軍用地を生活と生産の場に! |
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック |
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第104号(1999年7月5日発行) |
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第六回口頭弁論(五月十八日)で原告側は、インターネットで集めた米側の最新資料や国内で新たに見いだした資料を証拠として提出した(注1)。冷戦後における米軍の戦略をもとに米国にとっての「思いやり予算」の意味を、二回の予定で考察する。 九十七年に発表された『国防評価報告(以下QDR 注2)』には、「八十五年以来、米国は地球規模での状況の変化に対応して、国防予算を三十八%、兵力を三十三%、調達費を六十三%、それぞれ減少させた。現在、国防予算は二千五百億ドル、国家予算の十五%、国民総生産の約三%を占めている。現役兵力は百四十五万人、二十万人は海外に駐留している」と述べられている。米国防予算と兵力の変遷を下図に示す(注3)。 しかし、この事実は米軍の戦略が軍事力中心から平和的方法へと転換したことを意味するものではない。例えばQDRには、「短・長期の米国防戦略は、国益を増大させる方向に戦略的環境を構築し、あらゆる脅威に対応する能力を維持し、将来の脅威や危険に対し準備を整えることを継続することである。この戦略の根本にあるのは、守るべき権益を地球規模で抱える超大国として、外交的・経済的・軍事的に世界中との関わりを持ち続けなければならないという逃れられない現実である」とある。さらに、同時期に発表された『Joint Vision 2010(注4)』では、「二十一世紀における我々の軍隊がめざすべき目標は“すべてにおいて優位であること”が基本である」とし、「平時においては交渉を基本とするが、戦時においては断固たる処置を執り、どのような紛争形態においても優位性を保つことのできる総合力を持った国家の形成を目標とする」と述べている。 一方、QDRには、「国家経済が健全であることは、国力の維持と国家安全保障にとってきわめて重要であり、限られた資源を有効に使うことが国防総省に求められている」とも述べられている。 つまり、冷戦後の米国は唯一の超大国として、地球規模に広がった米国の権益を守るために、圧倒的に優位な軍事力をできるだけ金をかけずに整備しようとしているわけである。外交よりも軍事を好む米国の姿勢は、イラクやコソボへの爆撃に如実に示されているが、これは何も最近だけのことではない。表1は、第二次世界大戦後に米国によって爆撃を受けた国のリストである(注5)。爆撃によって多くの市民を傷つけた代償として、紛争の根本的な解決は得られたであろうか。このリストとその背後に横たわるおびただしい数の死者は、紛争の根本的解決に軍事力は無力であることの証明である。
効率的な軍事力整備を米国はどのように達成しようとしているのであろうか。具体的に米軍の計画を見てみよう。本訴訟との関連で特に注目すべきは三つ、「基地の統廃合」「生活の質的向上」「同盟国に対する負担増の要求」である。 「基地の統廃合」(以下BRAC、注6)とは、冷戦終了の直前から始まった基地の再編や閉鎖の計画で、八十八年からの四つのラウンドで行われた。終了は二○○一年の予定。国防総省の報告書(注7)によると、二○○一年までに総額百四十億ドルが節約でき、さらに二○○二年以降毎年五十六億ドルの節約になると見積もられている。しかし、四ラウンドのBRACが完了したあとも過剰な基地の割合は二十三%にのぼると試算され、新たな二ラウンドのBRACが国防総省から提案されていた(最近議会はこの計画を否決した)。基地の統廃合は米軍の近代化にとって不可欠の過程だと国防総省はとらえている。 重要なことは、この基地の統廃合が地域の発展にとっても望ましい方向であることが各種の統計から明らかになっていることである。『経済の再生:軍用地の再利用(注8)』には「八十八年から九十五年にかけて閉鎖の対象として選ばれた九十七の主要な軍事基地のうち七十四施設はその閉鎖が地域経済に大きな影響を及ぼすものと考えられたが、そのうち六十四施設は既に閉鎖された。(基地の閉鎖が)地域経済の死を悼む“弔いの鐘”となるのではないかと多くの地域は恐れていたが、実際のところ、(基地の閉鎖は)新しい経済発展への道筋を指し示す“胎動の鐘”だった」と書かれている。さらに、「基地再利用成功談」が誇らしげに記されている。また、米会計検査院(GAO)の調査でも、基地が閉鎖された多くの地域が閉鎖時よりも経済的に発展していることが裏付けられている(注9)。 しかし、BRACの対象はほぼ米国内に限られ、沖縄をはじめとする海外の基地については大幅な変更の予定は今のところない。自国の基地を減らし、海外の基地は受入国の負担増によって安上がりに運営しようとしているのが米国流基地運営法といえる。 米軍は兵士の志気を高めるためにさまざまな施策を行っている。『国防年報(注10)』では「生活の質」について第九章をあてており、六つの柱のうち一つは「軍人やその家族のために安全で近代的な基地内施設や住宅を供給する」ことと記されている。また、「士気向上、福祉、余暇」プロジェクトとして、基地内のフィットネスセンター・体育館・図書館・青少年施設などの整備を進めている。フィットネスセンターの近代化については特に力を入れており、二百八十二の米軍基地内にある計五百七十六のフィットネスセンターに関する調査とそれをもとにした改善勧告が発表された(注11)。『2000会計年度における国防予算概算(注3)』によると、家族住宅建設費として三十億ドル以上が計上されている。家族住宅を含め軍関連の建設費予算は八十五億ドルである。表2は国外の建設予定をまとめたものであるが、公表されているものの中には在日米軍基地の施設は見あたらない。もちろん日本には他の「同盟国」ではほとんど例のない「思いやりの深い」施設整備費が存在するからだ。
次回は『共同防衛のための同盟国の寄与』の最新版について解説する。 第七回口頭弁論は七月二十三日(金)午後一時二十分から、東京地裁第七一三号法廷で。なお、同日、シニアワーク東京で報告集会が開かれる(六時開場、六時半開始)。
(文責 丸山) |