公告・縦覧訴訟1号事件(楚辺通信所) 原告(国)第二準備書面
平成八年(行ケ)第一号
地方自治法一五一条の二第三項の規定に基づく職務執行命令裁判請求事件
原 告 内閣総理大臣
被 告 沖縄県知事
第 二 準 備 書 面
平成八年八月七日
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右原告指定代理人
貝阿彌 誠
江 口 とし子
篠 原 睦
田 村 厚 夫
榮 春 彦
---------- 改ページ--------
田 川 直 之
小 澤 正 義
崎 山 英 二
新 垣 栄八郎
原 田 勝 治
---------- 改ページ--------
安 里 國 基
武 藤 彰
林 田 雅 隆
小 澤 毅
林 督
地 引 良 幸
---------- 改ページ--------
千 田 彰
内 山 孝
西 村 和 敏
里 吉 勝
石 坂 芳 修
---------- 改ページ--------
河 原 泉
小 竹 秀 雄
世 利 隆 司
高 岡 辰 榮
大 石 毅
坂 本 憲 一
---------- 改ページ--------
新 城 弘 康
垣 花 恵 徹
古 波 一 男
野 島 皓
田 中 聡
---------- 改ページ--------
野 村 庄 一
運 天 常 隆
田 名 弘 明
福岡高等裁判所那覇支部 御中
---------- 改ページ--------
略 語 例
本準備書面においては、次の略語を使用する。
日米安保条約 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
地位協定 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍
隊の地位に関する協定
駐留軍用地特措法 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍
隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する
特別措置法
---------- 改ページ--------
本件土地 訴状別紙物件目録記載の土地
本件使用認定 原告が平成七年五月九日付けで駐留年用地特借法五条の規定
に基づいてした本件土地の使用の認定
本件公告緩覧の手続 沖縄県収用委員会が那覇防衛施設局長から受理した本件土地
に係る駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法四〇条一項
の規定による裁決申請書及びその添付書類並びに明渡裁決申
立書及び駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法四七条の
三第一項の規定による書類に関する公告縦覧の手続
---------- 改ページ--------
目 次
第一 本案前の主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
一 「訴権の濫用」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
二 主務大臣について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第二 被告第一準備害面に対する認否・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
一 「第一 はじめに」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
二 「第二 沖縄の苦難の歴史」について・・・・・・・・・・・・・・・・・3
三 「第三 沖縄における基地形成史」について・・・・・・・・・・・・・・4
四 「第四 米軍基地の実態と被害」について・・・・・・・・・・・・・・・5
五 「第五 米軍基地、代理署名訴訟判決等に対する県民及び国民の世論」
について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
---------- 改ページ--------
六 「第六 米軍基地問題に対する県の対応と二一世紀への展望」について・14
第三 被告 第二準備書面の主張に対する反論・・・・・・・・・・・・・・・15
一 「第一 本件訴訟の審理の範囲」について・・・・・・・・・・・・・・15
二 「第二 駐留軍用地特措法の法令違憲性」について・・・・・・・・・・18
1 「憲法前文、九条、一三条の平和主義―平和的生存権の侵害」
について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
2 「憲法二九条違反」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
3 「憲法三一条違反」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
三 「第三 駐留軍用地特措法を本件土地の使用のために適用することの違憲
性」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
四 「第四 本件強制使用認定の違法性」について・・・・・・・・・・・・36
