国側 第四準備書面
平成七年(行ケ)第三号
職務執行命令裁判請求事件
原告 内閣総理大臣
被告 沖縄県知事
原告第四準備書面
平成八年二月一九日
右原告指定代理人
川 勝 隆 之
松 谷 佳 樹
植 田 和 男
田 村 厚 夫
富 田 善 範
田 川 直 之
小 澤 正 義
崎 山 英 二
浦 田 重 男
原 田 勝 治
安 里 國 基
久 場 景 一
屋 長 朝 郎
小 澤 毅
林 督
地 引 良 幸
千 田 彰
内 山 孝
西 村 和 敏
里 吉 勝
芦 田 栄 司
小 竹 秀 雄
世 利 隆 司
高 岡 辰 榮
大 石 毅
佐 伯 惠 通
新 城 弘 康
古 波 一 男
宮 国 恵 守
野 島 皓
斉 藤 勝
野 村 庄 一
運 天 常 隆
田 名 弘 明
福岡高等裁判所那覇支部 御中
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第一 はじめに
原告は、訴状及ぴ原告第二準備書面において、原告の請求を基礎づける事
実を詳細に主張しており、本準備書面においては、原告の主張は基本的には
足りていると考える。
本準備書面においては、念のため、必要な限度で、被告第三準備書面の主
張に反論するとともに、原告の主張を敷衍し、併せて被告の求釈明書に対す
る意見を述べる。
第二 訴状添付別紙目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)に係る土地
調書(以下「本件土地調書」という。)が適正に作成されたことについて
一 本件土地の位置、境界が、訴状添付別紙目録6記載の土地(以下「目録6
記載の土地」という。)を含めてすぺて特定していること、仮に被告のいう
地籍不明地があったとしても、現地復元性のある図面によって特定される限
り、土地調書を作成することができることは、原告第二準備書面第四、四2
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で主張した。
これに対し、被告は、地籍不明地(被告訴訟代理人新垣勉弁護士が第二回
口頭弁論期日において陳述したところによれば、目録6記載の土地が地籍不
明地であるというようである。)については、土地の位置、境界、所有者が
不明であるから、そもそも土地調書を作成することができないと主張する。
二 土地調書には、使用しようとする土地について実測平面図を添付すること
となっている(駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法三七条一項本文)。
本件土地調書に添付された実測平面図は、専門の測量技術者(測量士)に
委託して、次のような手順で作成したものであって、いずれも現地復元性が
ある。
1 位置境界明確化法は、太平洋戦争等の結果、沖縄県の区域内において位
置境界の不明な地域が広範かつ大規模に存在することとなり、関係所有者
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等の杜会的経済的生活に著しい支障を及ぽしていることにかんがみ、右の
位置境界不明地域内の土地の位置境界の明確化のための措置等の緊急かつ
計画的な実施を図り、もって沖縄県の住民の生活の安定と向上に資するこ
とを目的として制定され、昭和五二年五月一八日公布された。
この位置境界明確化法の規定する位置境界の明確化作業の概要は、那覇
防衛施設局施設部長作成の陳述書(二)(甲第四一号証一〇ページないし二
〇ページ参照)記載のとおりであるが、本件土地(目録6記載の土地を除
く。以下、この項において同じ。)については、いずれも右位置境界明確化
作業を経て各土地の所有者が現地に立ち会って確認の上、現地確認書に署
名押印した結果、地図及ぴ簿冊が作成された。右地図及び簿冊は、認証さ
れた国土調査の成果と同一の効果があるとされ(国土調査法一九条五項)、
右地図が登記所備付けの地籍図(不動産登記法一七条にいう「地図」に準
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ずる図面)となっている。
本件土地調書に添付された実測平面図は、右地籍図を基に、右位置境界
明確化作業において調査測量された成果を利用して、右地籍図上に表示さ
れた図根点(細部図根点。なお、対象土地の近傍に地籍図根三角点又は地
籍図根多角点がある場合は、これを基点とすることがある。)を基点とし
て、対象土地の筆界点(一筆の土地の境界が屈折する点)のうちの任意の
一点を方位角及び距離によって特定し、更に右特定された点から各筆界点
を順次同様の方法によつて特定した上、一筆の土地ごとに作成した。
右のとおり、実測平面図を作成する際、対象土地を特定するために、過
去の位置境界明確化作業の際に調査測量した成果を利用しているが、今回、
駐留軍用地特措法に基づく使用の裁決の申請をするために、右調査測量の
成果を基に現地において測量して、対象土地の各筆界点を特定して、各筆
