ニュースレター第14号(2005/9)
<はじめに>
今年になり、劣化ウランと低線量被曝に関して、とても重要な出来事がありました。
WHO(世界保険機構)の元放射線防護上級顧問をしていたキース・ベーバーストック氏が、WHOの劣化ウランに関する報告書は意図的に操作されていることをかねてから批判してきましたが、2005年6月23日に欧州議会で開かれた「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)の第二回年次総会のパネルディスカッションで発言者として登壇しました。
また、6月29日には米国全米研究協会(NRC)に属する科学アカデミーの「電離放射線の生物学的影響に関する委員会(BEIR)」が第七回目の報告書を公表し、低線量被曝について新しく検討した結果を明らかにしました。
2005年7月8日付けの米国「科学」誌は「ウィークリー・ニュース」で「疫学:最も低い線量でさえ危険な放射線」という、ジョセリン・カイザー記者のレポートを掲載した。以下にその概要を掲載します。
低線量被曝の影響
記事は「全米研究協会(NRC)の新しい報告によれば、低線量放射線の危険は小さいながらも、安全なレベルは存在しないことがより明確になった。この結論は、ごく少量の放射能は無害あるいはむしろ有益でさえあるという仮説を退けたことで、これまでの15年間でもっとも強くなったとNRCの委員会は述べた。原子力労働者の保護や放射性廃棄物の除染基準に影響を与えるため、低レベル放射線の危険性は大きな経済的意味を持つ。」と、これまでの放射線防護体制が低レベル放射線を過小に評価してきたために、今後に大きな影響を与えるだろうと指摘している。
どういうわけか日本ではほとんど報道されていないが、被爆60年を前に、非常に重要なニュースである。
報告書を作成したのは米国科学アカデミーのもとにある「電離放射線の生物学的影響に関する委員会(BEIR)」通称ベアー委員会で、6月29日に通算で第7回目の報告書を公表した。この委員会は戦後、放射線の危険性について検討を重ね、何度かの報告書はそれまでの安全基準を厳しい方向に修正するきっかけとなったものもある。
例示的に示されたのは、生体分子結合を切断するのに十分なエネルギーを持つ「低LET(線エネルギー付与)電離放射線」の被曝量が0.1シーベルト(100ミリシーベルト)の場合における被曝リスクである。これは平均的な一般人の年間被曝線量(約2.5ミリシーベルト)の約40倍に相当する線量であり、原子力労働者が年1回に限り認められる最大被曝限度の2倍に相当する。
それによれば、一回の0.1シーベルトの被曝を100人の人間がしたとすれば、一生に1人程度の過剰なガンを引き起こし、そのうち半分はそれが原因で死亡すると推定している。100人が0.1ミリシーベルトの被曝をしたとすると、その集団被曝線量は10人シーベルトという数値となる。この値は国際放射線防護委員会(ICRP)や日本の旧科学技術庁の推定である10人シーベルトあたり1人のガン・白血病死という基準値の半分となる。
実際には、現在の人口統計上、この100人のうち42人(ただし米国の人口統計においてである)が致命的なガン・白血病で亡くなると想定されるから、これに0.5人のガン・白血病死が加わるという関係になるとしている。
直線モデルを支持
放射線の人体への影響については、直線モデルが想定されてきたが、これを明確に支持している。
直線モデルとは、「閾値のない直線的なモデル」(LNT)の意味であり、このモデルでは放射線の影響を過大評価するという批判も過小評価になるという批判も双方があったのであるが、この報告ではいずれも退けたということになる。
ベアー委員会の委員長で、ハーバード大学の公衆衛生学部疫学教授であるリチャード・R・マンソンは「科学的検証によれば、閾値以下のレベルの放射線であれば無害か、あるいは健康にむしろ良い影響を与えることを示す証拠は無かった。健康障害、特に固形ガンの発生については放射線に曝されるにつれて増加する。低い線量であれば危険も小さいが、生涯線量が増すに従い、危険もまた増加する。」としている。
