原 告 内閣総理大臣
被 告 沖縄県知事
第 四 準 備 書 面
平成八年九月一一日
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右原告指定代理人
貝阿彌 誠
江 口 とし子
篠 原 睦
田 村 厚 夫
榮 春 彦
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田 川 直 之
小 澤 正 義
崎 山 英 二
新 垣 栄八郎
原 田 勝 治
安 里 國 基
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武 藤 彰
林 田 雅 隆
小 澤 毅
林 督
地 引 良 幸
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千 田 彰
内 山 孝
西 村 和 敏
里 吉 勝
石 坂 芳 修
河 原 泉
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小 竹 秀 雄
世 利 隆 司
高 岡 辰 榮
大 石 毅
坂 本 憲 一
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新 城 弘 康
垣 花 恵 徹
古 波 一 男
野 島 皓
田 中 聡
野 村 庄 一
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運 天 常 隆
田 名 弘 明
福岡高等裁判所那覇支部 御中
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原告は、被告第四準備書面に対し、必要な限度で反論する。
一 「第一、二、2 駐留軍用地特措法の適用違憲について」について
被告は、「沖縄に少しでも米軍基地があることが違憲である、と主張してい
るのではない」と主張する一方、「沖縄に基地が過度に集中して違憲状態を生
ぜしめていると言うとき、それは沖縄の基地を全体として考察しているもので
ある。したがって、A基地は違憲であるが、B基地は違憲でない、というよう
なことは言えない」と主張する。
そうすると、被告の適用違憲の主張は、結局、我が国における駐留軍の基地
の大半が沖縄県に集中し、これにより同県及びその住民に重大な被害が生じて
いるという現状の下においては、本件職務執行命令の根拠法である駐留軍用地
特措法は、沖縄県における効力を否定されるべきであるとの趣旨をいうものと
も解される。
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しかし、駐留軍用地特措法による土地等の使用又は収用の認定は、駐留軍の
用に供するため土地等を必要とする場合において、当該土地等を駐留軍の用に
供することが適正かつ合理的であると判断されるときになされるのであるが
(同法五条、三条)、右認定に当たっては、我が国の安全と極東における国際
の平和と安全の維持にかかわる国際情勢、駐留軍による当該土地等の必要性の
有無、程度、当該土地等を駐留軍の用に供することによってその所有者や周辺
地域の住民などにもたらされる負担や被害の程度、代替すべき土地等の提供の
可能性等諸般の事情を総合考慮してなされるべき政治的、外交的判断を要する
だけてなく、駐留軍基地にかかわる専門技術的な判断を要することも明らかで
あるから、その判断は、原告の政策的、技術的な裁量にゆだねられているもの
というべきである。被告主張の、沖縄県に駐留軍の基地が集中していることに
よって生じているという種々の問題も、右の判断過程において考慮、検討され
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るべき問題である。
右の点からすると、被告主張の、沖縄県における駐留軍基地の実情及びそれ
によって生じているという種々の問題を考慮しても、同県内の土地を駐留軍の
用に供することがすべて不適切で不合理であることが明白であって、原告の適
法な裁量判断の下に同県内の土地に駐留軍用地特措法を適用することがすべて
許されないとまでいうことはできないから、同法の同県内での適用が憲法に違
反するというに帰する被告の主張は失当である(最高裁平成八年八月二八日大
法廷判決参照)。
一 「第一、二、4 駐留軍用地特措法、土地収用法の定める手続の適法な履践」
について
被告は、「本件公告縦覧の代行申請が適法に行われること、公告縦覧書類が
適正に作成されていること」が職務執行命令の適法要件となる旨主張するとこ
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ろ、被告第二準備書面第五、六によれば、被告は、土地調書・物件調書の「代