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界点に杭打ちないし鋲打ち等を行って、現地で土地の位置境界を確認し、
右実測平面図に現地復元性があることを確認した。
なお、訴状添付別紙物件目録1記載の各土地、同目録2記載の土地のう
ち松田正太郎の所有地、同目録7記載の土地のうち金城昇、比嘉信子及び
喜友名朝則の各所有地、並ぴに同目録8記載の各土地については、今回は
改めて測量して杭打ち等をする等の作業を行っていない。これは、右各土
地についてはいずれも平成四年二月に沖縄県収用委員会の使用の裁決を得
ているところ、この裁決申請に当たり、現地で右のような方法で杭打ち等
の作業を行って、その実測平面図に現地復元性があることを確認しており、
かつ、今回の使用の裁決の申請をするために、那覇防衛施設局職員が現地
の状況を確認した結果、土地の客観的状況に何ら変化がなく、前回打った
杭等の状況に変動がないことが確認されたからである。
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右のとおり、本件土地調書に添付された実測平面図は、すぺて現地復元
性を有するものである。
2 目録6記載の土地については、次のとおりである(甲第四五号証の一、
二、第五八号証参照)。
(一)^ 目録6記載の土地を含むキャンプ・シールズ内の各土地については、
昭和五〇年一二月に地籍調査が開始され、各筆の土地の位置境界を確
認するために参考となる資料(市町村界、字の区域、道路、河川、墳
墓、石垣等の物証を明らかにした地図、戦前の航空写真)の収集、作
成等が行われた。そして、これが位置境界明確化法の施行に伴い、同
法に基づく位置境界明確化作業に引き継がれることとなった。
位置境界明確化法に基づく位置境界明確化の作業手続は、基礎作業、
地図編さん作業、復元作業、成果認証作業の四段階に大きく分類され
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るが、目録6記載の土地を含む字等の区域の位置境界明確化作業は、
地図編さん作業の段階までは特段の問題なく終了した。すなわち、目
録6記載の土地の所在する字等の区域の関係権利者に対し、昭和五三
年二月四日ないし八日に現況地籍照合図等を閲覧に供したところ、訴
外島袋善祐を含むすぺての関係権利者が閲覧の上、編さん地図確認書
へ署名押印した。
(2) その後、復元作業の過程において、那覇防衛施設局長は、現地確認
立会日を昭和五三年五月一七日と指定し、目録6記載の土地を含む字
等の区域の関係権利者に通知した。
ところが、関係権利者のうち訴外島袋善祐以外の者はすベて現地確
認書に署名押印したが、訴外島袋善祐は、同日立ち会ったものの、現
地確認書に署名押印しなかつた。そのため、目録6記載の土地を含む
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字等の区域については、成果認証作業を進めることができない状況に
ある。
(二) しかし、目録6記載の土地が現地において特定されているばかりでな
く、その所有者が島袋善祐であることは、次の事実から明らかである。
(1) 目録6記載の土地を含む字等の区域である字知花曲茶原は、いずれ
も国土調査法の認証がされた字知花福地原、字知花下与那原、字知花
上与那原、字知花鳥目原、字知花平田原、字知花岩間作原に隣接して
おり、字知花曲茶原と右各小字との境界は、これら関係小字の各代表
者、関係地主、古老等の協力による現地調査と測量の結果明らかにさ
れ、沖縄市長との字の境界の確認協議により確定した。
(2) 字知花曲茶原〈一三〇筆、土地所有者六五名)については、訴外島
袋善祐以外の土地所有者一二九筆、六四名)は自己の所有する土地
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を現地において確認し、現地確認書に署名押印した。
(3) 訴外島袋善祐が現地確認書に署名押印しない理由は、その所有する
土地の位置境界に不服があるからではなく、専ら米軍基地の存在、し
たがつて、駐留軍用地としての使用を前提とした那覇防衛施設局が行
う駐留軍用地に係る位置境界明確化作業に反対していることにある。
(4) 訴外島袋善祐は「権利と財産を守る軍用地地主会」(いわゆる反戦
地主会)に加入しているが、昭和五三年一二月一八日、反戦地主会は、
読谷村中央公民館において第五回総会を開催し、駐留軍用地の地籍確
定作業に協カしないことを決議した(甲第四九号証)。
(5) 訴外島袋善祐が現地確認書に署名押印しないのは、右のように米軍
基地の存在に反対しているためにすぎないが、このことは、訴外島袋
善祐に関する次のような事情をみれば、層明らかである。
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ア 訴外島袋善祐は、現地確認立会の後、度々、那覇防衛施設局に対