五 「第五 公告縦覧代行と地方自治」について・・・・・・・・・・・・・37
---------- 改ページ--------
1 「問題の所在」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
2 「公告縦覧代行の法的性格」について・・・・・・・・・・・・・・・38
3 「「機関委任事務」における主務大臣の指揮監督の性格」について・・42
4 「地方自治の本旨に反する「機関委任事務」の執行拒否―地方自治の保
障と知事の職務」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
5 「本件公告縦覧代行と違憲状態―具体的内容」について・・・・・・・44
6 「違法な公告縦覧申請及び代行申請」について・・・・・・・・・・・45
六 「第六 職務執行命令訴訟の意義と地方自治法一五一条の二の要件欠缺」
について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
1 「職務執行命令訴訟の意義と裁判所の審査権」について・・・・・・・46
2 「審査権についての原告主張に対する反論」について・・・・・・・・46
---------- 改ページ--------
3「公益侵害の不存在」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
七 「第七 財産権を侵害し、クリーンハンドの原則に反する違憲違法な強制
使用手続」について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
第四 本件使用認定について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
一 適用違憲について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
二 使用の認定の有効無効の審査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
三 裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことについて・・・・・・・・・・・64
第五 被告平成八年七月二九日付け求釈明書について・・・・・・・・・・・・76
---------- 改ページ--------1
第一 本案前の主張に対する反論
一 「訴権の濫用」について
本件訴訟は、機関訴訟、すなわち内閣総理大臣(原告)と国の機関である沖縄
県知事(被告)との間における権限の行使に間する紛争についての訴訟であるか
ら、本件土地所有者である訴外知花昌一氏と国との間にいかなる事由があろうと
も、そのゆえをもって、本件訴訟の提起が「訴権の濫用」に当たるとされる余地
はない(なお、最高裁昭和五三年七月一〇日第一小法廷判決・民集三二巻五号八
八八ページ参照)。しかも、原告が被告を相手に本件職務執行命令訴訟を提起す
るに至った経緯等は、訴状「請求の原因」に記載したとおりで、国は、本件土地
につき、賃貸借契約に基づいてその使用権原を取得し駐留軍の用に供してきたが、
その賃貸借の期間が平成八年三月三一日をもって満了するため、それより一年以
上も前から前記所有者に賃貸借契約の申込みをしたが、その承諾が得られなかっ
---------- 改ページ--------2
たので、平成七年四月に駐留軍用地特措法によって本件土地の使用権原を取得す
る手続に入ったところ、その進行が遅れたというにすぎないから、被告が答弁書
「本案前の答弁」第二、一、3において主張する事実を前提にしてもなお、本件
訴訟の提起が「訴権の濫用」に当たるという余地はないし、本件土地につき駐留
軍用地特措法によって使用権原を取得する手続を進めることが「クリーンハンド
の原則」に反し、あるいは「権利の濫用」に当たるなどともいえない。
二 主務大臣について
本件公告縦覧の手続の代行事務が駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法四
二条四項、二四条四項及び同法四七条の四第二項、四二条四項、二四条四項の規
定に基づく事務であり、右事務の主務大臣が内閣総理大臣であることは、原告第
一準備書面一、3記載のとおりである。
---------- 改ページ--------3
第二 被告第一準備書面に対する認否
一 「第一 はじめに」について
本件訴訟が、駐留軍用地特措法、土地収用法、地方自治法に基づいて、本件土
地の裁決申請に係る公告縦覧の代行手続(明渡裁決申立てに係る公告縦覧の代行
手続を含む。)を求めるものであること、米軍基地から派生する騒音、山林の火
災、軍人・軍属による事故があること、沖縄県知事及び沖縄県議会が日本政府に
米軍基地から派生する被害の根絶と基地の整理・縮小を要請してきたこと、本件
土地の所有者が訴外知花昌一氏であること、原告が被告に対し平成七年に職務執
行命令訴訟を提起したこと、日米両国政府で普天間飛行場の移転を決定したこと
は認める。その余の事実は、争う。
二 「第二 沖縄の苦難の歴史」について
1 一及び二の事実について
---------- 改ページ--------4
本件訴訟の争点と関係がないので、特に認否はしない。ただし、明治政府が
