沖縄県 第七準備書面


平成七年(行ケ)第三号
職務執行命令裁判請求事件


                    原 告   内 閣 総 理 大 臣
                          橋  本  龍  太  郎

                    被 告   沖  縄  県  知  事
                          大  田   昌  秀


    被 告 第 七 準 備 書 面



一九九六年三月一一日

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                         右被告訴訟代理人
                         弁護士  中 野 清 光
                          同   池宮城 紀 夫
                          同   新 垣   勉
                          同   大 城 純 市
                          同   加 藤   裕
                          同   金 城   睦
                          同   島 袋 秀 勝
                          同   仲 山 忠 克
                          同   前 田 朝 福
                          同   松 永 和 宏
                          同   宮 國 英 男
                          同   榎 本 信 行
                          同   鎌 形 寛 之
                          同   佐 井 孝 和
                          同   中 野   新
                          同   宮 里 邦 雄

                         右被告指定代理人
                          同   高 山 朝 光
                          同   宮 城 悦二郎
                          同   粟 国 正 昭
                          同   大 浜 高 伸
                          同   山 田 義 人
                          同   垣 花 忠 芳
                          同   大 城 眞 幸
                          同   兼 島   規
                          同   宮 城 信 之
                          同   比 嘉   靖
                          同   仲村渠 重 政
                          同   上 原 貴 志

