特別記事:イギリス核産業
サイモン・ボーワー、ポール・ブラウン記者
2000年8月21日(月)
劣化ウランは航空機の部品として、または病院での放射線療法の材料として使用されたもので、これらの機材が廃棄処分になる際の管理規制がますます緩くなっている。
ウランを含んだ部品がイギリスで「管理不可能な、人的被曝と環境汚染の危険を伴った、たくさんの地域で」蓄積されつつあると、米国のある企業がイギリスと米国の当局に報告した。
この情報は米国における情報の自由の法律のもとで公開されたが、イギリスの環境庁通商産業省からは秘密扱いにするよう宣告されている。
米国のPhilotechnics社は、ウランを回収し、使用できる部分はなるべくリサイクルしている。リサイクルされた材料がどこで使われるかの特定はしていないが、ガーディアン紙が入手した情報によると、Philotechnics社は別の会社に配送し、米国防衛省向けの機材を生産しているそうだ。リサイクル不能のウランは、テキサス州の認定された処分場に埋葬される。
リサイクルされたウランの最も良く知られた使い道は、貫通弾である。
今回の要請はイギリスから劣化ウランを輸送する初めてのものである。イギリスではウランをリサイクルしたり処分したりする場所がなく、航空会社や病院は、廃棄ウランがどんどん溜まっていくことに、ますます憂慮している。Philotechnics社は、劣化ウランの廃棄物は主に、古い機種の航空機用バランス調整用おもりとして使用されたものであると述べている。
Philotechnics社は、航空機が使用されていた間は、使用劣化ウランは腐食防止のため、下塗り、めっき、ペンキが施されていたが、同社のドナルド・バーバー航空プログラム部長は、航空機を廃棄処分する際、バランス調整用おもりからウラン酸化物が排出される可能性はきわめて高いと警告していた。ウラン酸化物は毒性があり、残存放射能はガンを引き起こす。
ブリティッシュ・エアウエイは、現在運行中の11機のボーイング747型機はこのバランス調整用のおもりを搭載しているが、スポークスマンによると、同社は同種のおもりを搭載していた廃棄処分された航空機はすべて売却したと言っている。
ケント州シッティングボーンの廃棄物回収局長のマイルズ・ウォレン氏は、申請書が認可されれば、1週間以内に最初の20トンの輸送用劣化ウラン廃棄物が集められると言っており、さらに劣化ウラン廃棄物を含む資源は事欠かないと述べている。
ウォレン局長はさらにこう付け加えている。「よくある話なのだが、会社が倒産して、競売人が一掃処分をし、荷台の上にある古い容器を裏庭に押しやって放置したりしている。病院によっては、放射線療法の機材の端に劣化ウランが使用されている事も知らない。そのような機材はずいぶん以前に製造されていて、殆どは廃れてしまっている。」
Philotechnics社の要請のもと、使用可能な材料はリサイクル専門の製造科学会社(MSC)に「製品在庫に組入れるため」に輸送される。
1985年以来、イギリス核燃料会社に1997年に買収されたMSCは、2,700トンもの劣化ウランを、航空機や機械のバランス調整用おもり、はずみ車、レントゲンの放射線遮蔽版、使用済み核燃料のキャスクなど、70,000個以上の製品にリサイクル利用している。