2000人アピール
核兵器の廃絶へ − 日本の使命
20世紀最後の年を迎えました。
人類は、20世紀が生みだした誰の目にも明らかな愚行を、このまま21世紀に引き継ごうとしているかに見えます。一瞬にして数十万人を焼き殺す核兵器が、未だに国際政治の最高の道具として使われています。地球上には30000発以上の核弾頭が存在し、少なからぬ数が一触即発の発射態勢のもとに置かれています。核保有国の市民を含め、圧倒的多数の市民が核兵器のない世界を望んでいるにもかかわらず、政治は遅々として動きません。
このことに日本の市民は特別の責任を負っていると、私たちは感じます。脳裡に焼きついている地獄絵を語りながら、「二度と核兵器が使われてはならない」と訴える被爆者の声に、私たちはもっとも近くで接してきました。被爆の医学的、社会的な後遺症が世代を越えて存続する恐れに支配された社会に、私たちは半世紀をこえて暮らしてきました。この経験を、地球と人類の未来のために生かす責任が、日本の市民にはあるのではないでしょうか。
希望がないわけではありません。1998年6月、いくつかの中堅国家政府が果敢な行動に立ち上がりました。「新アジェンダ連合」と呼ばれるこれらの政府は、核兵器廃絶のために「すべての努力を惜しまない」と宣言しました。世界各国のNGOが、これらの政府を励まし、政府とNGOの連携した運動が強まろうとしています。また、NGOが起草した「モデル核兵器禁止条約」は、正式の国連文書となって各国に配布されました。
残念ながら日本政府は、誘われたにもかかわらず、「新アジェンダ連合」に加わることを拒否しました。日本政府は核抑止論を肯定し、核兵器によって日本を守る考えにとらわれています。
世界のどの国よりも強い日本市民の反核感情は無力なのでしょうか。日本の民主主義は機能しないのでしょうか。50年を越える時間の流れのなかで、日本の反核運動がそれ自身のなかに、さまざまな壁を作り出したとの指摘もあります。日本の多くの市民が、もう一度一人の人間として、それぞれの言葉で語る気運と機会を作り出すときではないでしょうか。
新しい世紀と新しい千年紀の夜明けに、私たちは日本の市民が、思想・信条の違いを越えて、新しい気持ちで核兵器廃絶のための大きな声をあげることを呼びかけます。まずなすべきことは、私たち自身の政府の核兵器政策を変えさせることです。そのために、次のような課題があります。
一、日本に非核法を!
非核三原則を法制化するとともに、核の傘から離脱し、核兵器に依存しない安全保障政策を唱う必要があります。核兵器拡散の懸念を広げるプルトニウム政策の再検討が問われます。
二、東北アジアに非核地帯を!
東北アジアに非核地帯を作ることが、この地域の緊張緩和と信頼醸成の大きな一歩となります。
三、非核自治体を行動する自治体に!
今こそ、2300を越える日本の非核宣言自治体の出番です。市民の手による、その活性化が必要です。
四、核軍縮へ国際的なリーダーシップを!
日本政府が「新アジェンダ連合」など同志国家と連帯して、国際政治の場で核廃絶のために積極的に行動するよう、市民の働きかけが必要です。
私たちは、市民の皆さんに訴えます。2000年に核兵器廃絶運動の大きなうねりを作りましょう。そして、その動きを世界に発信しましょう。さまざまな場で、一人ひとりが、小さくても行動を始めることが変化を作ります。私たちも、その一人として「2000人アピール」に名を連ねます。
2000年1月1日
(署名者)
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