地方分権推進委員会 第3次勧告
−分権型社会の創造−
1997年9月2日 地方分権推進委員会
第2章 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用
に関する事務及び駐留
軍等労務者の労務管理等に関する事務の区分
駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務及び駐留軍等労務
者の労務管理等に関する事務については、日米安全保障条約等に基づき我が国が負っている義務の履行に直接関係するとともに、関係地方公共団体にとっても影響の大きい事務であることに鑑み、関係省庁とのグループ・ヒアリングに加え、関係地方公共団体からもヒアリングを行うなど、特に慎重に調査審議を行ってきたところであるが、検討の結果、以下のとおりとする。
I 駐留軍用地特別措置法に基づく土地等の使用・収用に関する事務
- 駐留軍用地特別措置法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法)に基づく土地等の使用・収用に関する現行の機関委任事務は、日米安全保障条約等に基づき我が国が負っている土地等を提供する義務を履行するため、国が提供しようとする土地等の使用・収用の権原を取得するための手続の一部である。
機関委任事務制度は、第1次勧告でも述べたとおり、知事・市町村長に地方公共団体の代表者としての役割と国の地方行政機関としての役割との二重の役割を負わせるものであるが、これらの事務は、国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に直接関わるものであるとともに地域社会や住民生活にとっても大きな影響をもたらすものでもあることから、これを引き続き地方公共団体の担う事務とすることは、機関委任事務制度と同様に、知事や市町村長の立場を困難なものとするおそれが大きい。むしろ、国と地方公共団体との役割分担を明確にする観点からすれば、国は国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に全責任を負い、知事や市町村長は地方公共団体の代表者としての役割に徹することとすべきである。
したがって、駐留軍用地特別措置法に基づく現行の機関委任事務は、以下のとおり整理することとする。
- 土地・物件調書への署名押印の代理、裁決申請書等の公告・縦覧、土地等を引き渡すべき者等がその義務を履行しないとき等における代執行(駐留軍用地特別措置法14条により適用される土地収用法36条4項及び5項、42条2項、102条の2第2項)等の事務は、国の直接執行事務とする。
- 防衛施設局長の申請に基づく使用・収用の裁決等(駐留軍用地特別措置法14条により適用される土地収用法47条、47条の2、48条、49条)の事務は、土地収用に関する独立の専門機関として都道府県に設置され、地方の実情に通じた委員によって構成される収用委員会により処理されることが適当であることから、都道府県の法定受託事務(メルクマール(7))とする。
ただし、この場合において、公共用地の取得に関する特別措置法の仕組みに準じて、収用委員会による緊急裁決の制度を設けるとともに、緊急裁決期間を経過してもなお裁決が行われないときには、防衛施設局長の請求により、内閣総理大臣が収用委員会に代わって裁決を行うことができるものとする。また、収用委員会が却下の裁決を行った場合には、当該裁決の取消を求める審査請求に対する裁決と併せて、防衛施設局長の請求により、内閣総理大臣が収用委員会に代わって使用・収用の裁決を行うことができるものとする。
なお、内閣総理大臣が収用委員会に代わって裁決を行う場合には、公共用地の取得に関する特別措置法に定める手続に準じて、補償金額の算定について審議するための諮問機関の議を経なければならないものとする。
II 駐留軍等労務者の労務管理等に関する事務(略)
第1章 国と地方の新しい関係
・従前の機関委任事務の取扱い
2.存続する事務の区分
(7) 国が直接執行する事務の前提となる手続の一部のみを地方公共団体が処理することとされている事務で、当該事務のみでは行政目的を達成し得ないもの
地方分権推進委員会の委員:
- 委 員 長 諸井 虔 (太平洋セメント取締相談役)
- 委員長代理 堀江 湛 (杏林大学教授)
- 委 員 桑原敬一 (前福岡市長)
長洲一二 (前神奈川県知事)
西尾 勝 (東京大学教授)
樋口恵子 (評論家、東京家政大学教授)
山本壮一郎(元宮城県知事)
出典:総理府
- (勧告文)http://www.sorifu.go.jp/whitepaper/bunken/3ji/2.html
- (委員)http://www.sorifu.go.jp/intro/bunken.html
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