●イラク攻撃(第二次湾岸戦争)は資源略奪戦争にすぎない1991年の湾岸戦争から12年が過ぎようとしています。
●劣化ウランを含む広域破壊兵器を使う米国等はジュネーブ条約に違反
●イラクに必要なのは湾岸戦争により破壊された環境と人の健康への対策だ
【イラク攻撃は不当】
米国などは「大量破壊兵器を開発している」との名目で、イラク攻撃を行おうとしています。しかしイラクが大量破壊兵器を開発している証拠は、明らかにされていません。まして、湾岸戦争から経済制裁に至る過程で、イラクはまさに「大量破壊」を受けています。おそらく第二次湾岸戦争となれば、イラクが開発しているという大量破壊兵器でさえも足元にも及ばない規模の破壊と犠牲がイラクにもたらされるでしょう。それを正当化するいかなる理由も存在しません。
さらに、イラク攻撃の正当性は、戦後の資源支配という観点から見ても到底容認できるものではありません。
既にイラクの石油資源をめぐり米国などの石油産業が動き出しています。
世界最大の資源浪費国米国は、世界の資源の4分の1を独り占めしています。世界人口のわずか4%が25%の資源を使い続ければ、早晩矛盾は激化します。
従って、自ら浪費する資源を確保するために、中東だけでなく中央アジア、南米、アフリカ、インドネシアなどを自らの支配地域に置こうと、様々な活動を強めています。イラク攻撃の背景には米国の資源支配があることは既に常識になっています。そこには米国の「一国繁栄主義」(ユニテラリズム)だけが透けて見えます。従って、「今そこにある危機」は地球環境問題であるはずなのに、それにも背を向け、京都議定書からも離脱をしたのです。
世界で最も危険な道を突き進んでいるのは、イラクや北朝鮮などではなく米国そのものなのです。
【戦争は大量殺戮そのもの】
9月11日以来、米国は「対テロ戦争」を発動し、アフガニスタンを攻撃しています。「対テロ戦争」と言えば誰も反対できないばかりか、それに異を唱えるだけで「テロの側に着くもの」として制裁や弾圧が待っています。
そして「対テロ戦争」では、あからさまに非人道的兵器が大量投入されました。
サーモバリック(熱圧)爆弾、ロシアがチェチェン紛争で使用した際には、当時のクリントン政権が「非人道的な広域無差別殺戮兵器」として非難したものでした。
いまやアフガニスタンには、改良されて高性能化したサーモバリック爆弾が大量に使われています。
クラスター爆弾は、大量の子爆弾が戦後も残留し、事実上の対人地雷と化すため、対人地雷廃絶や撤去をすすめるNGOなどから厳しく非難されてきた兵器です。これもまたアフガニスタンでは大量にばらまかれ、子どもたちを初め、多くの市民が犠牲となっています。
そして劣化ウラン兵器。これまでの劣化ウラン弾だけではなく、誘導ミサイルや巡航ミサイルの貫通体などとして、大量に使われていることが疑われています。
米国の特許データベース情報などから、実用化されていることは明らかなのに、英国や米国の軍事当局はそれを隠し続けています。しかし「未知の金属」を使った爆弾は毎日のように使用され、ばらまかれた劣化ウラン総量は湾岸戦争を超えるかもしれないと危惧されています。潜在的な「アフガン戦争症候群」は、これから顕在化する可能性が高いと言わざるを得ません。
【拡大するイラクの悲劇】
もし第二次湾岸戦争が起これば、今では誘導ミサイルや巡航ミサイルなどに通常使用されている劣化ウランがまたしても大量にイラクや周辺地域にばらまかれることになります。湾岸戦争の被害もまだ癒えていないうちに、さらに厖大な量の劣化ウランがばらまかれれば、犠牲はさらに巨大なものとなるでしょう。
劣化ウラン兵器にしてもクラスター爆弾にしても、一種のナパーム弾であるサーモバリック爆弾も、本来であれば国際法上使用してはならない「広域無差別殺戮兵器」であるはずです。
1949年のジュネーブ条約追加第一議定書でも、明白に「無差別殺戮兵器」は禁止されています。
劣化ウラン兵器は、使われたときだけではなく戦後も半永久的に地域を汚染し、特に子どもたちに重大な打撃を与えます。
ウランだけでなくプルトニウムまで含む劣化ウラン兵器からのアルファー、ベータ、ガンマ線の影響は、半永久的に残り続けます。
放射線感受性は、成人に比べ10歳以下の子どもたちは10倍以上になります。また、劣化ウラン兵器から生じる数ミクロンの塵(ホット・パーティクル)は、重いため地上に近いほど高濃度となり、身長の低い子どもほど大量に曝されます。総合的には同じ環境にいても成人よりも子どもたちが100倍も劣化ウラン兵器の打撃を受けることになると推定されます。
また、劣化ウランの粉塵は風に乗って広い地域を汚染します。
コソボで使われた劣化ウランは、遠くギリシャやハンガリーでも見つかっています。イラクで大量に使われれば、周辺もまた汚染されていくのです。
【問われる日本】
イラク攻撃に荷担する国の政府、とりわけ米軍にとっては兵站を担い、戦略的要衝として位置づけられる日本、しかし一方では核兵器の被害を受けて「原爆の惨禍を二度と繰り返さない」と、非核三原則を国是とし、誓ったはずの日本は、次の問に答えなければなりません。
質問1
米国がイラク攻撃のときに使うであろう、誘導ミサイルや巡航ミサイルなどに使用されている機密の貫通体「高密度金属」は、何でできているのか。
質問2
この金属が劣化ウランを成分として作られていたならば、攻撃により放射性物質を広範囲に拡散させる「ダーティボム」の使用を、いかにして正当化するのか。無差別殺戮兵器であり、放射性物質であり、何世代にもわたる被曝を引きおこし、長期的影響はまさしくヒロシマナガサキの原爆被害と同種のガンや白血病、その他の多種多様な病となる兵器を使うことに対して、どのような正当性があるというのか。
少なくても核兵器の廃絶を唱える国の立場として、被曝被害を拡散させる兵器の使用は、いかなる理由があろうと認めることはできないはずではないのか。
【劣化ウラン使用の責任を問う】
私たちは、イラク攻撃どころか、すべき事が置き忘れられていると考えます。日本政府、米国政府、英国政府並びに国連に対し以下の通り要求すると共に、湾岸戦争など、劣化ウラン兵器を使用したすべての地域に対し、以下のことを行うよう求めます。
この戦争は止められます。そして止めなければならないのです。
1991年1月17日、テレビで映し出された炎に包まれるイラク、その下で命を奪われ、傷つけられたすべての市民、そして湾岸戦争後に生まれ、劣化ウラン兵器の影響などにより日々命を奪われている子どもたちに思いを寄せながら・・・
[以上]