実際のところ、この直線モデルの考え方で放射線防護体制を構築しているわけではない。ICRPの基準なども、直線モデルから想定される被曝の影響に比べて過小に評価している。そのため、現実の放射線防護制度は安全側にはなっていないという現実があり、今回の直線モデル支持つまり「どんなに少ない線量でもそれなりの確率で影響がある」という考え方が示されたことで、放射線防護の考え方にも影響が出ることは避けられない。
ホルミシス効果を否定
わずかの放射線を浴びることは健康にとってかえって良いとする考え方を「放射線ホルミシス効果」というが、これを説得力に欠けると退け、むしろ放射線の健康にとって不利な影響はごくわずかの線量域でも直線的に続くとした考え方は、原子力産業にとって重大な影響を与えるであろう。
「閾値のないモデル」は、いわゆる「ホルミシス効果」を支持する人や低線量下では影響がないとする人から見れば、明らかに影響を過大に評価するものとして批判の対象となってきたが、今回の報告は閾値のない直線モデルを前提とすることを明記している。
遺伝的影響の証拠は発見できないものの否定せず
さらにベアー委員会は次世代にわたる遺伝的影響を調べたが、これについては明確な証拠は見つからなかったとした。しかし「ネズミおよび他の生体の研究においては精子および卵の放射線によって引き起こされた細胞突然変異が子に伝えられるというデータが提示されており、このような突然変異が同じく人間の子に伝えられることはないと信じる理由がない。」「広島・長崎でこのような影響を観察出来なかった理由はおそらく生存者の数が十分ではなかったことを反映しているのであろう。」とプレス発表では述べている。
すなわち、性遺伝子に放射線を照射して発生させた変異は発生個体に伝達されることが明らかな以上、人間においても起こりえると考えるのが自然だが、ヒロシマ・ナガサキの原爆被爆者およびその子孫に見いだされない理由として、被爆ないし被曝後の衛生状態の悪さや医療体制の不備などで生存できなかったケースが多く、入市被曝者を含め、その子に変異が起こりえる条件を持った生存者が統計上有意な差を生じるだけの数が残らなかったという残酷な現実があったのかもしれないという推定をしている。
与える影響
しかしながらベアー委員会の報告書で主に述べられているのは、放射線の外部からの被曝に関するリスク評価であり、放射性物質を体の内部に取り込む内部被曝のリスクに関しては十分に取り上げられていない。
もっとも、甲状腺ガンを評価している以上、体内に取り込まれたヨウ素を通じての被曝を評価対象にしているということになるであろう。しかしながら局所的に大きな被曝となり得る内部被曝は、従来の被曝モデルで扱うと過小評価になるという批判については、これを否定している。低線量被曝の危険性の認識はまだ甘いと言わざるを得ない。
そのような限界を持っているとはいえ、全体としてリスク評価は前進的であると見ることが出来るし、現在の日本の被曝評価や公衆の被曝量を考えるときに大きな影響を与えずにはおかないであろう。
この報告は一人一人の一般市民にとっては、特に身近なケースとして医療被曝に関して大きな問題を提起していることは事実だが、これまでも、そしてこれからも私たちが原子力開発により受ける低線量被曝問題にかかわってくる。
チェルノブイリ原発や99年の茨城県東海村のJCOのような放射能放出事故が起きればもちろんだが、日々稼働中の原子力施設からの被曝も無視し得なくなる。例えば六ヶ所村の再処理工場が稼動すれば、大気中に、海中に、大変な量の放射性物質が捨てられ、地元に住む人々はより多く、遠くに住む人々にとってもそれなりの被曝は避けられない。原子力規制当局にとっても、市民全体に対してはもとより、働く現場の低線量被曝を考える上で大きな方針の変更を迫られる場面も生じうる。これは、原子力産業にとって大きな「衝撃」となる。
近年アスベストの被害に再び光が当たろうとしている。この種のリスク評価は、科学的知見が増えれば増えるほど安全側に変更されてきた。
経済性の原理と危険性の評価は、時間と共に変化し続けている。放射線被曝についても例外ではないのである。
劣化ウランリスクをどう見ているか
ベアー委員会は、劣化ウラン兵器については何も語っていない。しかしラドンガス(いわずとしれたウラニウム崩壊系列上の放射性物質)やタバコの煙からの被曝を論じている報告書であるから、そのような放射性物質に警戒を要するという視点であるならばなおさら劣化ウラン兵器により拡散したウラニウムの粒子を論じないわけにはいかないだろうと思う。本来ならばそうすべきであるが、ベアー委員会のスポンサーには米国防総省や米国土安全保障省も含まれていることは考慮すべきことである。
