那覇防衛施設局長 陳述書
甲第一号証
陳 述 書
那 覇 防 衛 施 設 局 長
小 浜 貞 勝
私は、平成七年六月二六日から、那覇防衛施設局長として、沖縄県において、日本国
とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する
特別措置法(以下「駐留軍用地特措法」といいます。)に基づき土地の使用権原取得の
手続を進める最高責任者として、当該業務を担当しております。今回の駐留軍用地特措
法に基づく手続は、前那覇防衛施設局長早矢仕哲夫(以下「前局長」といいます。)が
行った所定の手続を継承しているものでありますが、前局長からその内容について引継
ぎを受けておりますので、前局長が行った手続を含め、その概要について、防衛施設局
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長としての立場から説明します。
一 最初に、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米
安保条約」といいます。)及ぴ日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保
障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国におげる合衆国軍隊の地位に関する
協定(以下「地位協定」といいます。)に基づきアメリカ合衆国軍隊に使用を許して
いる沖縄県所在の施設及び区域の土地(以下「駐留軍用地」といいます。)の使用権
原取得の経緯等について説明します。
1 駐留軍用地に係る民公有地の大部分については、その所有者との合意(賃貸借契
約等)により使用しておりますが、合意の得られない一部の土地については、昭和
四七年五月一五日の沖縄の本土復帰当初は、駐留軍用地の大部分の土地の位置境界
が不明で、各筆の土地が現地に即して特定できないため、駐留軍用地特措法による
手続を執ることができない事情にあったこと等から、特別な経過措置として、国等
が権原を取得するまでの間、暫定的に一定期間当該土地を使用することができるよ
うにするために制定された「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(以
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下「公用地暫定使用法」といいます。)に基づいて使用してきました。
ところが、同法に基づく暫定使用は、同法二条の規定により「十年をこえない範
囲内において」(同条の規定は、沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各
筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法(以下「位置境界明碓化法」と
いいます。)附則六条により、当初「五年」とされていた期間が「十年」と改正さ
れました。)認められたものであり、昭和五七年五月一四日をもってその使用期間
が満了することとなりました。
2 この間、防衛施設庁としては、公用地暫定使用法一条二項の規定の趣旨に沿い、
土地所有者との合意により土地の使用権原を取得するよう努めてきましたが、昭和
五七年五月一四日までにすべての未契約地について合意を得ることはできない見通
しでした。
他方、駐留軍用地に係る位置境界不明地域内の土地については、位置境界明確化
法に基づく明確化措置により、各筆の土地の位置境界が逐次明碓化され、駐留軍用
地特措法による手続を執ることができない事惜はなくなったので、公用地暫定使用
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法に基づいて使用している土地で、所有者との合意が得られず、かつ、昭和五七年
五月一五日以降も引き続き米軍の用に供する必要があるものについては、同月一四
日までに駐留軍用地特措法に基づき使用権原を取得することができるように手続を
進めました。
その結果、昭和五七年四月一日、沖縄県収用委員会の使用期間を同年五月一五日
から最長五年間とする旨の土地の使用の裁決を得て、昭和六二年五月一四日まで使
用しました。なお、使用期間が五年未満の土地については、当該期間が満了した時
点でその所有者に返還しました。