福岡高等裁判所那覇支部 御中

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 被告は、原告の第五準備書面に対して、次のとおり意見を陳述し、反論する。
第一 物件目録1の各土地、同目録2の松田所有地、同目録7の金城、比嘉、喜友名
  所有地、同目録8の各土地についての土地調書の瑕疵
一 土地調書に添付される「実測平面図」の意義
 1 土地収用法三六条一項は「事業の認定の告示があった後、起業者は、土地調書
  及び物件調書を作成し・・・・なけれぱならない」と規定し、土地調書の作成時
  期は事業の認定の告示があった後でなければならないことを明記する。同法三九
  条一項は、事業認定の告示があった日から一年以内に限り、収用・使用申請がで
  きると定めでいるので、結局、土地調書は事業認定の告示の日から一年以内に作
  成されなければならないことになる。
   この規定を受けて、同法三七条一項は、「土地調書には、収用し、又は使用し
  ようとする土地について、左に掲げる事項を記載し、実測平面図を添付しなけれ
  ばならない」とし、「調書を作成した年月日」を土地調書の記載事項の一つと定
  める。
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   右両条項が、「事業認定の告示の前」に土地調書を作成することを禁止し、か
  つ、土地調書の作成時期の明記を要件としたのは、強制収用・使用申請直前ので
  きるだけ新しい対象土地の現況を把握し、土地調書に記載された土地の状況がい
  つの時点のものであるのかを正確に把握するためである。
   したがって、土地収用法は、右規定に反する「事業認定の告示日前の対象土地
  の状況を記載した土地調書」を適法な土地調書と認めていないと解するのが相当
  である。
 2 土地調書に添付される「実測平面図」は、土地調書の記載内容を正確に表示す
  るために要求されているものであるから、右法意を受けて当然のこととして、
  「事業認定の告示日の後」に作成され、「図面を作成した年月日」が明記され、
  かつ、その図面が「実測した図面」であることが必要とされているというべきも
  のである。
   したがつて、「事業認定の告示の前」に「実測平面図」を作成したり、あるい
  は「事業認定の告示の前」に作成された実測平面図を基に転写した図面を作成し
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  て、これを「実測平面図」に代用したりすることは許されない。
二 国の主張の不当性
 1 事業認定告示前に作成された添付図面
(一) 原告は、前記土地の土地調書添付「実測平面図」が本件事業認定の告示日前、
   しかも三年以上前の一九九二年(平成四年)の強制使用認定手続において作成
   された実測平面図を基に作成されたものであることを自認した上で、「今回の
   駐留軍用地特措法に基づく使用の手続のために新しく作成されたものである」
   (第五準備書面五頁〉と主張する。
    つまり、本件土地調書添付の「実測平面図」は、一九九二年の強制使用認定
   手続において作成された実測平面図を基にしてはいるが、同図面を「そのまま
   使用しているわけではなく」、今回の事業認定の告示があった後に「新しく作
   成されたものである」から、土地収用法三六条一項に違反しないと主張するの
   である。
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    確かに、原告の主張に基づくと、本件土地調書添付の「実測平面図」は事業
   認定の告示の日の後に作成されたものであるから、形式的にいうと「作成時期」
   については同法三六条一項に違反しないことになる。
(二) しかし、原告の右主張は、作成時期については一応言い逃れの理由となった
   ように見えるが、他方で、本件土地調書添付の「実測平面図」が実は実測平面
   図でないことを自白するという、いわば墓穴を掘るものとなっている。実測平
   面図とは、図面を作成する際に、現地で実測測量を行い、その成果を図面化し
   たものをいうものであり、「実測平面図」を資料としてそれを書き写しても、
   その図面は実測平面図とは呼びえないものである。それはあくまで、実測平面
   図を書き写した図面にすぎない。
    このようにして書き写された図面は、その基になった図面の性格を基本的に
   引き継ぐものである。したがって、基になった図面が三年前の図面であれぱ、
   仮に書き写したのが今年であっても、書き写された図面は三年前の土地の現況
   を反映したものであり、書き写した年月日の土地の現況を反映したものとはな
   らない。このことは自明のことである。
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    したがって、原告の弁明は、形式的には土地収用法三六条一項が要求する土
   地調書の作成時期に違反していないようにみえるが、実質的には同法が求める
   作成時期を遵守しておらず、依然として同法に反するものである。
(三) ちなみに、原告も認めるように、三年前の実測平面図を基に書き写された前
   記図面には、作成年月日がいずれも記載されていない。原告主張のように、同
   図面が「新しく作成された」図面というのであれぱ、同図面に図面の作成年月
   日を書き込んでもよさそうであるが、実際にはそのようなことは行われない。
   実測平面図を書き写した図面に「作成年月日」を記載すると「書き写した年月
   日」を「実測した年月日」と誤解させるからである。したがって、資格を有す
   る測量土は、決して右記載をしないのである。依頼者がどうしても作成年月日
   の記載を要求するときは、測量士はやむなく「書き写した年月日」であること
   を明らかにして作成年月日を記載するのである。