2005年6月23日、欧州議会において開催された「ウラン兵器禁止を求める国際連合・ICBUW第二回年次総会のパネルディスカッションで、元WHOの放射線顧問キース・バーベーストック氏は、次のような報告を行なった。
WHOなどの位置づけ
一見、独立した国際機関と見られる世界保険機構WHOだが、こと放射線被曝に関する問題となると、その性質には疑問を抱かざるを得ない。劣化ウランに関しても、IAEAなど多数の国際機関や国立放射線防護評議会などの機関が評価をしているが、実際のところこれが「独立した」ものとは言えないかもしれない。それは、例えば、英国国立放射線防護評議会のスタッフはWHOや英国王立協会の報告にも関与していることは周知の事実であるし国際放射線防護委員会の議長は最近まで英国国立放射線防護評議会の議長でした。ここのスタッフはIAEAと共同で仕事をしているし欧州委員会31条(「欧州原子力共同体」条約)グループのメンバーにもなっている。だから、ごく少数の個人が、これらのいわゆる独立に行われた評価の結果に影響を与えたということも十分ありうる。
劣化ウランの毒性
2000年から2002年にかけて劣化ウランのリスクに関する調査を行った。劣化ウラン弾は硬い目標にあたって炎上すると、酸化ウランの微粉末となって拡散する。これは人類がこれまでに経験をしなかった状況であり、自然界には全く存在しない代物である。
さらに核燃料製造ライン上で加工、精錬でもそのような状態のものは生じないため、劣化ウランが兵器として湾岸戦争に使用される91年まで、大規模にこういった物質に暴露されるという事例は無かった。
国際放射線防護委員会によれば、吸入された酸化ウランは、もしそれが不溶性であれば肺に対して放射線が作用し、水溶性であれば腎臓に対して化学毒性(腎機能障害をもたらす生理学的毒性)が危害を与えるだろうという。
酸化ウランには、実は、不溶性の部分と、わずかに溶ける部分(難容性)とがあり、実験では、低濃度の劣化ウランに細胞を暴露させると悪性化する。劣化ウランを実験動物の体内に埋め込むと悪性腫瘍が生じるといった知見もある。このような研究結果が、88年以降、次々と発表されている。これらの実験のような低濃度と、与えられた実験条件下で観察された影響は、放射線によって引き起こされたとはどうも考えにくいのです。むしろ、化学的な染色体への毒性作用によるものだと考える。
毒性の相乗効果
2001年にこれらの知見を知ったベーバーストック氏は、吸入によって肺の深部にまで入り込む酸化ウランの粒子が長期間留まりつづけ、その結果何週間、何ヶ月間にもわたり、放射性毒性の危険だけでなく、化学毒性の危険、そしておそらくは両者の相乗作用をも、もたらさすだろうと確信するようになった。
そのことからICRP勧告に基づくいかなるリスク評価も本当のリスクを過小評価しているに違いないと考えるようになった。
また劣化ウランはアルファー線を放出するが、いわゆる「バイスタンダー効果」(傍観者効果)によって危険性がさらに高まる可能性もあるという報告が近年出てきた。
アルファー粒子に「攻撃を受けた」細胞が一つであったとしても、その周囲の細胞にシグナルが送られ、周辺細胞も被曝したかのようにふるまうようになるというのがバイスタンダー効果の特長で、これで放射線の影響はあたかも増幅したような結果を引き起こす。
このように、酸化ウランについて詳細に検討すると、従来から言われていた直接的な被曝による放射能毒性に加えて、さらに3つの危険を引き起こす経路が明らかになってきた。つまり、化学毒性、放射能毒性と化学毒性の相乗効果、そしてバイスタンダー効果による影響である。
ベーバーストック氏の結論
パネルディスカッションでのベーバーストック氏の結論は次の通りである。
『このような証拠を無視し続けることは、非常に無責任なことだと私は思います。予防原則の適用を求める圧倒的な証拠がありますし、それは少なくとも戦場の酸化ウランの除染が必要であることを示しています。イラクでは問題は特に深刻です。乾燥した気候の下では、長期にわたって、酸化ウランの粒子が難容性の成分に留まり、再浮遊と吸入が最大限行われるような状況が促進されます。