3 その間も、防衛施設庁では、未契約地について、土地所有者との合意により使用
できるよう努めましたが、昭和六二年五月一五日以降も引き続き米軍の用に供する
必要がある土地で、依然として土地所有者との合意が得られない土地については、
再度、駐留軍用地特措法に基づき使用権原を取得するための手続を執り、昭和六〇
年三月二〇日及び同月二八日、内閣総理大臣の使用の認定を得ました。その後、昭
和六二年二月二四日、沖縄県収用委員会の使用期間を同年五月一五日から一〇年間
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(ただし、那覇港湾施設については五年間(なお、この関係の平成四年五月一五日
以降の使用権原の取得については、次項以下で説明します。)。)とする旨の土地
の使用の裁決を得て、現在まで各土地を使用しているところですが、この使用期間
は平成九年五月一四日をもって満了することとなります。
4 さらに、土地所有者との合意により賃貸借契約を締結して使用している土地のう
ち、大部分の土地(所有者約二万七一〇〇名、面積約一億二九五四万平方メートル)
については、賃貸借契約の始期が沖縄の本土復帰時の昭和四七年五月一五日となっ
ており、民法六〇四条の規定により契約の始期から二〇年後に当たる平成四年五月
一四日をもってその存続期間が満了することとなりました。また、駐留軍用地特措
法に基づき使用している土地のうち、那覇港湾施設に所在する土地(所有者三名、
面積約一万五〇〇〇平方メートル)については、前述の沖縄県収用委員会の裁決で
定められた五年間の使用期間が平成四年五月一四日をもって満了することとなりま
した。
5 そこで、防衛施設庁では、右の使用期間が満了する土地のうち、平成四年五月一
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五日以降も引き続き米軍の用に供する必要がある土地について、土地所有者との合
意を得て使用できるよう賃貸借契約の予約の締結等に努めたところ、大部分の土地
については土地所有者との合意を得て使用できる見込みが得られました。しかしな
がら、一部の土地についてはその見込みが得られませんでした。
このため、那覇防衛施設局長は、駐留軍用地特措法に基づき当該土地の使用権原
を取得するための手続を執り、平成二年八月二二日及び同年一〇月二三日、内閣総
理大臣の使用の認定を得ました。その後、平成四年二月一二日、沖縄県収用委員会
の使用期間を同年五月一五日から五年間とする旨の土地の使用の裁決を得て、現在
まで各土地を使用しているところですが、この使用期間は平成九年五月一四日をもっ
て満了することとなります。
なお、以上の使用権原取得の経緯を訴状添付別紙目録記載の各土地(同目録3記
載の土地を除きます。)に関して説明しますと、(1) 同目録2の記載の土地のうち
松田正太郎の所有地を除くその余の土地、同目録4ないし6記載の土地、並びに同
目録7記載の土地のうち金城昇、比嘉信子及ぴ喜友名朝則の各所有地を除くその余の
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土地が、右1ないし3に述ぺた経緯で使用権原を取得してきた土地であり、(2) 同
目録1記載の土地、同目録2記載の土地のうち松田正太郎の所有地、同目録7記載
の土地のうち金城昇、比嘉信子及び喜友名朝則の各所有地、並びに同目録8記載の
土地のうち徳里進ほか二名の共有地及ぴ我那覇生吉ほか四名の共有地が、右4及ぴ
5に述べた経緯(ただし、沖縄の本土復帰時の賃貸借契約によるものです。)で使
用権原を取得してきた土地であり、(3)( 同目録8記載の土地のうち徳里進ほか二名
の共有地及び我那覇生吉ほか四名の共有地を除くその余の土地が、右1ないし5に述
べた経緯(ただし、昭和六二年にされた使用期間五年の使用裁決に係るものです。)
で使用権原を取得してきた土地です。
7 また、訴状添付別紙目録3記載の楚辺通信所に係る土地については、昭和四七年
五月一五日から公用地暫定使用法に基づいて使用してきましたが、昭和五一年から
は当時の土地所有者知花昌助と賃貸借契約を締結し使用してきているところです。
この土地は、平成六年六月に昌助からその子昌一に贈与され、これと共に貸主の地
位が昌助から昌一に承継されております。しかし、この契約は、昭和五一年四月一
