ニュースレター第11号(2004/9)

〔はじめに〕

8月5日原水禁大会で、初めて劣化ウランの分科会が開催されました。
広島、大阪、東京など各地で劣化ウランに取り組む人々が一堂に会しての会議は、大変な盛況となりました。劣化ウランについての高い関心と、取り組む人々の広がりが伝わる会議でした。
その報告を、劣化ウラン研究会のメンバーでもある横澤典子さんに書いて頂きました。


8月6日のヒロシマを訪れて

STOP劣化ウラン弾キャンペーン・横澤典子

今年も8月の広島は暑かった。59年前原爆が落ちた日もとても暑かったということだ。
今回私は広島で、原水禁の主催するイラクと劣化ウラン問題という分科会と、「8・6ヒロシマ平和へのつどい2004(代表湯浅一郎)」に参加した。また、ウラン兵器の禁止を求める署名活動も行ってきた。その報告をしたいと思います。

<59周年原水禁世界大会分科会「イラクと劣化ウラン問題」>

8月5日の午前中に、イラク戦争とウラン兵器に関する原水禁の分科会が開かれた。
原水禁の分科会の中で劣化ウラン問題を単独で扱ったのは、今回がはじめてということだった。
会場は200名前後の人で埋め尽くされており、椅子が足らずに床に座って話しを聞く人もいるほどの盛況ぶりであった。イラク戦争と劣化ウラン兵器への関心の高さがうかがえた。講師は広島原水禁前事務局長の横原由紀夫さん、内科医でヒバク反対キャンペーンのメンバーであり、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)の評議員の振津かつみさん、フォト・ジャーナリストの豊田直巳さん。振津さんは内科医の立場から、劣化ウランの生体への影響について、基礎研究をふまえながら話をされた。
また、長年チェルノブイリの被災者への医療支援を行ってきた経験から、今後イラクへの医療支援をどのように行っていったらよいかを提起した。豊田直巳さんによる、写真を使ったイラク現地報告等もあった。私自身、イラク支援活動や劣化ウラン兵器の廃絶という課題に取り組もうと思っている。日本にいる私ができる最も効果的な方法はなんだろうと、改めて考えてしまった。

