公告縦覧拒否訴訟(楚辺通信所)

被告(沖縄県)   求釈明書(二)



公告縦覧訴訟第1号
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    平成八年(行ケ)第一号 職務執行命令裁判所請求事件
                   原   告     内閣総理大臣
                             橋  本  龍太郎
                   被   告     沖縄県知事
                             大  田  昌 秀

           求  釈  明  書 (二)

    一九九六年八月二七日
                   右被告訴訟代理人
                          弁 護 士   中野清光
                                  外一五名
    福岡高等裁判所那覇支部 御中

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    被告は、訴状「請求の原因」記載の原告の主張について、左記の点について
   明確にされるよう再度釈明を求める。

第一 再度釈明を求める理由
   被告は、一九九六年七月二九日付け「求釈明書」によって、原告の「請求の原
  因」記載の主張について、六点にわたる求釈明をした。これに対し、原告は、そ
  の平成八年八月七日付第二準備書面の「第五 被告平成八年七月二九日付け求釈
  明書について」において、一応の「釈明」をしている。しかし、これは右求釈明
  書に何らまともに答えておらず、無内容といっていいもので、全く釈明になって
  いない。
   被告は、右求釈明書において、「釈明を求める理由」を明らかにし、口頭でも
  その根拠を示して求釈明を行ったのにかかわらず、原告は、一方的に木で鼻をく
  くったように、ほとんど「釈明する必要がない」として求釈明に応じようとして
  いない。
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   しかし、原告の主張とその根拠を明確にし、争点をはっきりさせて充実した審
  理を行うには、被告の求めた釈明に対し、原告が真摯に対応すべきは、訴を提起
  した原告の立場として、また、原告が一国の総理大臣という行政の最高責任者た
  る地位にあるという点からみても、当然のことと思料されるので、被告は、今一
  度、とくに次の重要な点に絞って、再求釈明を行いたいと考える。
第二 再求釈明事項とその説明
 一 一九九六年四月一日以降、原告はいかなる正権原に基づいて、本件土地を駐留
  軍用地として提供しているのか。
 (説 明)
   この求釈明に対し、原告は、「駐留軍用地として提供してきた経緯」を述べて
  あるから、それ以上の釈明の必要はないという(七六頁)。
   しかし、被告が求めているのは提供の権原・根拠であって経緯ではない。本件
  においては、経緯だけが問題なのではなく、現に本件土地を提供しており、引続
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  き提供の必要があるというのであれば、現に提供していることの根拠・権原は重
  要な問題となり得るものである。経緯は、ただのいきさつだけで、そこに法的な
  根拠が含まれるのでなければ、ほとんど意味がない。
   また、被告の主張する「訴権の濫用」に該るか否かの判断をするうえにおいて
  も、その前提としてこの提供の権原・根拠の有無、内容は重要性をもつ。
 二 日米安保条約六条では、日本国と極東における平和と安全に寄与するために、
  米軍は日本に駐留することができることになっており、そのために日本政府は米
  軍に駐留軍用地の提供義務があるというのが原告の主張と思われるが、しからば
  在日米軍が右「極東」の範囲を超えて軍事行動を行っている場合には、米軍の駐
  留自体日米安保条約違反ではないか。その場合には土地提供義務を負わないので
  はないか。それでも日米安保条約違反ではないとか、土地提供義務を負うという
  のであればその根拠如何。
 (説 明)
   被告による右と同旨の求釈明に対し、原告は、沖縄県を含め我が国に駐留する
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  米軍が、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与していることは明らか
  であるとして、それ以上の釈明の必要はないという(原告第二準備書面七六〜七
  七頁)。