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日を始期としており、民法六〇四条の規定により契約の始期から二〇年後に当たる
平成八年三月三一日をもつてその存続期間が満了することとなります。
そこで、防衛施設庁は、当該期間満了後も右土地を引き続き駐留軍の用に供する
必要があるため、知花昌一に賃貸借契約の予約締結を申込み、平成八年四月一日以
降の使用権原を取得できるよう努めてきました。しかしながら、当該土地について
は、再三にわたる交渉にもかかわらず、右予約締結の承諾が得られる見込みがない
状況にあります。
8 右に述べました3、5及び7の各土地二五四筆(伊江島補助飛行場ほか一二施設、
所有者二九二七名(一坪共有地主二八一三名を含む。)、面積約三七万一〇〇○平
方メートル。訴状添付別紙目録記載の各土地はこれに含まれます。)は、日米安保
条約及び地位協定に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平
和及び安全の維持に寄与するため、駐留軍が使用する「施設及び区域」として提供
されてきており、今後も引き続き、駐留軍の用に供することが必要にして欠くべか
らざるものであつて、かつ、これを使用することによる公的な利益が、これにより
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失われる土地所有者等の利益よりもはるかに大きいものと思われます。
ところが、これら伊江島補助飛行場ほか一二施設の土地については、既に述べま
したように、その所有者との合意による使用権原の取得が見込めない状況にありま
すので、我が国政府としては、日米安保条約及ぴ地位協定に基づく条約上の義務を
履行するため、これらの土地について、今回の駐留軍用地特措法による使用権原取
得の手続を進めることになったものです。
二 次に、今回の駐留軍用地特措法による使用権原取得の手続開始とその経緯について
説明します。
1 駐留軍用地特措法に基づき使用権原を取得するまでの手続は、防衛施設局長によ
る使用認定申請書に添付する土地所有者等の意見書の提出依頼に始まり、防衛施設
局長の内閣総理大臣に対する使用認定申請書及び添付書類の提出(同法四条)、内
閣総理大臣の使用の認定(同法五条)、使用の認定の告示(同法七条一項)、防衛
施設局長に対する使用の認定の通知(同法七条一項)、使用の認定を受けた防術施
設局長の使用の認定の公告(同法七条二項)等の手続を経た上、防衛施設局長が、
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駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法三六条一項(以下、駐留軍用地特措法一
四条一項により適用される土地収用法の規定については、土地収用法の条項のみを
掲げます。)による土地調書及ぴ物件調書を作成し、右各調書を添付して県収用委
員会に使用の裁決の申請(権利取得裁決の申請及び明渡裁決の申立て。土地収用法
三九条一項及ぴ四七条の三第一項。)を行い、同収用委員会の審理を経て右の裁決
を得、補償金等を払渡して使用権原を取得することとなります。
以下においては、今回の駐留軍用地特措法による使用権原取得の手続の具体的な
経過について述べることとします。
平成七年三月三日、前局長は、土地所有者及び関係人に対し、その提出期限を同
月二四日とする駐留軍用地特措法四条に規定する意見書の提出を依頼し、同年四月
六日及び同月一七日、同局長は、同条の規定に基づき、意見書の提出があった者に
ついては当核意見書を添付し、また、意見書の提出がなかつた者については疎明書
を添付し、訴状添付別紙目録記載の土地を含む土地二五四筆(面積約三七万一〇〇
〇平方メ−トル、所有者二九二七名)について、使用認定申諾書を防衛施設庁長官
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及ぴ防衛庁長官を通じ、内閣総理大臣に提出しました。
同年五月九日、内閣総理大臣は、右申請に係る土地の使用が駐留軍用地特措法三
条に規定する要件に該当すると認め、同法五条の規定により使用の認定(以下「本
件使用認定」といいます。)をし、同法七条一項の規定に基づき那覇防衛施設局長
にその旨を通知するとともに、当該防衛施設局長の名称(那覇防衛施設局長)、使
