「アボリション2000」ミレニアム声明

(国連ミレニアム・フォーラム平和・安全保障・軍縮小委員会への
「アボリション2000」の提出文書)
1999年12月14日



  世界的な核廃絶市民ネットワーク「アボリション2000」調整委員会は、昨年12月14日、コフィ・アナン国連事務総長宛に、「ミレニアム声明」(仮称)を提出しました。これは、本年3月に発表される事務総長の21世紀アジェンダについての報告書、5月22−26日のNGO関係者約1000人による「ミレニアム・フォーラム」、さらに9月から始まる国連ミレニアム総会での議論に反映されることを主眼とし、核兵器廃絶こそ21世紀冒頭に達成すべき緊急課題であることを訴えたものです。


 私たちのビジョンは、核兵器のない世界、そして核兵器が人類、環境、そしてあらゆる生命に対して与える耐えがたい脅威から解放された世界である。こうしたビジョンは、国連総会がまさにその最初の決議で認識したものである。その決議は、「核兵器および大量破壊に用いることができるその他のあらゆる主要兵器を国の軍備から廃棄すること」を問題にしようとした。このビジョンは、過去50年にわたって、無数の総会で再確認されたものである。

 私たちのビジョンは、核不拡散条約(NPT)の第6条の義務があらゆる国家によって遵守されている世界である。

 私たちのビジョンは、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見の中で明記された、「あらゆる側面における」核軍縮を達成するための義務が、あらゆる国家によって履行されている世界である。

 私たちのビジョンは、いかなる国の安全保障も、核の破壊によって何千万人もの罪のない人々を殺戮するという「究極の悪」の威嚇に依存することのない世界である。

 こうしたビジョンを達成するための障害は、核保有国によって作りだされてきた。核兵器国は防衛政策の柱として核抑止力に頼り続け、国際法上の義務はもちろん、人類や地球に対する道徳的義務を遵守するよう求めるあらゆる訴えに、盛んに抵抗してきた。

 ベルリンの壁が崩壊して10年たった今も、意図的あるいは偶発的な核兵器の使用の危険性は現実のものとして残っている。南アジアでの核実験、バルカンやチェチェンでの戦争、戦域および国土ミサイル防衛システム計画が、新たな核をめぐる緊張を生み出した。

 1995年、NPT再検討・延長会議において、市民組織は声明を発表し、保有核兵器を廃棄するための拘束力のあるスケジュールを定めた核兵器廃絶条約の2000年までの締結につながるような交渉を始めることを通じて、NPTの核軍縮義務の履行を求めた。1400以上の組織がこれまでにこの声明を支持し、アボリション2000の地球ネットワークを形成している。1999年、核兵器廃絶は、多くの課題にまたがる国際市民社会の構想であるハーグ平和アピールの中心プログラムとして採用された。世論調査は、ほとんどのNATO加盟国やアメリカやイギリスを含む核保有国において、80%以上が核兵器禁止条約を支持していいることを示している。国連総会とヨーロッパ議会は、ともに核兵器禁止条約を求める決議を採択した。核兵器廃絶の可能性を示したモデル核兵器禁止条約は国連内に配布された。

 それにもかかわらず、核兵器保有国は、保有核兵器を進んで廃棄しようとする兆候をほとんど示していない。逆に核保有国は、核兵器の配備と、大量報復、何よりも、第一使用(先制使用)の選択肢を含む抑止政策を続けている。また核保有国は、保有核兵器の無制限の維持を可能にするためのインフラストラクチャーに莫大な費用を投じ、新たな核兵器の研究・開発を継続し、さまざまな方法でそれらの実験を行っている。核保有国の大部分は、核軍縮のための多国間交渉の開始を拒否している。

 核兵器への依存を終えるためには、核抑止論は、国際的な安全保障の実行可能な基礎としては完全に否定されなければならない。真の安全保障は、核兵器の廃絶と、世界規模での非軍事化と、国連や他の国際機関の戦争防止や紛争解決能力の強化にこそ見出される。

 新たな千年紀の夜明けにおいて、世界中の政府は最初の国連総会決議によって表明された、完全な核軍縮の約束を果たすために早急に動かなければならない。緊急の活動には、以下のようなものがある。

 1.効果的な検証と執行のための条項をもち、定められた時間の枠内で、あらゆる核兵器の段階的な削減を行うことを要求するような、核兵器禁止条約(NWC)の早期締結につながる多国間交渉をただちに開始すること。そうした交渉は、ジュネーブ軍縮会議(CD)、あるいはNPT加盟国、国連総会、関心をもつ国々によって招集される特別会議、において行うことができるであろう。

 2.外国の領土や国際海域からのあらゆる核兵器の撤去。および警戒態勢の解除(ディ・アラーティング)、核弾頭と運搬手段の分離(ディ・メーティング)、そして核戦力の核能力除去による全面的な警戒体制解除。

  3.いかなる方法によるにせよ核兵器のさらなる設計、開発、実験の停止。あらゆる核実験場の閉鎖、そして宇宙のさらなる核化と軍事化の停止。
 
  4.核兵器の不使用の誓約と、核抑止論の非合法性、反道徳性、そして無責任さを認める宣言への誓約。
 
  5.持続的な世界の将来を確保し、世界の先住民に不釣り合いに背負われている核兵器の生産と実験によってもたらされた環境破壊と人的な苦しみを補償するために、資源を振り向け直すこと。

(訳:田辺俊明・梅林宏道)

 

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