<8・6ヒロシマ平和へのつどい2004>

8月5日の夕方6時から、広島YMCA地下コンベンション・ホールで開かれた。
100名前後が参加。発言者はケン・オキーフさん(イラク戦争開戦阻止「人間の盾」発起人)、イヴァン・メディナさん(イラク戦争帰還兵)、Dr.サルマさん(イラクのマンスール子供病院医師)ラリー・ウイットナーさん(ニューヨーク州立大学)嘉指信雄さん(NODUヒロシマ・プロジェクト代表)等、色々な立場の人々の発言を聞くことができた。中でも、イヴァン・メディナさんの話は印象的だった。イラク戦争帰還兵で、共に派兵された双子の兄弟をイラク戦争で亡くした。身内の人間を亡くす悲しみ。戦争で敵・味方関係なく、多くのアメリカ兵とイラク人が死んでいく様を体験した自分が、事実を人々に伝えたい。そして内側から戦争ばかりしているアメリカを変えたいと語った。
人間の盾発起人のケン・オキーフさんは、元海兵隊員で湾岸戦争のときイラクに派兵された経験から、戦争を止める行動を始めたらしい。彼は、白人の命より有色人種の命が軽んじられている価値観を逆手にとって、パレスチナに一万人の人間の盾を送り、パレスチナ・イスラム紛争をやめさせる行動を提起し、参加を募っていた。
また、マンスール子供病院の医師Dr.サルマさんは、イラクの子供達の癌等における疾病率の高さを指摘し、世界から見捨てられている闘病中の子供たちへの医療支援を訴えた。また、NODUヒロシマプロジェクトの嘉指さんから、11月6日の国際共同行動日に、日本各地で思い思いにウラン兵器禁止の行動を起こそうという提案がされた。
この集会が始まる前に全国各地でウラン兵器禁止や廃絶の取り組みを行っている30程の団体が顔あわせをしたということだ。
被爆後59年をむかえた、8月6日の平和記念式典では昨年よりも5000人多い45000人(市発表)が参列した。
広島の秋葉忠利市長が、平和宣言で「記憶と行動」をキーワードに、来年の60周年式典にむけて被爆の記憶を呼び覚まし、体験の継承や共有を通じて核廃絶を目指すことを誓い、アメリカの国際法無視や核兵器を小型化し、日常的に使うための研究再開などを厳しく批判した。
秋葉市長の平和宣言は拍手をもって迎えられたのに対し、小泉首相の式典あいさつに対してはザワザワとした批判の声が会場に響いた。下を向いたままボソボソと話しており、「核兵器の廃絶に全力で取り組む」という言葉が空しく聞こえた。昨年、外務省に劣化ウラン問題の申し入れをする際、秋葉市長にメッセージをいただいた。そのお礼に前回、広島の平和推進課に行ったときに「小泉首相は記念式典に呼ぶ必要があるのか」と尋ねたところ、広島市長の話を聞いてもらうという意味でも、記念式典に参加してもらわないといけないそうだ。市長が首相に意見できる数少ない場なのだという。
昨年ヒロシマを訪れたときは、今まで知っているようで知らなかった、原爆投下の凄まじさにただ圧倒され、広島市平和推進課のNGOと連携した核廃絶への取り組みに感嘆するばかりだった。
今回ヒロシマを訪ねて思ったことは、自分達で行動を起こすことが大切なのだなあということだ。平和のつどいで発言した人たちは、それぞれ自分のフィールドで、現実を改善するために頑張っていた。今年は国際的にもウラン兵器の禁止を求める動きが高まっている。
私もそのうねりを盛り上げるための一助となれるよう、頑張ろうと思った。
今年もヒロシマに元気をもらって帰路についた。


●「世界は変えられる」JCJ賞受賞●

日本ジャーナリスト会議(JCJ)の2004年度JCJ賞の、「JCJ市民メディア賞」に、TUP(平和をめざす翻訳者たち)の出版した『世界は変えられる/TUPが伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」』(七つ森書館)が選ばれました。
この本には、私たち劣化ウラン研究会の田中久美子さんとわたしが訳した「世代を超えて続く、イラクの劣化ウラン被害(ダグ・ロッキー)」が収録されておりますので、喜びと共にお伝えいたします。
私たちがこの本を通じて伝えたかった世界の多くの論考は、現在ではある意味「当たり前」と受け取られるほど一般にも認識されていることもあるかと思います。大量破壊兵器の話題とか、劣化ウランの悲劇などは、これらの文章がTUP速報として流れたときには国内ではほとんど触れられなかったようなテーマでした。
これらの論考を先駆的に発表を続けてきたことが、私たちなりの、イラク戦争の真実と戦争への荷担のおぞましさを伝える役割を果たしてきたと思っております。この本はTUPとしての一つの成果を示したものとして、インターネット環境にない人々へも伝える役割をも持って出版されました。そしてこの本の第二集を現在準備しています。この本を手に取ることで、世界が変わるきっかけになると思えば、それは楽しいことではないですか。