して、目録6記載の土地が所在するキャンプ・シールズの返還時期
を明示すれば、現地確認書に署名押印する旨述ベている(甲第四七
号証、第四八号証の一ないし六)。
イ 訴外島袋善祐は、目録6記載の土地が所在する字等の区域内の他
の土地の所有者と土地の位置境界について争っていない。
(6) 沖縄県収用委員会は、昭和五七年四月一日付け及び昭和六二年二月
二四日付けの裁決書において、目録6記載の土地について、それぞれ
「・・・現地に即して精密に測量の上、特定されたものであることは、
本件裁決申請の添付書類及び現地調査の結果からして明らかである。
「地籍明確化法により未だ認証されていない土地であっても・・・基
礎図、地籍編さん図、調査図の作成手続等及び所有者として登記がな
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されていること、隣接地の所有者らによって、その境界が確認されて
いることに徴すると、本件未認証の土地は、その地目、地積がその範
囲において明確化されていることを認めることができる。したがって、
本件裁決申請に係る土地は、特定されているものと認められる。」と
している(甲第五二号証、第五三号証)。
また、那覇防衛施設局長は、昭和五七年五月一三日及び昭和六二年
三月二五日に訴外島袋善祐の代理人である沖縄県軍用地等補償請求事
務所安里秀雄に対し、使用裁決に基づく補償金(使用裁決によって特
定された地積を基準として算定されたもの)を支払った(甲第五四号
証、第五五号証)が、訴外島袋善祐がこの補償金について不服を申し
立てたことはない。
(三) 那覇防衛施設局では、訴外島袋善祐が署名押印すれば、いつでも国土
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調査の成果としての認証の申請をすることができるように、地図及ぴ簿
冊の原案を作成し、保管している。そして、右地図の原案(地籍図原図。
その精度は認証された地図と変わらない。)を基にして、前記1と同様
の方法で実測平面図を作成し、この結果を現地において復元して確認した。
三 ところで、右の実測平面図における図根点は、以下に述ぺるような位置境
界明確化法等に基づく地籍調査作業によって特定されたものである。この地
籍調査作業は、次のとおり国土調査法に基づく地籍調査作業に準じてされる
が、その詳細は、地籍調査作業規定準則(昭和三二年総理府令第七一号)を
参照していただきたい。
1 基準点測量
陸軍参謀本部陸地測量部が全国に設置した基本三角点(一、二、三等三
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角点)を基にして、建設省国土地理院が調査地域を包含する地域二キロメ
ートルについて一点の割合で四等三角点又は二等多角点(以下「基準点」
という。)を設置する。
2 地籍図根三角測量
基準点を基にして、三角測量によりキロメートルに一点の割合で地籍
図根三角点を設置する。
3 地籍図根多角測量
基準点及び地籍図根三角点を基にして、多角測量により平均八〇メ一卜
ルに一点の割合で調査地域に多角網を構成するような地籍図根多角点を設
置する。
4 細部図根点測量
地籍図根多角点を基にして、更に細かい割合で細部図根点を設ける。
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5 一筆地測量
細部図根点(場合により、地籍図根三角点又は地籍図根多角点)を基礎
にして、一筆地調査を完了した各筆土地の境界、地番及び必要な事項を表
示した測量原図を作成する。
6 地積測定
測量原図を基に各筆の土地の面積を測定する。
7 地籍図及び地籍簿の作成
前述の各作業工程において、調査測量した結果を基にして地籍図及ぴ地
籍簿を作成する。
右のとおり図根点は基本三角点から特定され、本件土地調書に添付された
実測平面図はこの図根点から特定されたから、実測平面図は現地復元性のあ
る図面である。
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四 被告は、本件土地調書に添付された実測平面図が現地復元性を有するとし
ても、それだけでは当該土地の地番や所有者が明確であることにはならない
から、駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法三六条五項の規定に基づき
立会をした都道府県の吏員は、土地調書に署名押印することはできないと主
張するようである。
しかし、都道府県の吏員は、既に原告第二準備書面第四、四3(二)で述ぺ
たとおり、土地調書が測量、調査等に基づいて適式に作成されたことを確認
すれば署名押印すぺきである。被告の主張は、都道府県の吏員の署名押印の
趣旨を正解しないものである。