用すべき土地の所在並びに同条二項の規定による土地の調書及び図面の縦覧場所を
同日付けの官報で告示しました。
前局長は、同日、同法七条二項の規定により、関係市町村内において当該市町村
に関係がある土地の調書及ぴ図面を公衆の縦覧に供し、同月一〇日、土地所有者及
ぴ関係人に対し、本件使用認定があった旨並びに使用しようとする土地の所在、種
類及び数量を通知するとともに、土地収用法二八条の二の規定による補償等につい
てのお知らせを送付しました。また、同月二日、同法七条二項の規定により、本件
使用認定があつた旨並びに使用しようとする土地の所在、種類及ぴ数量を官報によ
り公告しました。
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前局長は、本件使用認定の告示があった後、訴状添付別紙目録記載の土地を含む
土地二五二筆(面積約三六万九〇〇〇平方メ−トル、所有者二九三七名。本件使用
認定後に賃貸借契約の予約締結を承承諾した土地所有者があること、共有者の持分
の一部が移転されたこと等により筆数、面積、所有者数が変わったものです。)に
ついて、沖縄県収用委員会に使用の裁決の申請をするため、土地収用法三六条一項
による土地調書及び物件調書の作成に着手しました。2 ところで、土地調書及ぴ
物件調書の内容と作成手続は、概ね次のとおりとなっています。
(一) 土地調書及び物件韻書の内容について
土地調書及ぴ物件調書は、収用委員会の審理の円滑化を図るため、使用(収用)
に係る土地及びその土地に存する物件の状況並びに権利関係をあらかじめ整理して
おくことを目的とするものであり、次のような事項が記載されていなければならな
いとされています。
(1) 土地調書の内容
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土地調書には、使用(収用)しようとする土地について、土地所有者ごとに
一定の様式により次の事項を記載し、実測平面図を添付しなければなりません
(土地収用法三七条一項、同法施行規則一四条)。
(1) 土地の所在、地番、地目及び地積並びに土地所有者の氏名及ぴ住所
(2) 収用し又は使用しようとする土地の面積
(3) 土地に関して権利を有する者の氏名及び住所並びにその権利の種類及び内
容
(4) 調書を作成した年月日
(5) その他必要な事項
(2)物件調書の内容
物件調書には、使用(収用)しようとする土地にある物件について、土地所
有者ごとに一定の様式により、次の事項を記載しなけれぱならないとされてい
ます(土地収用法三七条二項、同法施行規別一五条)。
(1) 物件がある土地の所在、地番及び地目
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(2) 物件の種類及ぴ数量並びにその所有者の氏名及ぴ住所
(3) 物件に関して権利を有する者の氏名及ぴ住所並びにその権利の種類及び
円内容
(4) 調書を作成した年月日
(5) その他必要な事項
(二) 土地調書及び物件調書の作成について
土地調書は裁決申請書(権利取得裁決の申請書)の添付書類として、物件調
書は明渡裁決の申立てをする際の提出書類として、それぞれ必要とされていま
す(土地収用法四〇条一項三号、四七条の三第一項二号)。
そこで、防衛施設局長は、使用の認定の告示があった後、前述の内容を有す
る土地調書及び物件調書を一定の様式に従い、土地所有者ごとに作成しなけれ
ばなりません(土地収用法三六条一項)。
(1) 調書の作成に当たっては、防衛施設局長がこれに暑名押印するとともに、
土地所有者及ぴ関係人(防衛施設局長が過失がなくて知ることができない者を除
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きます。)を立ち会わせた上、調書に署名押印させなけれぱなりません(土地
収用法三六条二項〉。
土地所有者及ぴ関係人は、調書の作成に立ち会った結果、調書の記載事項が
真実でない旨の異議があるときは、その内容を当該調書に附記して署名押印す
ることができます(土地収用法三六条二項)。
(2) 土地所有者及ぴ関係人のうちに署名押印を拒んだ者又は署名押印するこ
とができない者があるときは、防衛施設局長は、市町村長の立会及び署名押印
を求めなけれぱならず、この場合において、市町村長は、自ら立会及び署名押