防衛庁交渉報告

劣化ウラン研究会・山崎久隆

日時:2004年9月14日午後3時〜5時15分
場所:参議院議員会館第四会議室
出席者:防衛庁運用局衛生官付2名、管理局艦船武器課2名、長官官房文書課1名

「劣化ウラン禁止市民ネットワーク」と防衛庁との交渉は、事前に通知していた質問項目に沿って行われました。
質問項目は
  1. サマワに派遣された自衛隊員に対する、放射線の影響、被曝から身を守る方法などについて、どのような事前教育が行われたか。
  2. サマワ現地で取られた放射能汚染防止対策はどのようなものか。
  3. 自衛隊員の所持している放射線測定器の名称と種別(測定方法)は。
  4. その放射線測定器の集計方法及び集計結果を示していただきたい。
  5. この放射線測定器の取り扱い方法は、誰がどこでどのように指導したのか。
  6. 以前に、戻ってくる隊員が、現地交代要員に放射線測定器を渡してきたという説明があったが、これは事実か。
  7. アルファー各種による内部被曝について、防衛庁はどのような認識を持っているか。
  8. サマワ現地での食糧、水などはどのように調達されているか。
  9. サマワに駐留していた米兵の劣化ウラン汚染が報道されているが、これについてどのような調査をし、どのような情報を入手しているか。
  10. サマワから戻ってきた自衛隊員に対して、尿中の放射能検査などを行っていないが、これはなぜか。
  11. 今からでも、尿中の放射能検査等の放射性物質の検出検査を行うべきではないか。
というものでした。

【放射線被曝の知識は無し】

イラク現地の状況をどの程度把握しているのか、質問項目の9を先に問うたのですが、イラク現地でオランダ軍や米軍から情報を得ていることを「必要な情報を共有している」という表現で表したものの、調査内容などは一切明らかにしないという態度を取りました。「自衛隊の行動を予見させるような情報」は明らかに出来ないというのですが、「人道復興支援」で派遣されている自衛隊がなぜ軍事作戦のごとく行動情報を秘匿するのか、批判を行いましたが態度は最後まで変えませんでした。
しかし自衛隊が持って行った放射線測定器とアラームメーターに関しては、基本的な使用方法さえもよくわかっていないことが明確になりました。
もともとアラームメーターは、99年のJCO臨界被曝事故の際に少数買ったものであるということが明らかにされ、さらに今回追加で600個ほど購入したというのですが、アロカ社製の「ADM−112」というこの装置は「積算線量計」と「アラームメーター」兼用ですが、長期間ガンマ線を浴びる環境で使用する装置であり、主にアルファ線を出す、劣化ウラン被曝を前提としたイラクでの作業には全く役に立たない装置です。
さらに持ち込んでいる手持ち測定用測定器も、「ガンマー線用シンチレーションサーベイメーターTCS−171」というのですから、劣化ウランの性質を全く理解していないことがわかります。

【サマーワは汚染地帯】

陸上自衛隊が宿営地とし、活動の拠点としたサマーワは、既に湾岸戦争とイラク戦争により劣化ウランに汚染された地域になっていたことが知られています。
ニューヨーク州兵で編成された442憲兵中隊の米軍兵士が劣化ウランに被曝し、何人もの健康被害を訴える人々が現れ、軍も調査を行うことになったことや、オランダ軍が劣化ウランを見つけていたことなどは、もう報道されており、その結果自衛隊員が劣化ウランに被曝する危険性は、単なる想像上の話ではなく具体的に起こりえることがはっきりしています。

【事前教育も軍事機密】

派遣される隊員に、どのような教育訓練を行っているのか。当然ながらこのことは明らかにされなければなりませんが、「一般的な放射線についての教育」といった答え以上のものはありません。「マニュアルのようなものもあるが、内容は明らかに出来ない」というのでは、その妥当性すら論じられないのです。このような対応を取る背景には実は何の実効性もあるような教育をしていないのだろうと考えるしかありません。

【驚くべき「対策」】

劣化ウランに関する基本的な知識が「無い」と言わざるを得ない自衛隊は、ではどのようにして隊員の健康を守っているというのでしょう。
万が一に備え放射線検知器(サーベイメーター)を携行し、通常と異なる放射線レベルが検出されたら当該地域に立ち入らないという措置をとるというのですが、ガンマ線しか検知できないサーベイメーターでは、特定の高濃度汚染された物体以外は検出されません。また、立ち入りを禁止するという措置も、測定に実効性がないのだからそれ自体に意味がありません。
また、砂嵐が吹くような状況になったら「防塵マスクを付ける」という対応を取るとしていますが、劣化ウランの粉塵は砂嵐でなくても舞い上がることはあります。確実な防護にはなりません。
つまりは対策になっていないのです。