そもそも、裁決の申請に際して土地調書を添付することとされた(駐留軍
用地特措法一四条一項、土地収用法四〇条一項三号)趣旨は、収用委員会の
審理の場において、対象土地の事実関係を示す書類を活用することにある。
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しかし、もともと真実の事実関係は収用委員会の審理の過程において明らか
にされるべきものであり、土地調書の作成段階はその準備段階に過ぎず、す
ぺての事実関係を究明することまで要請されている訳ではない。このことは、
(1)防衛施設局長が収用委員会に裁決を申請するについて、土地所有者らの記
載事項が真実でない旨の異議を附記したまま土地調書を提出することが認め
られている(防衛施設局長は、収用委員会の審理の段階において、その異議
にしたがつて土地調書を修正するか、土地調書の記載事項が真実であるこを
立証することになる。)こと、あるいは、(2)異議の附記がない場合でも、土
地所有者らが収用委員会の審理において土地調書の記載事項が真実に反して
いることを立証することは妨げられないし(駐留軍用地特措法一四条一項、
土地収用法三八条ただし書)、収用委員会が、職権で調査を行い、土地調書
の記載事項と異なる事実を認定することも妨げられない(駐留軍用地特措法
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一四条一項、土地収用法六五条)ことから明らかである。
また、収用委員会は、私法上の権利関係を最終的に確定する司法機関では
ないから、真実の土地の権利者について十分な審理を尽くして、なお、それ
が明らかでないときは、いわゆる不明裁決(駐留軍用地特措法一四条一項、
土地収用法四八条四項、五項)をすれば足りる。換言すると、土地の使用な
いし収用手続においては、土地所有者の特定が常に必要とされているもので
はない。
このような趣旨からすると、土地調書は、収用委員会の審理の促進・円滑
化に資するように、客観的な資料等に基づいて正確に記載されるぺきである
が、事実関係が確認されない限り作成することができないものではない。し
かして、本件土地についてみると、その位置ないし境界は確定しており、
(1)現地における測量・調査、(2)その結果の整理、(3)これに基づく土地調書・
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物件調書の記載及びC実測平面図の添付という一連の手続を経ていることは
原告第二準備書面第四、四に主張したとおりである。被告がいうように本件
土地中に地籍不明地があったとしても、防衛施設局長としては、現地復元性
のある図面等の客観的資料等に基づいて土地調書を作成すれば十分であり、
必ずしも真実の事実関係を徹底的に究明してこれを土地調書に反映させる義
務まで負うものではない。
第三 本件土地が所在する瀬名波通信施設ほか六施設を駐留軍用地として提供す
る必要性と合理性について
本件使用認定の効力の有無ないし適否が本件訴訟における裁判所の審査の
対象とならないことは、原告第二準備書面第一、二2に述べたとおりであり、
本件使用認定が駐留軍用地特措法五条、三条に規定をする要件を充足してい
ることは、同準備書面第四、三に述ぺたところである。
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しかし、原告は、念のため、本項において、本件土地が所在する瀬名波通
信施設ほか六施設に係る駐留軍用地を提供する必要性ないし合理性に関連し
て、右各施設の概要を述ぺる。
一 瀬名波通信施設
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され(復帰時の名称「ボロー・ポイント射撃場」)、現在、第一八航空団第
一八施設技術群司令部管理の下、空軍FBIS(海外放送情報サービス部隊)
が事務所、通信用アンテナ等の敷地として使用している。
本施設の総面積は約六一万二〇〇〇平方メートルであるが、このうち訴状
添付別紙目録1記載の土地(二筆)は、一四二六・五一平方メートルであっ
て、総面積のわずか約〇・二パーセントにすぎない。この土地二筆のうち一
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筆は事務所用地として、他の一筆は電磁障害除去地として使用されているが、
いずれも本施設全体と一体となって有機的に機能している(甲第二号証の二)。
なお、後者の土地(読谷村字瀬名波鏡地折口原一三〇四番)は、いわゆる
黙認耕作地として使用されている。
※ 電磁障害除去地とは、人為的な電気的雑音により、電子又は電気機器の
効果的な連用を中断し、妨害し、あるいは低下させ、制限させる電磁干渉
を遮断又は低減させるため、一定の制限をする区域である。なお、右黙認
耕作地は、右の目的に相反しない範囲で米軍が耕作等を許しているものと
思われる。