「民主主義が喉を潤すための井戸に政治が毒を投げ入れた。」という私の発言が記録に残されています(文献18)。政治的ご都合主義は、真に独立した研究を排除し、そのことによって大衆の信頼を得ようとするもの他ならないということを、この言葉でお伝えしたいのです。大衆の信頼を得ることなしに、民主主義は成り立ちません。リスク評価においては、科学は、覆い隠すことなく、誰の目にも明らかなように、証拠を示すべきです。そして、結果が真実であるということだけに関心を持つべきです。このような証拠に基づいて、その時代の社会的・法的状況の中で受け入れられるリスクを政治が決めるべきなのです。』
昨年から今年にかけ、低線量放射線被曝と劣化ウランに関する重要な科学的意見が相次いで明らかにされた。いずれも立場も経歴も異なる人々、団体が追及してゆくと同じ結論に到達して行く。
劣化ウランは危険であり、低線量被爆も危険であると。
科学は誰のものか。これは現代においておそらく最も重要な問いの一つとなっているであろう。
人間の命を救うために、地球環境を保全するために使われるのか、それとも戦争と支配、隷従と圧政に使われるのか。これまでの歴史は、後者が主で前者は従の関係であった。
それを転換できなければ、私たちに未来はないであろう。
与党は「郵政民営化の是非」が争点だと主張した2005年衆議院選挙。自衛隊のイラク派兵でさえ市民の声を聞くこともなく強行をし、戦後初めて軍隊を戦地に送った小泉政権の、もう一つの発言「自己責任」という言葉を、私たちは忘れることは出来ない。
毎年3万人を超える自殺者も、いわばこの言葉の犠牲者である。この一言には「日本という国家が国としてイラクに関与するに当たり、個人はそれに忠実に従属すべきだ」という構図しか見えてこない。ここから逸脱するものには、日本政府は一切救援もしない。そんなことがまかり通る国は世界でもわずかだ。一方、選挙の争点として第一に議論の俎上に乗せられるべきイラク派兵をも含む外交政策は、論点から完全に消えてしまった。そのことを訴える少数の候補者についてさえ、メディアは完全に無視した。
例えば小泉首相の選挙区である横須賀では、元レバノン大使の天木直人さんが「神奈川11区」で立候補したが、全く報道されることはなかった。
そうではあっても選挙について短信ながら本当に貴重な記事が愛媛新聞に掲載された。
劣化ウランのことに直接は触れていないが、2005年衆議院選挙報道の貴重な記録として残しておきたい。
あるイラク人の叫び取材最前線
2005年8月24日愛媛新聞
イラクのバグダッド出身でフリージャーナリストのイサム・ラシードさんが先日、松山市を訪れ講演した。日本列島が郵政解散に伴う衆院選に染まる中、イラクでは戦争が続き、自衛隊が派遣されている現実をあらためて思い知らされた。 イサムさんはイラク戦争最大の激戦地と言われるファルージャで米軍の厳しい報道管制をかいくぐり、ビデオカメラを回し続けた。爆撃で片足を失った幼児、戦車の砲弾を住宅に命中させ歓喜の声を上げる米兵ー。衝撃的な場面が続き、聴衆が身じろぎせず見入る姿が印象的だった。 取材中に米軍に拘束され、旧アブグレイブ刑務所で拷問も受けたイサムさん。ジャーナリストとして「とにかく真実を伝えたい」と現状を隠ぺいしようとする米国を非難する一方、「日本もイラク戦争に参加していることを忘れないでほしい」と付け加えた。 確かに郵政解散に伴う衆院選ではある。立候補予定者の口からイラクという言葉が聞けないと叫んでも、声は十分に届かないかもしれない。しかし自衛隊のイラク撤退期限は12月末に迫っている。イラク“派兵”をどう考えるのか、しっかりと判断基準に据え投票に臨みたい。
線量限度の被ばくで発がん;国際調査で結論
6月30日共同通信配信
放射線被ばくは低線量でも発がんリスクがあり、職業上の被ばく線量限度である5年間で100ミリシーベルトの被ばくでも約1%の人が放射線に起因するがんになるとの報告書を、米科学アカデミーが世界の最新データを基に30日までにまとめた。報告書は「被ばくには、これ以下なら安全」と言える量はないと指摘。国際がん研究機関などが日本を含む15カ国の原発作業員を対象にした調査でも、線量限度以内の低線量被ばくで、がん死の危険が高まることが判明した。 低線量被ばくの人体への影響をめぐっては「一定量までなら害はない」との主張や「ごく低線量の被ばくは免疫を強め、健康のためになる」との説もあった。報告書はこれらの説を否定、低線量でも発がんリスクはあると結論づけた。業務や病気の診断や治療で放射線を浴びる場合でも、被ばく量を低減する努力が求められそうだ。