【健康診断は「考えていない」】

劣化ウランが体に入れば、重大な健康被害を引き起こすことになりますが、それを調べることさえ考えていません。
例えば米国や英国では尿を採取してウランに汚染されていないかを調べています。英軍はカードを作り、その中で派遣されている地域が劣化ウランに汚染されている危険性があること、心配があるならば尿検査を受ける権利があることを明記しています。米軍でさえ、劣化ウランの検査を一部の兵士については行っています。ただし、検出されるウラン濃度を、劣化ウランに曝されていない人の30倍にも達する値まで「安全である」としている現実があります。
さらに、劣化ウランを検出するためには必ず必要な「核種分析」も行っていませんから、米国の劣化ウラン調査アリバイ的な意味しかありません。
その上日本は全く調査も行うつもりが無いことが、この交渉で再び明らかになりました。
健康診断や血液検査は行った結果、異常のあるものはなかったとしていますが、だからといって劣化ウランの被害は受けていないと断定できるわけではないのです。

【今後も継続】

防衛庁との話し合いは、これからも続けていくことにしますが、何でも「秘密」という体質には会場から怒りの声も多数上がりました。
改めて具体的な質問を投げかけることにより、出来る限りの回答を引き出そうと思います。


●沖縄ヘリ墜落事故と放射性物質汚染●

劣化ウラン研究会・山崎久隆

普天間基地のヘリが墜落

8月13日午後2時15分頃、普天間基地所属の米海兵隊CH−53Dヘリコプター・シースタリオンが普天間基地に近い沖縄国際大学本館に衝突、墜落炎上するという事件が起きました。
幸い奇跡的に住民に人的被害は出ませんでしたが、米軍は墜落をまるで予見していたかのように、数分で現場に到着し、墜落現場一帯を包囲し、周辺住民はもちろん、当事者の大学関係者、マスコミ、警察までも排除してしまいました。周 辺道路は全面封鎖され、取材していたメディアのカメラや取材テープまで取り上げようという勢い で、まぎれもなく戒厳令状態に置いたのです。
そう、この場面では明らかに主権は日本には無かったのです。
そうやって完全に現場を封鎖して何をしていたのか。現場を取材していたメディアは異様な光景を目にすることとなります。
オレンジ色の警戒色の全身防護服と空気呼吸器付きの全面マスクをした兵士が、墜落現場を調査し、一部の部品に液体状の物質をかけたり、表土をはぎ取ったりしていたというのです。このときに使われていた装置は放射線測定器、すなわちこの機体には間違いなく放射性物質が搭載されていたのです。

搭載物は劣化ウラン?

まず疑われたのが「劣化ウラン弾」でした。海兵隊も劣化ウラン弾を装備しており、沖縄には劣化ウラン弾が貯蔵されていることは公然の事実です。海兵隊がイラクで劣化ウラン弾を使っていることも明らかになっており、沖縄から輸送しているのではないかという疑いももっともな話でした。
また、ヘリに通常使用されていると考えられる、バランスを取るための「おもり」や回転部分の慣性力を高めるための「ウエイト」として使用 されている劣化ウランも疑われました。
後に米軍は劣化ウラン弾搭載の疑いを否定し、 バランス・ウエイトとしては同じく比重が大きいタングステンを使っていると答えていますが、米 軍のこれまでの姿勢「劣化ウランの存在を否定も肯定もしない」ということから見て、事実関係が 解明されたとは言い難いのです。
劣化ウランについては「疑い」のままですが、 米軍発表により確実に搭載されたことが判明し、防護服の意味が明らかになったのが、放射性物質 が「ストロンチウム90」です。
凍結防止装置などの部品にストロンチウム90 を使っているものが合計6個搭載されており、回収作業を行った結果、そのうち1個が行方不明となっているというのです。