※ 黙認耕作地とは、米軍が、沖縄県に所在する施設及び区域内において、
地位協定三条の管理権に基づき土地所有者等に共同使用、使用許可等の手
続を経ないで土地の耕作を許している土地をいう。
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二 嘉手納弾薬庫地区
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、第一八航空団第一八施設技術群司令部及び海兵隊キャンプ・バ
トラー基地司令部管理の下、第一八航空団第一八兵姑群第四〇〇弾薬整備中
隊、海軍兵器部、米国陸軍第五〇五燃料補給大隊等が、司令部施設、管理事
務所、弾薬貯蔵庫、弾薬補修工場等の敷地として使用している。
本施設の総面積は約二八八三万五〇○〇平方メートルであるが、このうち
訴状添付別紙目録2及ぴ5記載の土地(八筆)は、五四六九・八一平方メー
トルであって、総面積のわずか約〇・〇二パーセントにすぎない。この土地
八筆がすぺて弾薬庫保安用地として使用され、本施設全体と一体となつて有
機的に機能している(甲第三号証の二)。
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なお、これらの土地のうち、読谷村字比謝長佐久原五五三番の土地は、い
わゆる黙認耕作地として使用されている。
※ 弾薬庫保安用地とは、弾薬庫等の安全確保の観点から、米軍の基準に基
づき確保されるべき地域をいう。なお、右黙認耕作地は、右目的に相反し
ない範囲で米軍が耕作等を許しているものと思われる。
三 楚辺通信所
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、在沖米艦隊活動司令部管理の下、ハンザ海軍保全群が中継所、
支援施設、倉庫、警衛所、補給事務所等の敷地として使用している。
本施設の総面積は約五三万五〇〇〇平方メートルであるが、このうち訴状
添付別紙目録3記載の土地(一筆)は、二三六・三七平方メートルであって、
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総面積のわずか約〇・〇四パーセントにすぎない。
そして、この一筆の土地は、アンテナ敷地として使用され、施設全体と一
体となつて有機的に機能している(甲第四号証の二)
四 トリイ通信施設
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、米国陸軍第一〇地域支援群司令部管理の下、在沖米陸軍特殊部
隊第一大隊、在沖米陸軍通信部隊等が通信室、司令部施設、隊舎、倉庫、予
備発電所、通信用アンテナ等の敷地として使用している。
本施設の総面積は約一九七万九〇〇〇平方メートルであるが、このうち訴
状添付別紙目録4記載の土地(二筆)は、九八三・五五平方メートルであっ
て、総面積のわずか約〇・〇五パーセントにすぎない。
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この読谷村字楚辺字東一六番及び二〇一番の土地は、電磁障害除去地とし
て使用され、本施設全体と一体となつて有機的に機能している(甲第六号証
の二。)
なお、これらの土地は、いずれも、いわゆる黙認耕作地として使用されて
いるが、前述の瀬名波通信施設の場合と同様、電磁障害除去の機能に支障の
ない範囲で米軍が耕作等を許しているものと思われる。
五 キャンプ・シールズ
本施設は、昭和四七年五月五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、在沖米海軍艦隊活動司令部及び第一八航空面第一八支援群管理
の下、海軍機動建設大隊等が管理事務所、機械工場、隊舎、家族住宅等の敷
地として使用している。
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本施設の総面積は、約七〇万一〇〇〇平方メートルであるが、このうち目
録6記載の土地(一筆)は、一四七三・〇二平方メートルであって、総面積
のわずか約〇・二一パーセントにすぎない。
この土地は、倉庫及び駐車場敷地として使用され、本施設全体と一体とな
って有機的に機能している(甲第五号証の二)。
六 嘉手納飛行場
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、第一八航空団管理の下、第一八運用群、第六〇三軍事空輸支援
中隊、在沖米艦隊活動司令部、第一八施設技術群等が飛行場、隊舎、家族住
宅、学校等の敷地として使用している。
本施設の総面積は約一九九七万五〇〇〇平方メートルであるが、このうち
---------- 改ページ--------26
訴状添付別紙目録(7)記載の土地(一三筆)は、九八二七・一三平方メートル
であって、総面積のわずか約〇・〇五パーセントにすぎない。
この土地一三筆は、飛行場地区では、保安緩衝地帯用地(三筆)、着陸帯