印するほか、当該市町村の吏員を立ち会わせ、暑名押印させることができます
(土地収用法三六条四項)。
(3) 市町村長が署名押印を拒んだときは、都道府県知事は、防衛施設局長の
申請により、当該都道府県の吏員のうちから立会人を指名し、署名押印させな
ければならないとされています(土地収用法三六条五項)。
右(2)及ぴ(3)の場合、立会及び署名押印をする市町村長若しくは市町村の吏員又
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は都道府県の吏員は、土地所有者及び関係人の代理人としてするのでなく調書
が測量、調書その他の資科等に基づいて作成されたものであみことを確認すれ
ば署名押印すべきものとされています。
三 次に、土地調書及ぴ物件調書作成のための立会及び署名押印について読谷村長、沖
縄市長及ぴ那覇市長から拒否された状況について申し述ペます。
1 前局長は、土地調書及ぴ物件調書を作成するため、土地収用法三六条二項の規定
地の所有者のうちの住居所不明者三名を除く二九三四名及び関係人一六名に対し、
「立会要請について」と題する文書を郵送することにより、立会及び署名押印を求
めました。なお、訴状添付別紙目録記載の土地所有者合計三五名及び関係人合計一
〇名に対しては、同年五月一六日ころから同月下旬にかけて、「立会要請について」
と題する文書(平成七年五月一五日付け施那第一九七四号及ぴ同第一九七五号)を
郵送することにより、立会及ぴ署名押印を求めました。
ところが、右立会及び署名押印を求めた土地所有者のうち、一九五九名(訴状添
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付別紙目録記載の土地の所有者三五名のうち、立会及び署名押印をした一名を除く
三四名が含まれます。)は右各文書により指定した立会の日時及び場所に出頭せず、
七名は出頭したものの署名押印を拒否しました。また、関係人のうち一二名(訴状
添付別紙目録記載の土地の関係人一〇名のうち、立会及ぴ署名押印をした三名を除
く七名が含まれます。)は右立会の日時及ぴ場所に出頭しませんでした。
そこで、前局長は、土地調書及び物件調書を作成するため、土地収用法三六条四
項の規定に基づき、同年六月六日、伊江村長、恩納村長、読谷村長、沖縄市長、北
谷町長、宜野湾市長、浦添市長及ぴ那覇市長に対し、「立会要請について」と題す
る文書(同日付け施那第二一〇八号)により、同月二三日、嘉手納町長に対し、
「立会要請について」と題する文書(同日付け施那第二二四二号)により、それぞ
れ当該市町村長又は吏員の立会及び署名押印を求めたところ、六市町村長(伊江村
長、恩納村長、嘉手納町長、北谷町長、宜野湾市長及び浦添市長)はこの求めに応
じ、恩納村長による立会及び署名押印並びに他の五市町村の吏員による立会及び署
名押印がされました。しかし、読谷村長(訴状添付別紙目録1ないし4記載の土地
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に係るもの)沖縄市長(同目録5ないし7記載の土地に係るもの)及ぴ那覇市長(同
目録8記載の土地に係るもの)については、次に述べるような事情で立会及び署名押
印を拒否されました。
2 読谷村長、沖縄市長及ぴ那覇市長との折衝経緯について
(一) 読谷村長との折衝経緯について
当局職員は、右「立会要請について」と題する文書(平成七年六月六日付け施
那第二一〇八号)の読谷村長への到達(平成七年六月七日)の前後を通じ、同村
長、同村助役等に対し、立会及ぴ署名押印について協力をお願いしたい旨の折衝
を重ねましたが、読谷村側は、「村長の立場、政治姿勢は二〇年間変わっていな
い。地主との関係もあるので、署名押印は難しいのではないか。」旨の回答であ
りました。
そこで、私は、平成七年七月二六日、読谷村役場に赴き、同村長に面談し、土
地調書及び物件調書の作成のための立会及び署名押印について、時間的に次の手
続に移らなけれぱならない時期にきているので、是非協力してほしい旨の申入れ
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をしたところ、同村長から、「支持団体の意向及び選挙の際の公約からして、署
名押印には協力できない。」旨の拒否回答がありました。
(二) 沖縄市長との折衝経緯について