ストロンチウム90

ストロンチウム90とは、半減期約28.8年の金属元素で、放射性同位元素の中でも極めて危険性の高い物質です。融点は摂氏777度、沸点は1382度、すなわち通常の火災程度でも十分揮発してしまいます。
そしてベータ線を出しながらイットリウム90という物質に変わりますが、このイットリウム90も放射性物質で半減期は64.1時間、同じくベータ線を出して安定元素であるジルコニウム90に変わります。
ベータ線の正体は電子ですから、強い電離作用があります。ベータ線に照射された分子が電離すなわちイオン化することで、様々な化学変化を誘発します。
ストロンチウム90が体内に取り込まれると、カルシウムと置き換わる性質があります。そのためチェルノブイリ原発事故や世界中で行われた核実験の際に放出されたストロンチウム90は、多くの人々に骨ガン、白血病などを引き起こしたと推定されています。
そういう物質が、米軍発表で「500マイクロキュリー」放出されたのです。事故のあとに回収されなかった放射線源1個は、炎上した時に蒸発し環境中に拡散したのです。

「500マイクロキュリー」にはどんな意味があるか

米軍発表の「500マイクロキュリー」とは、現在の放射線の単位では1850万ベクレルに相当します。これは別の言い方をすれば「18.5メガベクレル」になります。
この量については、それがどんな被害を与えるかを端的に示すデータがあります。
「原子力安全基盤機構によるトラブル情報」として公表されている、オランダで2001年7月3日に発生した「遮蔽されていないストロンチウム90放射線源が廃品置き場でみつかる」という事件の報告書から引用します。
「放射線源は16プラスマイナス1メガベクレルのストロンチウム90線源であると判明した。(中略)50センチメートル離れたところでのベータ線量は350マイクロシーベルト/時であった。」「1センチメートルの距離で1シーベルト/時という近傍での高被曝線量のため、本事象では(国際評価尺度)INESレベル2とされた。本放射線源はたとえば、ポケットに入れたような場合、数時間内に火傷を起こす可能性がある」
沖縄の放射線源とほぼ同じ線量を持つ、米軍の言う「低レベル放射線」源の実態はこういうものなのです。
この事故では、失われた線源は火災とともに蒸発拡散したことから、一人当たりの被曝線量が少ないという感覚で「レントゲン検査の時に浴びる放射線よりも少ない」などという表現をしているのだと思いますが、この説明自体がウソです。レントゲン検査で「火傷を負う」人はいませんし、この場合、内部被曝を全く考えていないという点では劣化ウランの時の対応と全く同じです。
「500マイクロキュリー」の放射線源とは、日本の国内法からはこうなります。
「ガラス容器に密封の上、ステンレスなどの二重の容器に入れて保管すること」これは放射線障害防止規則や労働安全衛生法で明記されている法律基準です。
本来ならば、放射性並びに消防危険物として行政機関に届け出が義務づけられているものですが、相手が米軍であるため何の規制もかかっていないというわけです。

緊急避難は行われなかった

事故が起きれば現場を立ち入り禁止にした状態で汚染調査を行い、表面汚染を考えて表土をはぎ取り、葉などに付着していることを考慮して周辺樹木を伐採、隔離処分にし、風下を中心に周辺住民の避難を行うべき性質のものなのです。
米軍はそれに似たことをしました。しかし住民はもちろん、日本政府、沖縄県、宜野湾市に対してさえ一切現場での状況説明はもちろん、放射線源の種類、量、拡散可能性についても事実を隠して行動したのです。これは「似て非なる行為」です。
既に沖縄国際大学はもちろん、宜野湾市、沖縄県などがサンプリング調査を開始していますが、事故の後に米軍が証拠となり得る土壌や樹木を持ち去ってしまった上、大規模な台風が沖縄を襲ったことなどからも、検出される可能性はあまりありません。
当時消防活動に携わった消防士や周辺住民の健康調査、血液検査なども行われていますが、事故直後に適切な避難誘導さえ出来なかった米軍の秘密主義、情報隠蔽がいかにひどい犯罪行為であったかを改めて指摘しなければなりません。
沖縄には劣化ウラン弾も貯蔵されています。ヘリ事故だけでなく弾薬庫火災などが起きれば、大量の放射性物質が拡散します。