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    前記図面には、土地調書に添付される「実測平面図」に不可欠な「作成年月
   日」の記載がなく形式的にも瑕疵が存するものである。
(四) 以上のように、前記図面は、形式的にも、実質的にも土地収用法三六条一項
   に反し、瑕疵ある土地調書添付図面となっている。
    前記土地の土地調書は、右事業認定告示の三年以上前に作成された実測平面
   図を基に書き写された添付図面を基に作成されたものであるから、添付図面の
   瑕疵にとどまらず、土地調書そのものが土地収用法三六条一項、即ち、土地調
   書は事業認定告示後に作成されなけれぱならないとする規定に実質的に反する
   ものといわねばならない。
 2 実測平面図の不添付
(一) 原告の主張が、前記図面が実測平面図面でないことを自認するものであるこ
   とは、右に指摘したとおりである。
    したがって、原告は、土地収用法三七条一項が土地調書に「実測平面図」の
   添付を要求しているにもかかわらず、これを添付せず、三年前の実測平面図を
   書き写した図面を添付して本件立会・署名を求めたものであり、手続そのもの
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   に瑕庇が存したものであった。
    原告は、「右土地に限らず、本件土地すべてについて、実側平面図の基礎資
   料は、前述のとおり位置境界明確化作業において調査、測量された成果等を利
   用しているので、前回又はそれより更に前にされた使用裁決申請の際に添付さ
   れた実測平面図の作成当時の基礎資料と変化がないため、結果的に同一の内容
   の実測平面図が作成されている」(五頁)と弁明する。
    しかし、前記図面は、すでに指摘したとおり「実測平面図」ではないので
   「結果的に同一の内容の実測平面図が作成されている」ことにはならない。
   「結果的に同一の内容の平面図が作成されている」ことになるだけである。原
   告が今回現地において実地測量をしてその成果を図化していれば「結果的に同
   一の内容の実側平面図が作成されている」とのべても何ら誤りはない。しかし、
   原告は、三年前の実測平面図を書き写しだけであるから、結果的に同一の内容
   の「平面図」が出来上がったに過ぎない。ここには大きな差異が存する。結果
   的に「同一内容」の図面ができたという意味においては同じであるが、「同一
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   内容」の図面が出来上がる過程が全く異なる。他の図面を書き写すと、写し方
   に間違いがない限り「同一内容」の図面ができあがる。このような書き写し図
   面は、その時点の対象土地の現況を反映するものではないため、新しく土地の
   現況を反映する図面としての価値は認められない。土地収用法三六条一項、三
   七条一項は、前述のように、事業認定の告示の日から一年以内の土地の現況を
   反映する図面として「実測平面図」の添付を要求しているのであり、事業認定
   の告示の前の「平面図」を要求しているものではない。
    したがって、原告の右弁明は、実測平面図でない「書き写し図面」をあたか
   も「実測平面図」であるかのように、事実を歪曲し、土地収用法三六条一項、
   三七条一項の法意から逸脱しようとするものであり、不当なものである。
(二) 原告は、前記図面が実測平面図ではなく、書き写し図面であることの不当性
   を糊塗するため、「前回の使用裁決申請のために現地で測量した際に打った杭
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   等の状況に変化がなかった」(四頁)と主張し、土地調書添付の「実測平面図」
   は実地測量図面である必要はなく、過去の実測平面図の書き写し図面でも良い
   と弁明する。
    果して、そうであろうか。原告は、どのような根拠に基づいて「杭等の変化
   がなかった」といいうるのであろうか。原告が確認したとする「杭等」は、ほ
   んとに前回打ったものであったのか、又それが移動していないとどうして断言
   できるのであろうか。原告は、「現地で各杭間を計測する等の方法」により確
   実に確認している」と強調する。しかし、杭間を計測しても杭が移動している
   か否かは判断しえないことは、説明するまでもない。当該杭が移動しているか
   いないかは、不動のものとして測量法上設定された「基準点」(原告第四準備
   書面一二ないし一四頁)に基づいて初めて、判別しうるものである。杭間の計
   側により、杭の移動の有無を判別しうるという原告の主張は、測量の基礎知識
   を欠く誤ったものといわなけれぱならない。
(三) 原告は、被告が本件土地調書に添付された平面図は、公図の写しを添付する
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   のと同類だと批判したことに対して、「(本件平面図は)地籍図ばかりでなく、
   位置境界明確化作業において調査、測量された成果を利用したものであり、被
   告の主張は誤りである」(六頁〉と弁明する。
    しかし、ここで今問題としている原告が土地調書添付の平面図を作成する際
   に「利用したもの」とは、位置境界明確化作業の成果として登記所に送付され
   て備付けられてた地籍図そのものである(位置境界明確化作業が完了した土地
   については、その成果は地籍図としで集約される)。したがって、原告の右弁
   明は、つまるところ本件土地調書に添付された前記図面は、地籍図に基づいて
   作成されたものであるから、被告の主張は誤っているとういうことになる。公
   図とは、地籍図のことであるから、結局、原告の右主張は前記図面が、公図の
   書き写しと同類の図面であることを認めたものとなり、何ら反論となりえない
   ものである。原告の主張の空疎さを示すものである。

