Laka Foundation, May 1999
http://www.antenna.nl/~wise/uranium/dhap993.htm
「湾岸戦争退役兵と劣化ウラン」より抜粋
ロザリー・バーテル博士
六フッ化ウランやフッ化ウラニル、四塩化ウラン、六水化硝酸ウラニルなど、溶解性の高いウラン化合物は、被曝して数日以内に、肺胞の空洞部から血液中に吸収されやすい。
吸入物質はまた、咳や器官系の働きによって胃腸系へも入っていくが、実際に腸壁を通して体液に吸収されるのは2%程度である。
ウラン急性障害に関する研究報告書はすべて、こうした溶解性ウラン化合物の吸入について書かれている。
溶解性ウラン化合物によって引き起こされる急性障害は、主に腎臓系に出る。化合物が長期にわたって沈積するのは、主に骨である。
こうした研究成果はしかし、劣化ウラン兵器が戦場で使用されたときに兵士たちが被爆した、不溶解性ウラン化合物に簡単に適用することはできない。
兵器に利用されるのは、金属ウランである。金属ウランは、燃焼すると二酸化ウランに、一部は三酸化ウランに変化する。これらウラン化合物の粒子は、2.5μ以下の大きさで、肺や肺リンパ節に何年も留まる。
英国NRPBの研究によれば、ウランは摩擦で燃焼するとセラミック状になる。これは、湾岸戦争でも起こったことだ。
セラミック状二酸化ウランは、非セラミック状二酸化ウランに比べて、肺から血液に吸収されるまでに二倍の時間がかかる。
吸入され、胃腸系を通過する酸化ウランの内、腸壁から吸収されるのは、0.2%程である。セラミック状ウランではおそらくもっと少ないであろう。吸入された化合物はもちろん、胃腸を通過するときに内部被爆を引き起こす。ウランはα線を放出しているからだ。
不溶解性ウラン化合物が胃腸系に滞留する時間(生物学的半減期)は、数年とみられている。
すべてのウラン同位体混合物(劣化・天然・濃縮)は、同じ化学的性質を持っている。
現在動物実験によって、ウランの化学毒性は尿細管細胞を損傷し、腎炎の原因となることが分かっている。
どのウラン同位体であれ、その化合物が溶解性であるか不溶解性であるかによって、毒性に大きな違いが出る。
水溶性塩は全身、主に腎臓に対して毒性を持つ。 不溶解性化学化合物は、主に肺に対する化学毒性と、全身への放射性毒性を持つ。二酸化ウランは血中に入ると六価ウランとなり、全身に対する化学毒性を持つ。
米国退役軍人本部(US Veterans Administration:VA)による、退役兵が被爆した不溶解性酸化ウランの毒性は主に腎臓に対するものだという主張は、まったく科学的根拠のないものであることに注目して欲しい。
この主張は、VAが退役兵の健康問題の原因は劣化ウランにあると判断する基準となっている。
不溶解性ウランによる中・長期被爆期間は、米国では、その放射特性によって規制されている。酸化ウランの排泄率は遅いため、ウランが排泄される前に腎臓や尿細管組織の修復や再生が行われることも可能だ。さらに、生物学的半減期が長いため、ウランの多くは、いまだに退役兵の体内に滞留しており、腎臓を通過していない可能性が高い。
ウラン化合物による肺や腎臓への直接影響は、化学毒性と放射毒性の複合結果と考えられ、これら分離できない2つの要因のどちらに一つ一つの障害がどの程度関係しているかを判断することは、困難である。
不溶解性酸化ウランの吸入は、肺組織全体とくに肺胞上皮への非ガン性障害を引き起こすということを示す、人間についての研究報告がある。急性被爆では、気腫や肺繊維症にもなり得る。また動物実験では、ウラン化合物が血液学的に害作用を引き起こすことが分かっている。