事故多発の米軍

普天間基地所属のヘリ事故は頻発しています。最近の事故は99年4月19日に夜間海上飛行訓練中の大型ヘリが米軍北部訓練場の東沖合の太平洋上に墜落、海兵隊員4人が死亡しており、この事故で4月23日には宜野湾市議会が、27日には県議会がそれぞれ臨時議会を開き、事故の再発防止や米軍機による住民地域上空での飛行訓練の即時中止などを求める意見書と抗議決議を全会一致で可決しています。
基地と隣接する危険性としては、1959年6月30日に石川市の宮森小学校にF100D戦闘機が墜落し、児童11名を含む17名の犠牲者と200名以上の重軽傷者を出した事件がありました。墜落事故となれば地上の人々を巻き添えにして大きな犠牲を生みますが、奇跡的に市民の犠牲が出なかった事故でも、こういう被害をもたらすのです。
日本で唯一劣化ウラン弾が撃ち込まれた沖縄、大きな基地被害を恒常的に受けている沖縄、そしてヘリ事故による被害を受けた沖縄の現実を改めて考える必要があります。


ニュースクリップ

●「誰のために戦ったのか」劣化ウラン弾に被曝した兵士の特集番組が放送される●

「誰のために戦ったのか」〜劣化ウラン弾にヒバクしたアメリカ兵〜(2004年8月16日放送)
湾岸戦争から使われている劣化ウラン弾。使用されたイラクでは、小児白血病や先天性異常など深刻な健康問題が起きている。今年4月、イラク戦争に参加したアメリカの州兵6人が、劣化ウラン弾にヒバクしたと告発した。彼らは、ひどい頭痛や手のしびれなど体調不良を訴えている。今回の州兵たちは戦闘に参加していない。彼らを診断した医師は、「劣化ウランを含んだ塵を吸ったため」と指摘。軍は否定している。アメリカの劣化ウランの現状を、現地取材した。(制作:広島ホームテレビ)

●茅ケ崎市議会総務委員会で「劣化ウランに関する陳情」採択●

6月1日に提出されていた「劣化ウラン兵器の使用禁止に関する陳情」が、一度は継続審議になりましたが、9月17日の総務委員会で再審議の結果採択されたという、うれしいニュースがメーリングリストを通じて入ってきました。
その陳情書全文を掲載します。
他の自治体でも同様の陳情などが提出されているという情報がありましたら、ぜひお寄せください。