米科学アカデミーは、従来被ばくの発がんリスクの調査に用いられてきた広島、長崎の被爆データに加え、医療目的で放射線照射を受けた患者のデータなどを総合し、低線量被ばくのリスクを見積もった。
それによると、100ミリシーベルトの被ばくで100人に1人の割合でがんを発症する危険が判明。この線量は、胸部エックス線検査なら1000回分に相当するという。また、100ミリシーベルト以下でもリスクはあると指摘。10ミリシーベルトの被ばくになる全身のエックス線CTを受けると、1000人に1人はがんになる、とした。 また、国際がん研究機関などが約40万7000人の原発作業員らを長期追跡した調査では、100ミリシーベルトの被ばくにより、がん死の危険が約10%上昇するとの結果が出た。調査対象の平均累積被ばく線量だった約19ミリシーベルト程度でも、がんの死亡率がわずかに高まる可能性が示された。
日本の商業原発では2002年度の1年間に作業員が浴びた線量の平均値は1・3ミリシーベルト、最も多く被ばくした作業員は19・7ミリシーベルトだった。
放射線:低線量被ばくでも発がんリスク;米科学アカデミー
毎日新聞2005年7月1日東京朝刊
【ワシントン共同】放射線被ばくは低線量でも発がんリスクがあり、職業上の被ばく線量限度である5年間で100ミリシーベルトの被ばくでも約1%の人が放射線に起因するがんになるとの報告書を、米科学アカデミーが世界の最新データを基に30日までにまとめた。報告書は「被ばくには、これ以下なら安全」と言える量はないと指摘。国際がん研究機関などが日本を含む15カ国の原発作業員を対象にした調査でも、線量限度以内の低線量被ばくで、がん死の危険が高まることが判明した。
爆音が止んだ梅香里、「終わらない戦争」
ソウル新聞(韓国)2005年8月24日
54年ぶりに閉鎖された米軍海上爆撃場が位置する京畿道華城市梅香里のノン島で、全国の土壌の平均検出値より最大988倍、土壌環境保全法が規定する土壌汚染対策基準より15.8倍も多い鉛が検出されている。1951年から週当たり平均60時間の爆撃訓練で荒廃化したノン島は、12日で訓練が中断されており31日に韓国政府に返還される。
ソウル新聞の取材チームは18日、ノン島頂上部と爆撃ターゲットが位置した島の海岸など合わせて9ヶ所の土壌を採取して、国家指定研究機関である光州科学技術院環境分析センターに重金属及び放射能分析を依頼し、23日に以下の結果を得た。
鉛は米軍戦闘機とヘリにより爆撃目標とされた場所の海辺の砂から最大4,746mg/kgが検出された。これは環境部が定めた土壌汚染対策基準の300mg/kgより最大15.8倍高い高濃度で、一般重化学工業団地よりも深刻な重金属汚染が進行していることを示した。また、昨年に農業科学技術院が調査した全国農耕地平均値の4.8mg/kgよりも988倍も多い量だ。
農業科学技術院の関係者は、『300mg/kgを超えれば農作物の栽培自体が法で禁止された汚染地域であり、事実上は死んだ土地』だとして、『鉛含有量が4,000mg/kgを超える程度であれば、鉱山などの既存の汚染地域を考慮しても相当な水準』だと説明した。
ジープと模型ミサイル、コンテナパック類のターゲットなど合わせて5ヶ所で採取した土壌は、ノン島の頂上部より100倍以上多い330〜4,746mg/kgの鉛が出てきた。反面、爆撃から除外されたノン島頂上部の3ヶ所は1.69〜29mg/kgに止まっており、ノン島から1.5q離れた陸地で採取した土壌も正常数値の2.35mg/kgと判明した。事実上、ノン島が米軍の爆撃によって汚染されたことを立証するものだ。