理署名」が無効であることを主張するものと解される。
しかし、右主張の事由は、裁決申請の違法事由になるかどうかはともかくと
して、その無効事由にはおよそなり得ず、収用委員会が適式と認めて受理し関
係市町村長に送付した裁決申請書等の書類に関する公告縦覧の手続の代行を命
ずる職務執行命令の適法性を左右しない。
付言するに、被告に対し土地調書・物件調書の作成につき立会人を指名し署
名押印をさせることを命じた福岡高等裁判所那覇支部の判決は、平成八年八月
二八日最高裁判所によって被告の上告が棄却され確定した。したがって、原告
が指名した立会人による立会・署名押印等に違法な点はない。このことは原告
第二準備書面第三、五、6で述べたとおりてある。
二 「第二 使用認定の有効性と本件審理の範囲」 について
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最高裁判所平成八年八月二八日大法廷判決は、原審が適法に確定した、概ね
被告第四準備書面第二、一、3に記載された(1)ないし(5)の事実関係の下におい
ては、「沖縄県に駐留軍の基地が集中している現状や本件各土地の使用状況等
について上告人(引用者注・被告)か主張する諸事情を考慮しても、なお本件
各土地の使用認定にこれを当然に無効とすべき重大かつ明白な瑕疵があるとい
うことはできない。」と判示した。
本件においても、(1)本件土地は、沖縄復帰時において、沖縄返還協定三条一
項の規定に関し両国政府間で行われた討議の結果を示すものとして昭和四六年
六月一七日に交わされた了解覚書により、駐留軍が使用する施設及び区域とし
て日米合同委員会において合意する用意のある施設及び用地に区分された土地
であること、(2)沖縄返還協定は、昭和四七年三月二一日に公布され、同年五月
一五日にその効力を生じたが、同日、日米合同委員会において日米安保条約六
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条及び地位協定二条に基づき駐留軍が沖縄県内で使用を許される施設及び区域
の提供等について合意したところによれば、本件土地は右提供に係る施設及び
区域に含まれていること、(3)沖縄の復帰に際しての日米首脳会談において、佐
藤内閣総理大臣は、沖縄の駐留軍施設及び区域が復帰後できる限り整理縮小さ
れることが必要と考える理由を説明し、ニクソン大統領も、双方が施設及び区
域の調整を行うに当たって、これらの要素は十分に考慮に人れられる旨を答え
たこと、(4)その後、我が国は、駐留軍の使用に供された施設及び区域の整理縮
小のために、日米合同委員会、日米安全保障協議委員会等において交渉を重ね
ているが、本件土地については即時返還の合意には至っておらず、本件土地は、
駐留軍基地(楚辺通信所)の敷地として使用され、駐留軍施設内の他の多くの
土地と一体となって有機的に機能していること、(5)昭和五四年には、沖縄県、
那覇防衛施設局及び在沖米軍の三者連絡協議会が設けられ、基地から派生する
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問題の軽減のための対策を協議し、軍用機の夜間飛行の規制、エンジンテスト
の時間規制等の措置や基地周辺住宅等の防音助成対策を講ずるなどしてきたこ
との各事実は既に取調済みの甲号証によって優に認められるのであり、右事実
関係の下においては、被告が主張する沖縄県に駐留軍の基地が集中している事
実及び本件土地の使用状況等に関する事実を考慮しても、本件土地の使用認定
にこれを当然に無効とすべき重大かつ明白な瑕疵があるということはできない。
なお、本件土地が所在する楚辺通信所は、在沖米艦隊活動司令部管理の下、
ハンザ海軍保全群が中継所、支援施設、倉庫、警衛所、補給事務所等の敷地と
して使用してきており、本件土地はアンテナ敷地として使用されてきている。
右施設の総面積は約五三万五〇〇〇平方メートルであるが、このうち本件土地
は二三六・三七平方メートルであって総面積のわずか約〇・〇四パーセントに
すぎない。そして、右事実も、甲号証により優に認められる(本件土地がアン
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テナ敷地として使用されてきたことは、被告も、被告第二準備書面第四、三、
2、(二)において、「本件土地上にはアンテナそのものは存在しないが、・ ・ ・
一番外側の棒状アンテナの鉄塔の一部の敷地となっている」とと主張し、認めて
いる。)。
W そうすると、本件において、これ以上証拠調べを行う必要はない。