茅ヶ崎市議会議長山下孝子殿
2004年6月1日

有事法・戦争を許さない茅ヶ崎市民の会
呼びかけ人代表早川美代子

劣化ウラン兵器の使用禁止に関する陳情
イラクでは、1991年の湾岸戦争時に劣化ウラン兵器が使われた地域でがん・白血病・先天障害が多発し、特に子どもたちの間での被害が深刻となっています。さまざまな警告にもかかわらず、その後も旧ユーゴ、アフガニスタンで使用され、今回の戦争で再び大量の劣化ウラン弾がイラク全土にまき散らされました。また、これらの地域からの帰還兵やその子どもたちにも健康障害が現われています。4/13付の新聞報道によると、サマワに駐留していた米憲兵隊員の尿から劣化ウランが検出されました。自衛隊員の被曝も心配されます。
劣化ウランとは、核爆弾や原子炉燃料を生産する過程で大量に生まれる低レベル放射性廃棄物(ウラン238)です。放射能の半減期は45億年といわれ、地球誕生以来の時間に匹敵します。廃棄物であるがゆえに極めて安価であり、重く固い金属という特性から米・英軍の対戦車砲の砲弾として利用されています。劣化ウラン弾は、戦車の装甲板をも貫通する能力を持ち、その衝撃によって激しく燃焼して内部の人間を焼き尽くすだけでなく、ミクロン単位の微粒子となって大気中に拡散していきます。微粒子となった劣化ウランは空気とともに肺に入り込んで放射線障害(体内被曝)を引き起こしたり、また地面に落下したものは地下水や土壌を半永久的に汚染し続けます。
1996年、国連人権小委員会では、劣化ウラン弾は核兵器と並ぶ非人道的兵器として使用禁止決議が可決されました。また、2003年4月の国連環境計画の報告でも、イラク戦争による劣化ウラン弾の使用が「人体や環境への深刻な影響をもたらす可能性がある」として早急な現地調査と緊急対策の必要性を訴えています。
無差別に被害を与え、将来に生まれてくる子どもたちにまで被害がおよぶ劣化ウラン兵器は、地球の生命環境をも破壊する大量破壊兵器といえます。広島・長崎の悲惨な体験を持ち、高度な被曝医療の技術がある日本こそが、国際的な連携のもとに劣化ウラン兵器禁止の呼びかけの先頭に立ち、汚染の調査・医療支援などに積極的に取り組むべきではないでしょうか。

《陳情項目》
「核兵器廃絶平和都市宣言」をした茅ヶ崎市議会として、日本政府に対して下記の趣旨の意見書を提出して下さるよう陳情いたします。
  1. 劣化ウラン兵器の製造と使用の禁止を国際社会に働きかけて下さい。
  2. 劣化ウラン兵器が使用された地域における人体や環境への影響の調査活動や医療活動への支援を行って下さい。
  3. サマワから帰還した自衛隊員の健康調査(劣化ウラン検査)を実施して下さい。

<書籍紹介>

世界は変えられる

JCJ日本ジャーナリスト会議市民メディア賞受賞
TUP(Translators United for Peace; 平和をめざす翻訳者たち)が伝えるイラク戦争の「真実」と「非戦」
【帯より】
疑ってはいけない。思慮深く、献身的な市民たちのグループが世界を変えられるということを。かつて世界を変えたものは、実際それしかなかったのだから――マーガレット・ミード(米国人類学者)
【主要もくじ】
第1章イラク戦争
第2章アメリカという問題
第3章過去と未来に視野を広げて
第4章希望の種
劣化ウラン研究会から、山崎久隆と田中久美子の2名が参加をした翻訳「世代を超えて続く、イラクの劣化ウラン被害ダグ・ロッキー」を所収しています。

放射能兵器・劣化ウラン−−核の戦場・ウラン汚染地帯

劣化ウラン研究会編
技術と人間社発行
〒162-0814東京都新宿区新小川町3−16
TEL:03-3260-9321 FAX:03-3260-9320
2003年3月発行
定価2500円
「ボクは死ぬんだ。死んでしまうのだ。」イラクの小児病棟では連日、血を吐きながら子どもたちが死んでゆく。劣化ウランは史上最悪の大量殺りく兵器である。この兵器を使用しているかぎり、人類だけでなく、地球上の生きとし生けるものに未来はない!
<主要目次>
第1章危険な劣化ウラン弾
第2章劣化ウランの軍事転用
第3章核燃料サイクルと劣化ウラン
第4章身近にあらわれる劣化ウラン
第5章劣化ウランおよび劣化ウラン兵器廃絶運動
<著者紹介>(50音順)
伊藤政子:アラブの子どもとなかよくする会代表
新倉修:青山学院大学法学部教授
野村修身:電磁波問題市民研究会代表
藤田祐幸:慶応義塾大学物理学教室助教授
森住卓:フォトジャーナリスト
矢ヶ崎克馬:琉球大学理学部教授
山崎久隆:劣化ウラン研究会代表


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