当局職員は、右「立会要請について」と題する文書(平成七年六月六日付け施
那第二一〇八号)の沖縄市長への到達(平成七年六月七日)の前後を通じ、同市
助役等に対し、立会及び署名押印について協力をお願いした,い旨の折衝を重ね
ましたが、沖縄市側は、「市長としての立場もあり、他の市町村とも話し合って
進めざるを得ない。」、「前回拒否した近隣市町村長の意向も見極めながら対処
したいので、早々に結論が出るものではない。」「市長や三役とも検討したい。」
旨の回答でありました。
そこで、私は、平成七年七月二一日、沖縄市役所に赴き、同市長に面談し、土
地調書及ぴ物件調書の作成のための立会及び署名押印について、時間的に次の手
続に移らなけれぱならない時期にきているので、是非協力してほしい旨の申入れ
をしたところ、同市長から、「署名押印を拒否している地主の意向を尊重せざる
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を得ない立場から、署名押印には協力できない。」旨の拒否回答がありました。
(三) 那覇市長との折衝経緯について
前局長は、平成七年五月三〇日に那覇市長と面談し、立会及ぴ署名押印につい
て協力をお願いしたい旨の折衝を行いましたが、那覇市長は、駐留軍用地特措法
四条一項の規定により前局長に提出した意見書((1)駐留軍用地特措法に基づく強
制使用の手続を行うことにも同意できない。(2)本件土地は、本市行政が力を注い
でいる「平和都市」づくりのために供されるべきである。(3)正常な都市経営の阻
害要因となっている軍事基地に本市有地を供することはできない。(4)都市計画上
の問題として基地の存在には同意できない。(5)那覇港の整備を阻言する那覇港湾
施設の継続使用には同意できない。(6)本県がめざす観光立県の立場からも継続使
用には反対である。(7)本件土地の継続使用は世界的な軍縮、協調対話の時代に逆
行するものであり反対である。)と同様の意見であり、署名押印には協力できな
い旨の回答でありました。
前局長は、平成七年六月八日那覇市長に到達の右「立会要請について」と題す
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る文書(同月六日付け施那第二一〇八号)により、同市の吏員の立会及ぴ署名押
印を求めたところ、平成七年六月一四日に同市長から、「『日本国とアメリカ合
衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並ぴに日本
国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する
特別措置法第一四条第一項において適用する土地収用法第三六条第一項の規定に
より土地調書及び物件調書を作成するので、同条第四項の規定により、下記のと
おり貴職又は貴市吏員立会い及び署名押印を依頼します』に伴う「立会要請」に
ついて(回答)」と題する文書(同日付け那総平第三九一〇号)により、立会及
び署名押印には応じられない旨の拒否回答がありました。
四 次に、土地調書及ぴ物件調書作成のための立会及び署名押印について沖縄県知事か
ら拒否された状況について申し述べます。
右のとおり、土地調書及び物件調書作成のための立会及ぴ署名押印について読谷村
長、沖縄市長及び那覇市長から拒否されたことから、私は、土地収用法三六条五項に
基づき、平成七年八月二一日沖縄県知事に到達の「立会要請について」と題する文書
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(同日付け施那第二六九〇号)により、立会日時を平成七年八月二八日午前一〇時か
ら午後四時まで、立会場所を那覇防衛施設局と定めて、沖縄県の吏員のうちから立会
人を指名し、署名押印させることを申請しましたが、右指定期日に立会及ぴ署名押印
はされませんでした(なお、右の署名押印等の日時及び場所の指定の方法は、これま
での駐留軍用地特措法に基づく使用権原の取得の手続において実施されてきた例に準
拠したものであり、妥当なものと思います。)。
そこで、当局職員は、その後も沖縄県担当部局職員と立会及び署名押印について話
し合いを続けました。私も沖縄県知事等に面談したい旨を申し入れましたが、「知事
は訪中などの予定があり日程調整がつかない。」、「署名押印については憤重に検討