   しかし、被告は米軍の駐留がその根拠たる日米安保条約の枠を超えている場合
  には、その根拠たる日米安保条約に反するのではないかと問うているのである。
  駐留の根拠たる日米安保条約に違反しておれば、条約違反の駐留(違法な駐留)
  ということになり、違法な駐留のために、土地を提供することはこれまた違法と
  なり、そうである以上土地提供義務は存しないのではないかという当然の法論理
  の行きつく結論について、釈明を求めているのである。
   原告は、「日本の安全と極東の平和と安全に寄与している」といえさえすれば、
  米軍のどのような内容の軍事行動を行う駐留であっても日米安保条約に違反する
  ことはないと主張する趣旨なのであろうか。
   法律論としては、条約であれ法律、命令であれ、その根拠条項の趣旨・内容に
  合致する限りにおいて合法であり、そうでなければ違法との評価を受け、違法な
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  ことは許されないはずである。本件に即していえば、在日米軍の駐留がその根拠
  をなしている日米安保条約に違反していれば、それは違法な駐留であり、違法な
  駐留のために国民の土地を提供することもまた違法であり、そのような場合には
  土地提供義務はないということになると思われるが、原告はこのような当然と思
  われる法論理とは異なる論理を展開する趣旨なのか否か、明らかにされたい。
   原告が本件において「公益」と主張するのも、ただひたすら日米安保条約に基
  づく駐留軍用地としての提供の必要性をいうのみであるから、この項目の求釈明
  に対応する釈明は必要不可欠である。
 三 原告は、一九七二年五月一五日の日米合同委員会において、本件土地を含む施
  設及び区域の提供について合意した旨主張しているが、使用目的、使用(提供)
  期間、使用条件等その合意内容を明らかにされたい。
 (説 明)
   他人の土地を所有者の意思に反して強制使用の対象とするには、単に正当な補
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  償をすればいいのではなく、使用目的や使用条件、使用期間等が明確にされなけ
  ればならないはずである。ところが原告は、復帰以前から米軍によって使用され
  てきた本件土地を含む施設及び区域について、復帰後も引続き米軍の用に供する
  旨の合意が、復帰の日である一九七二年五月一五日に日米間において成立した旨
  主張するのみで、肝心のその内容については何ら明らかにせず、これらの点に関
  する被告の求釈明に対しては釈明の必要がないという(原告第二準備書面七七〜
  七八頁)。
   しかし、駐留軍用地特措法により、収用委員会の裁決を得て強制使用しようと
  する場合に、使用目的や使用条件、使用期間等が明らかにされなければならない
  のと同様、その基底をなす日米間の合意内容としても、これらの事項は明らかに
  されなければならないし、明らかにされ得るはずである。仮に使用期間が一九九
  六年三月末日までと定められていたとすれば、本件訴は全く不要だし、一九九六
  年末とか九七年末といった近い将来に終期が定められていたとしても(最近の報
  道によれば近年中の返還が合意されたという)、無理に本件訴を提起するのでは
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  なく、別の形での解決方法も十分考えられる。いずれにしても使用期間その他の
  条件の内容は、本件訴訟においても、明らかにされるべき必要性は大きいのであ
  る。
   原告がこれらの事項についても釈明しないというのは、国民の土地を外国の軍
  隊の使用に供するのに、何らの具体的な使用目的や使用条件、使用期間等の定め
  なく、白紙状態の屈辱的な内容の合意をしたため、その内容を明らかにし得ない
  ということなのであろうか。原告は、日米合同委員会の合意内容については、公
  表を予定していないので公表はできない旨主張する如くであるが、小浜貞勝(前
  那覇防衛施設局長)の陳述書(二)(甲第三四号証)添付の別紙11「SACO中
  間報告」によれば、「日米合同委員会の合意を一層公表することを追求する」と
  なっており、その趣旨にそって、本件訴訟における公表を実現してもらいたいも
  のである。
   なお、この三項の再求釈明は、被告の前記求釈明書四項(本件土地の存する施
  設である楚辺通信所に関する使用目的、運用状況等)とも連動するものであり、
  あわせて釈明されたい。
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