敷地(一筆)、資材置場敷地(二筆)、エプロン敷地(一筆)として、住宅
地区では、学校用地(二筆)、家族住宅敷地及び場内管理道路敷(一筆〉、
隊舎敷地(一筆)、駐車場敷地(一筆)、家族住宅用地(一筆)として使用
され、本施設全体と一体となって有機的に機能している(甲第七号証の二)。
※ 保安緩衝地帯用地とは、航空機の離着陸の安全を確保するために設けら
れた滑走路周辺の用地をいう。
※ 着陸帯敷地とは、航空機の離着陸の安全を確保する敷地であって滑走路
を含むものをいう。
※ 本施設のエプロン敷地とは、航空機が離着陸する際に駐機場と滑走路と
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の間を移動、停留するために使用する飛行場内の敷地をいう。
七 那覇港湾施設
本施設は、昭和四七年五月一五日、沖縄の施政権が我が国に返還されるに
当たり、地位協定二条一項の施設及び区域として閣議決定の上駐留軍に提供
され、現在、米国陸軍第一〇地域支援群司令部管理の下、米軍運輸管理部隊
那覇港湾隊、米海兵隊第二役務支援群等がバース、倉庫、管理事務所等の敷
地として使用している。
※ バースとは、港で船舶を横づけするコンクリートの岸壁をいう。
本施設の総面積は約五六万八〇〇〇平方メートルであるが、このうち訴状
添付別紙目録8記載の土地(二三筆)は、一万五八〇〇・〇五平方メートル
であって、総面積のわずか約二・八パーセントにすぎない。
この土地二三筆は、野積場敷地(九筆)、機械修理工場敷地(四筆)、エ
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プロン敷地(二筆)、道路及び機械修理工場敷地(二筆)、港渚管理事務所
及び野積場敷地(一筆)、港湾管理事務所及び道路敷地(一筆)、駐車場敷
地(一筆)、倉庫敷地(一筆)、道路敷(一筆)、野積場・倉庫敷地及ぴ道
路敷(一筆)として使用され、本施設全体と一体となって有機的に機能して
いる(甲第八号証の二)。
※ 本施設のエプロン敷地とは、岸壁から上屋までの土地(距雑二〇メート
ルから二五メートル)で、一時的な荷物置場、埠頭内の道路及ぴ荷捌き場
等として使用される敷地をいう。
第四 被告の求釈明書(三)について
一 求釈明書(三)一3について
被告の再求釈明事項のいずれの点についても、既に原告第二準備書面第六、
三において釈明したとおりである。
---------- 改ページ--------29
また、本件土地が所在する瀬名波通信施設ほか六施設に係る駐留軍用地を
提供する必要性ないし合理性に関連して、右各施設の概要について本準備書
面第三で述ぺた。なお、瀬名波通信施設ほか六施設の提供を取り決めた日米
間の協定書は、甲第五六号証として次回期日に提出をする予定である。
本再求釈明事項については、右に述ぺた以上に釈明をする必要はない。
二 求釈明書(三)二3について
1 3の(1)ないし(5)について
地方自治法一五一条の二第一項の規定する公益侵害の要件の審査の範囲
・方法及びその要件適合性については原告第二準備書面第一、四、第四、
三及び第五、三で、この要件適合性を個別の土地の具体的な事情に分解し
て論すぺきでないことについては同準備書面第四、三1でそれぞれ述ぺた
とおりであるから、釈明をする必要はない。
---------- 改ページ--------30
2 3の(6)について
原告第二準備書面第二、三で主張したところから明らかである。また、
この点は法律上の主張であるから、被告側で適宜自己の見解を主張すれば
足りる。よって、この点について釈明をする必要はない。
三 求釈明書(三)三について
いずれの点についても、既に原告第二準備書面第六、八において釈明した
とおりであり、それ以上に釈明をする必要はない。
四 求釈明書(三)四について
被告指摘の点は、原告第二準備書面第一、四1ないし3で主張したとおり
であり、その趣旨は明らかである。
本求釈明事項については、右に述ぺた以上に釈明をする必要はない。
五 釈明書(三)五について
---------- 改ページ--------31
原告は、特定の地域で現に発生している軍事的紛争をもって日米安保条約
の必要性を主張しているのではなく、我が国を取り巻くアジア・太平洋地域
において、紛争に発展しかねない不安定要因が存在することを指摘すること
によつて、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全に奇与するため
に日米安保条約が必要であることを主張しているのである。
本求釈明事項については、右に述べた以上に釈明をする必要はない。
六 釈明書(三)六について
公益侵害の要件に関する原告の判断の内容については、訴状並ぴに原告第
二準備書面第一、四3及び第四、三に述ぺたとおりであり、その趣旨は明ら
かである。
本求釈明事項については、右に述べた以上に釈明をする必要はない。