第二 位置境界不明地域内の土地・物件目録6の土地についての土地調書の瑕疵
 一 編さん地図の性格
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 1 編さん図の字界、又はプロック界は実地測量に基づいて記載されたものである
  から、字界、又はプロック界は現地復元性をもった境界と評することができる。
  しかし、字界、又はプロック界内において、関係土地所有者が協議して割りつけ
  た一筆地編さん図の各筆の筆界は、単に図面上において引かれた線に過ぎず、現
  地復元性を有するものではない。現地復元性とは、実測図面、すなわち現地にお
  いて測量した成果を図化したものについて、はじめていいうるものである。とこ
  ろが、右一筆地編さん図の各筆の筆界は実測して引かれた線ではなく、図面の上
  で任意の協議により引かれた線であるため、図面上の筆界を現地に落とすことが
  できるというだけのもであり、現地の境界をその図面をもとに再度現地で復元す
  る能力を持つという現地復元性を有するものではない。
   前者は、図面上に基準点があれば十分であるが、後者において図面上基準点が
  るというだけでは不十分で、現地を実測して、それを図化する作業が行われたこ
  とが不可欠である。
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  === 図(実測面図の現地復元性) ====
  === 図(非実測面図を現地に落す) ===

   原告は、この点の差異を無視し、一筆地編さん図の各筆の筆界について現地復
  元性を有するかのように主張するが、それは不正確であり、誤っている。それは、
  単に一筆地編さん図の各筆の筆界を現地に落とすことができるというに過ぎない。
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   そうであるからこそ、一筆地編さん図の各筆の筆界は、現地に落とされて、地
  籍明確化作業の中で、関係土地所有者により、現地でその筆界が確認されること
  が必要となるのである。
 2 又、一筆地編さん図の各筆の筆界及び地番は、仮のものであり、将来位置境界
  明確化作業が完了したときに、はじめて確定する筆界及び地番であるに過ぎない。
  この点に留意することが肝心である。
   原告の主張は、意図的にこの点を暖昧にしている。そのため、原告は、土地所
  有者が編さん地図確認書に署名押印すると、あたかもそれだけで、一筆地編さん
  図の筆界及び地番が確定したかのように主張するのである。筆界及び地番は、地
  籍明確化の本質的、かつ中核的部分であり、土地所有者が編さん地図確認書に署
  名押印しただけで、確定するものではない。
   したがって、島袋氏が編さん地図確認書に署名押印したことを理由にして、物
  件目録6の土地の筆界及び地番が確定し、特定したとする原告の主張は失当であ
  る。
 二 事実に反する原告主張
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 1 原告の右主張は、島袋氏が編さん地図確認書に署名押印したと断定する点にお
  いても誤っている。島袋氏は、編さん地図確認書に署名押印したことはなく、右
  主張はその前提において事実に反し、誤ったものとなっている。
 2 さらに、原告は、島袋氏が一筆地編さん図の筆界及び地番を争っていないこと
  を理由に、同筆界及び地番は確定し、特定していると主張する。
   しかし、土地の筆界及び地番は公的なものであり、私人が認めたからといって
  確定するものではない。
   したがって、原告の主張はこの意味でも誤っている。
 3 又、島袋氏が、その所有とされる一筆地編さん図の筆界及び地番を争っていな
  いことを理由に、一筆地編さん図の筆界及び地番が確定し、特定しているとする
  原告の主張は、その前提においても誤っている。
   鳥袋氏は、右土地の筆界及び地番を認めたことはなく、争っているものである。
 三 位置境界不明地域内の土地の特定の仕方
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 1 右に述べたとおり、位置境界不明地域内の土地の筆界及び地番は、確定してお
  らず、同地域内筆界及び地番は不明である。
   しかし、このことと位置境界不明地域内の土地を特定できるのかという問題と
  は別である。位置境界不明地域内の土地も次の二つの仕方で特定できる。
   一つは、位置境界不明地域内の強制収用・使用しようと考える土地を現地で杭
  等を打って特定し、その土地について実測平面図を作成する仕方である。このよ
  うして作成された実測平面図は現地復元性を有するので、実測平面図により、対
  象土地が特定されることになる。ただし、この場合対象土地は位置境界不明地域
  内にあるため、土地の筆界及び地番が依然として不明のままである。対象土地を
  地番で特定することができず、実測平面図により(測量法上の基準点を利用した
  方位、角度、距離等により)特定されることになる。
   二つは、実測した字図、又はプロック図を利用して同地域内の位置境界不明地
  を図面上で特定する仕方である。この場合、字図、又はプロック図は実測平面図
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  であり、現地復元性を有するが、その図面に引かれた強制収用・使用の対象とな
  る土地は、図面上で記入されたものであるから、現地の土地を反映したものでは
  なく現地復元性を有せず、単に図面上記載された土地を現地に落とし、現地に杭
  を打つことができるというだけにすぎない。この場合も、字図、又はプロック図
  内の土地は、土地の筆界及ぴ地番が確定しておらず、依然として地籍不明である
  ので対象土地の筆界及び地番は不明のままである。
 2 右に指摘したとおり、強制収用・使用しようとする土地の特定の問題と地籍の
  問題とは、互いに関連し交差するが、それぞれ別個独立したものである。このこ
  とを混同しないことが肝心である。
   原告の主張は、前記の二番めの仕方、すなわち那覇防衛施設局が位置境界明確
  化作業の中で作成された図面(一筆地編さん図、現況地籍照合図、編さん図)を
  利用して、同図面上で対象土地を特定したとするものである。
   したがって、原告が主張する対象土地(物件目録6の土地)は、筆界及び地番
  が不明のままの土地とならなけれぱならない。ところが、原告は物件目録6の土
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  地が「二二九一番」土地であり、「鳥袋善祐」の土地だとして、土地調書及び添
  付図面に記載されている。この誤った土地調書及び添付図面の作成は、原告が対
  象土地を特定する際に利用した位置境界明確化作業の中で作成された図面の中に
  仮の「地番、地積、所有者」が記載されていたことから、同「地番、地積、所有
  者」が確定していると思い込んだことに起因して行なわれたものである。
   しかし、これはすでに述べてきたとおり、誤っている。
   なお、すでに述べたとおり土地収用法は、対象土地の特定については、現地に
  おける土地の特定を求めており(前記一の方法〉、図面上による特定(前記二の
  方法)を認めていないので、原告の対象土地の特定の仕方にはこの面からも不適
  なものである。
 四 土地調書の瑕疵
   以上のとおり、物件目録6の土地については、地籍が確定をしていない土地で
  あるから、同土地の筆界及び地番は、未だ明らかでなく、土地調書に同土地の
  「地番」を表示しえず、且つ添付の実測平面図に筆界及び地番を表示しえないも
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  のである。
   したがって、当然のこととして、地番が確定しないため、同土地の所有者が誰
  であるかも、確定しえない。
   ところが、本件土地調書及び添付の実測平面図には地番又は筆界、所有者が記
  載されたものとなっており、誤った作成手続により誤った内容を記載したものと
  なっている。
   よって、物件目録6の土地調書及び添付実測平面図は、瑕疵あるものである。