中である。」などとして、知事等に面談することができない状況が続きました。
右のような状況の中で、沖縄県知事は、平成七年九月二八日の定例県議会において、
今回の署名押印はできない旨の答弁をし、翌二九日には沖縄県政策調整監が来局し、
署名押印を拒否することにしたこと及ぴその理由について説明がありました。さらに、
同知事は、一〇月二日到達の「立会要請について(回答)」と題する文書(同年九月
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二九日付け総基第四〇〇号)により、沖縄県吏員の立会及ぴ署名押印には応じられな
い旨の回答をし、土地収用法三六条五項の規定に基づく立会人の指名及ぴ暑名押印を
拒否しました。
その後、同年一〇月五日に沖縄県副知事が防衛施設庁長官を訪ね、沖縄県知事が立
会人の指名及び署名押印を拒否している経緯や理由を説明し、署名押印はできないと
する沖縄県の立場を伝えたと、防衛施設庁本庁から聞いています。
同月三一日には与党三党代表団と沖縄県知事等との会談が行われましたが、会談の
席上、知事は、「今回の署名についてはできない。」として、立会人の指名及び署名
押印を拒否する姿勢を貫く考えを公式に表明したと報道されています.。
同年一一月四日には内閣総理大臣と沖縄県知事との直接の会談が行われましたが、
この会談の中で、同知事から沖縄県吏員の立会及び署名押印に至らなかった事情、背
景等について説明があり、立会人の指名及び署名押印はできないという話がされたと、
防衛施設庁本庁から聞いています。また、同月一一日に行われた防衛庁長官と沖縄県
知事との会談において、私も同席していましたが、同知事は、沖縄県吏員の立会及び
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署名押印を拒否する考えを今後も貫くとの意向を示唆しています。
以上のように、沖縄県知事の立会人の指名及び署名押印の拒否の意思は固いものと
思われ、私の立場からも、地方自治法一五一条の二第一項から第八項までに規定する
措置以外の方法によって是正を図ることは困難であると思います。
五 最後に、駐留軍用地特措法に基づく本件の使用権原取得の手続の今後の見通しにつ
いて説明します。
このまま、沖縄県知事の立会及ぴ署名押印の手続がされませんと、前述のとおり、
楚辺通信所に係る土地については、平成八年三月三一日に賃貸借契約の存続期間が満
了してしまうことになります。土地調書及び物件調書を適式に作成することさえでき
れぱ、沖縄県収用委員会に使用の裁決の申請をした上、土地収用法一二三条の規定に
基づき緊急使用の許可の申し立てをして、暫定的に六か月の使用権原を取得するとい
う方法を採ることができます。しかし、これにしても、申立ての当否について収用委
員会に審理してもらうための期間が必要であるため、右存続期間満了の少なくとも一
か月くらい前には申立てをすることが必要であろうと考えています。
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また、使用の裁決の申請が、本件使用認定の告示の日(平成七年五月九日)から一
年以内にされないときは、本件使用認定は、将来に向かつて、その効力を失う(土地
収用法二九条一項)ことになりますので、本件訴訟に係るすべての土地について、平
成八年五月九日までに使用の裁決の申請をする必要があります。もし、本件使用認定
が効力を失った場合、改めて、本件訴訟に係るすべての土地について使用の認定の申
請手続からやり直さなくてはならないことになりますが、そうなれぱ、楚辺通信所に
係わる土地について国が使用権原を取得できない事態が長期間にわたり継続すること
となるぱかりでなく、その他の各土地についても平成九年五月一四日の使用期間の満
了の日までに使用権原を取得することが極めて困難となることが予測されます。
以上のように、本件訴訟が早期に解決しないと、我が国の日米安保条約及ぴ地位協
定に基づく義務の履行において大変憂慮される事態が生じることが必至と思われます
ので、裁判所におかれましてはかかる事情を十分斟酌下さ,いますようお願い由し上
げます。
右のとおり相違ありません。
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平成七年一二月七日
那覇防衛施設局長
小 浜 貞 勝(印)