみるとこの数年間、沖縄についてはたくさんのできごとが目まぐるしく起こった。米軍用地強制使用の却下裁決。楚辺通信所(「象のおり」)の政府による不法占拠。政府が押しつけようとした海上ヘリ基勉に反対する名護市民投票、それに伴う名議市長の辞任と市長選挙。さらに米軍基地の県内移設に反対する大田前知事と経済不況を「県政不況」と称して大田氏の貴任にする稲嶺恵一現知事との知事の座をめぐる争い。さらには降って湧いたようなサミットの名護開催まで……そういう起伏をはらみながら、政府は一貫して米軍基地の沖縄への閉じこめに腐心してきた。大田前知事の「安保条約がどうしても必要なら、その負担は国民すべてが分かちあ?てほしい」ということに対しては、まともな返事を避け続けてきている。そこは逃げて、経済振興策に「金を出してあげる」ということばかり強調してきた。

 米軍基地に反対する運動の過程で、県民投票や名護市民投票で、きっぱりと県民・市民の意思を示してきた。「軍事基地に反対!」と。それにもかかわらず政府はそれを無視して、経済援助でごまかして、なんとか普天間飛行場を県内でたらい回ししようと躍起になっている。

 政府の役人や政治家は、それで給料や歳費をもらって何年でも続けられるが、普通の庶民というのは自分の生活を放り出して、一円にもならない政治活動を何年も続けていくことは難しい。九七年一月に「海上ヘリ基地をキャンプ・シュワブ沖に」と、日米政府が合意してから、ほぼ三年。名護市民も闘い疲れていないか、と心配だ。

 最近のことだから、ほとんど誰でもが知っているように、去る一一月二二日に稲嶺知事は、移設候補地を「キャンプ・シュワブ水域内名護市辺野古沿岸域」と発表した。これまでも、マスコミを通じてそうなるらしいことはリークされていたが、正式に知事が認めたのはこれが初めて。

 名護市民にとっては、覚悟はしていたがいよいよ来たかということだ。この発表の日、知事は記者会見の後、名護市に市長を訪ねて協力要請をすると言われていた。名護では市民が市役所を取り囲んで、知事が来たら「市長に会うより先に住民に会って説明せよ」と詰め寄ることにしていた。そのためかどうか知事は予定を変更して、自分は出かけず、副知事を代理として名護に派遣。副知事から市長に報告させた。

 知事は名護市長に会うこともせずに去る一一月二五日、東京へ来て小渕首相らに移設候補地を説明した。その後の一二月三日、知事は市長と会見し、候補地選定の理由を説明、移設受け入れを要請した。ヘリ基地反対協も知事との会見を要求して、会見場の市民会館に押しかけたが、知事は裏口から出入りして、市民との対話を避けた。

 名護市長は会見の席上、知事に対して「住民生活に著しく被害を与える施設は受け入れ難い」と表明したというが、他方では「厳粛に受け止めている。市議会や地域住民、漁業関係者の意向を十分に聞いた上で慎重に検討したい」とも述べており、今後どのように推移するか明らかではない。マスコミでは「市長が移設受け入れを表明して辞任、再選に出馬して市民の信任を求めることになる」と推測している。このような厳しい状況の中で、ヘリ基地反対協は地元の声をまとめて、市長に受け入れ拒否を迫ることに全力をあげている。

 五〇年間も沖縄に米軍基地を押しつけ続けている政府を成立させている本土に住む人間として、今われわれにできることは何だろう。思いあぐねて、寝つかれない夜が続く。

 苦しい闘いを続げている名護の仲間たちを助け、励ますために、できるだけのカンパを集めて送ろう。

(U)