第三 本件土地調書全てについて、認められる手続的瑕疵
 一 「立会」の意義
 1 土地収用法三六条二項、四項、五項は、いずれも、土地所有者、市町村長、県
  知事等に、土地・物件調書への署名を求めるだけでなく、「立会」権を認めてい
  る。
   原告は、右各条項が「署名」とは別に「立会」を認めている独自の意義を認め
  ない。原告の主張によると、原告が指定した日時、場所に出向いて起業者の「説
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  明」を受けることが「立会」の意昧ということになる。
   しかし、このような解釈は、「立会」概念に含まれる「確認」という積極的な
  意味を切り捨て「説明」を受けるという消極的な意味に倭小化するものであり、
  誤っている。
   土地調書は、土地収用法三八条で法的推定力を付与されている。この法的推定
  力が付与される理由は、単に土地所有者、市町村長、県知事が起業者から「説明」
  を受けたというだけで説明しうるものではない。土地所有者、市町村長、県知事
  が、立ち会って土地調書の適正さを「確認」する機会が保障されて初めて、合理
  的説明がなしうるものである。
 2 ところで、土地調書に添付された「実測平面図」に表示された土地の位置・境
  界が現地の土地の位置・境界に符号するか否かは、右図面を閲覧しただけでは、
  確認するこどができない。
   これを確認するためには、実測平面図の基になった現地の杭等を、現地で示し、
  立会人に対し確認を求めることが不可欠である。そうでなければ実測平面図の内
  容及び作成が適法であるか否かを、土地所有者、市町村長、県知事は確認するこ
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  とができない。
   したがって、土地収用法三六条に言う「立会」は、現地での立会においてはじ
  めてその意義を発揮し、現地以外の場所では「立会」の意義を消失するものであ
  る。現地立会を不要とする原告の見解は、土地収用法三六条の法意に反し、到底
  とりえないものである。
 二 不適法な「立会・署名」
   原告は、本件土地全てについて、現地立会を行わず、現地以外の場所での「立
  会」を求めたものであるから、本件土地調書に立会・署名を求める那覇防衛施設
  局長の行為は、不適法なものであり、被告は立会・署名を行わないことができる
  ものである。
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