また、銅はノン島の海岸で最大80.4mg/kgが検出され、土壌汚染憂慮基準の50mg/kgを上回った。カドミウムは最大5.46mg/kgが検出され、土壌汚染対策基準値の4mg/kgを超過した。銅とカドミウムは全国平均値の4.7mg/kg、0.1mg/kgより各々17.1倍、54.6倍多いと判明した。ノン島向側の陸地の土壌からは、銅が3.29mg/kg、カドミウムは検出されないなどすべて正常値を記録した。 科学技術院の関係者は、『重金属の検出数値で見るとき、総体的な環境復元が要求される程に深刻な水準』だとしつつ、『分解されたり無くならない重金属の特性上、汚染物質が陸地の村住民と生態系にも影響を及ぼす可能性が高い』と語った。
今回の調査で放射能は検出されなかったと科学技術院側は明らかにした。しかし、米軍がノン島で劣化ウラン弾を使用したという疑惑が絶え間なく提起されているだけに、国家機関の精密調査が必要だと思われる。
−イラク「命の水」支援プロジェクトからのお願い−
サダム政権崩壊から2年。米軍の占領政策破綻により、イラクでは相変わらず水と電気が不足しています。
バグダッドも例外ではありません。7月19日の浄水場爆破によりサドルシティを始めとして市内領域の50%で給水がストップしました。(3日後に給水が始まりましたが、過去6週間のうち給水されなかった週が4回もありました)。
人々は常に水が来ない不安にさいなまれています。
イラクレジスタンス・レポートによると、バグダッドでは、水不足により、重症患者が続出しています。(以下、イラクレポートからの引用)
「私たちにできることは、このことによる死者を減らすことだけ。病院と診療所で見られる患者の数はひじょうに多いが、その原因はいつも同じです。子どもたちは汚染された水で重い病気になっています。それも家庭で普通に使っている水ですよ」−バグダッドのシャブ地区で内科を専門とするハリド・アドナン医師が悲惨な状況を話したが、占領軍とその手先がレジスタンスとの戦闘や宗派間の不一致にしか関心を示さず、水処理問題を無視しているために事態は悪化の一途をたどっている。
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TUP(Translators United for Peace; 平和をめざす翻訳者たち)が伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」
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ISBN4-8228-0480-1
世界は変えられるII−戦争の被害者って?加害者って?−
TUP(Translators United for Peace; 平和をめざす翻訳家たち)
定価1800円+税四六判上製288ページ
ISBN4-8228-0489-5
イラク占領と核汚染
森住卓=写真・文
A5・160ページ(写真96ページ/文章64ページ) 2005年8月6日発行
本体価格2000円ISBN4-87498-347-2
米英軍のイラク攻撃は、イラクの人々に何をもたらしたのか!?イラク戦争開戦前夜から占領下を含め通算八回、イラク各地を取材。軍事占領と劣化ウラン弾、イエローケーキなどによる放射能に苦しむ人々の姿を、鮮烈な写真と文章で伝えるフォトドキュメント!
放射能兵器・劣化ウラン−−核の戦場・ウラン汚染地帯
劣化ウラン研究会編
技術と人間社発行
〒162-0814東京都新宿区新小川町3−16
TEL:03-3260-9321 FAX:03-3260-9320
2003年3月発行
定価2500円
「ボクは死ぬんだ。死んでしまうのだ。」イラクの小児病棟では連日、血を吐きながら子どもたちが死んでゆく。劣化ウランは史上最悪の大量殺りく兵器である。この兵器を使用しているかぎり、人類だけでなく、地球上の生きとし生けるものに未来はない!
<主要目次>
第1章危険な劣化ウラン弾
第2章劣化ウランの軍事転用
第3章核燃料サイクルと劣化ウラン
第4章身近にあらわれる劣化ウラン
第5章劣化ウランおよび劣化ウラン兵器廃絶運動
<著者紹介>(50音順)
伊藤政子:アラブの子どもとなかよくする会代表
新倉修:青山学院大学法学部教授
野村修身:電磁波問題市民研究会代表
藤田祐幸:慶応義塾大学物理学教室助教授
森住卓:フォトジャーナリスト
矢ヶ崎克馬:琉球大学理学部教授
山崎久隆:劣化ウラン研究会代表
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