防衛施設庁長官 嶋口武彦 殿
私たち「北限のジュゴンを見守る会」は那覇防衛施設局の2004年4月19日から普天間移設に係る現地技術調査の着手及び、同年9月9日からの強行着工、加えての11月15日からボーリング調査実施のための暴力的な対応に対し、非常に憤りを感じています。
4月19日からすでに232日を数え、地元住民や全国の支援の人々が作業ヤードを造らせないために辺野古漁港に座り続けていることや、9月からは海上におけるカヌーや抗議船だけでなく、生命を賭けた海中座り込みまでしてジュゴンの棲む生態系を守ろうとしています。その人々に対し、那覇防衛施設局の取った手段は信じられない非道なものでした。
私自身、カヌーで海上で施設局の雇った業者や漁民に乱暴な言葉を投げ付けられ、なれないカヌーが転覆する危険も多々ありましたが、私たちは常に「非暴力」でこの海を守ろうと漁民たちに向けて懸命に呼びかけ説得し続けてきました。それでも調査を強行する作業者はカヌーから海面に飛びこんで抗議する若者に対し、アンカー(錘り)を取り上げて戻る母船を流したり、アンカーを彼の頭に向けて投げ付けたり、一歩間違えば大きな事故に至るものでした。
しかし、11月15日以後の海底掘削の強行に向けてなされた暴力行為は許されるものではありません。26日にはついに海上保安庁からも厳重注意がされるほど危険な行為が繰り替えされていました。私はそれらの現場に立ち合い、多くの証言を聞いています。
また、沖縄県の環境影響評価審査会の傍聴も幾度もして、審査会のメンバーの全ての方々が環境影響評価手続きの方法書の不備と、この事前調査への大きな疑問を指摘され「方法書の差戻し」さえ示唆されています。那覇防衛施設局および、防衛施設庁はこの事実を重く受け止めるべきです。
すでに現地ではリ一フの外洋に迫ったスパット台船の足場を据えただけでサンゴ礁が壊され、白化現象から回復途中の幼いサンゴが犠牲になっています。この上、63か所もの海底掘削が強行された場合にどのような生態系の破壊が起きるかは想像を絶します。
那覇防衛施設局西局長の「サンゴとサンゴ礁は別」などという無知も甚だしい発言は失笑ものです。生態系はひとつの繋がりにおいて存在することは自明です。例えば、ジュゴンの食物である海草は藻場があってこそ育まれるものです。だからこそ環境省はこの間の調査においても「ジュゴンと海草藻場」の調査に予算を費やして来たはずです。シーグラスベッドがあってこそのシーグラスであり、サンゴ礁なくしてはサンゴは生育しないのは誰でも認識しています。
我が国の国土を守り、海洋国日本の海を守ってこそ防衛庁の姿なのではないでしょうか?他国の戦争に加担するような施設を造るために自国の沿岸を破壊する違法な調査と市民の生命を脅かす危険極まる作業をただちに中止させることを強く要請します。
2004年12月6日
北限のジュゴンを見守る会代表 鈴木雅子
http://sea-dugong.org/