琉球王国を琉球藩とした上、廃藩置県により沖縄県としたこと、沖縄戦が沖縄
県に多大の人的・物的犠牲をもたらしたことなど客観的な歴史的事実について
は、特に争うものではない。
2 三の事実について
日米両国政府が昭和四四年一一月の日米首脳会談で昭和四七年に沖縄を返還
することを合意したこと、沖縄の返還によって、沖縄にも日米安保条約、地位
協定及びその実施に伴う特別措置法が適用されることになったこと、日本政府
が「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」によって米軍用地の公用
使用手続を採ったことは認める。その余の事実については、本件訴訟の争点と
関係がないので、特に認否はしない。
三 「第三 沖縄における基地形成史」について
---------- 改ページ--------5
昭和二六年九月八日「日本国との平和条約」が締結され、同条約三条によって
沖縄は日本から分断され、米国の施政権下に置かれたこと、米国施政下の米軍が
被告主張に係る布告・布令等を公布したこと、「沖縄における公用地等の暫定使
用に関する法律」及び「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の名筆の土
地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」の制定の事実、政府が昭和五五年
以降沖縄県内の土地について駐留軍用地特措法を発動したことは認める。その余
の事実については、本件訴訟の争点と関係がないので、認否をしない。
四 「第四 米軍基地の実態と被害」について
1 「一 米軍基地の概況」について
(一) 冒頭部分について
被告主張の米軍基地の施設数、面積、県土面積に対する割合、返還面積、
---------- 改ページ--------6
沖縄県が日本政府に対して基地の整理縮小を要請してきたことは認める。そ
の余の事実は、不知ないし争う。
(二) 「1 在沖米軍施設の全国比率」について
被告主張の沖縄における米軍基地及び専用施設の対全国比、沖縄県の県土
面積の対全国比、他の都道府県の面積に占める米軍基地の割合、国土面積に
占める米軍基地の割合、沖縄県及び他の都道府県において米軍が何らかの形
で使用している基地総面積に対して米軍専用施設が占める割合は認める。
ただし、他の都道府県においては米軍専用施設は米軍基地面積の一〇・九
パーセントとあるのは一〇・七パーセントが正しい。
(三) 「2 所有形態」について
認める。
---------- 改ページ--------7
(四) 「3 用途別使用状況」について
認める。ただし、平成七年三月末現在の「通信施設」の面積は、三七三ヘ
クタールが正しい。
(五) 「4 米軍訓練水域及び空域」について
平成八年六月末現在、沖縄周辺に米軍の訓練のための水域(正常にいうと、
沖縄周辺の米軍の訓練及び保安のための水域)が二九か所、空域が一五か所
設定されていること、名水域について被告主張の制限・禁止があること、那
覇空港について被告主張のとおり管制空域が制限されていることは認める。
その余の事実は、不知ないし争う。
(六) 「5 軍別状況」について
海兵隊は、キヤンブ・コートニーにある第三海兵機動展開部隊の下に、キャ
ンプ・コートニーに第三海兵師団、キャンプ瑞慶覧に第一海兵航空団、牧港
---------- 改ページ--------8
補給地区に第三海兵役務支援群が配置されていること、空軍は、横田基地に
司令部を置く第五空軍司令部の指揮監督下に、第一八航空団が嘉手納飛行場
に配置され、同航空団の指揮下に第一八支援群等が配置されていること、海
軍は、嘉手納飛行場内に在沖縄艦隊活動司令部、嘉手納海軍航空施設隊、沖
縄航空哨戒群等が配置されていること、陸軍は、トリイ通信施設に第一〇地
域支援群のほか、第一特殊部隊群(空挺)第一大隊等が配置されていること
は認める。その余の事実は、不知。
2 「二 米軍の演習・訓練及び事件・事故の状況」について
(一) 「1 演習・訓練の概要」について
認める。
(二) 「2 県道一○四号線越え実弾砲撃演習実施状況」について
第三海兵師団第一二海兵連隊によって、キャンプ・ハンセン演習場におい
---------- 改ページ--------9
て県道一〇四号線越えの実弾演習が多数回実施されていること、最近の演習
においては三日間で約六〇〇発の一五五ミリりゆう弾砲が発射されたことは
認める。その余の事実は、争う。
(三) 「3 パラシュート降下訓練実施状況」について
読谷補助飛行場においてパラシュート降下訓練が多数回実施され、これに
関連して事故(ただし、その件数は除く。)が発生し、被告主張の事故が発
生していることは認める。その余の事実は、不知。
(四) 「4 原子力軍艦寄港状況」について
勝連半島の最先端に位置するホワイト・ビーチ地区に原子力軍艦が寄港し
たことがあること、沖縄県における復帰後の原子力軍艦の寄港状況は認める。
その余の事実は、不知ないし争う。
(五) 「5 事件・事故」について
---------- 改ページ--------10
昭和四七年五月の復帰以後一二一件の航空機関連事故が発生し、被告主張
の平成六年四月四日のF―一五機墜落炎上事故など合計六件の事故が発生し
た(ただし、その態様は除く。)こと、平成七年一〇月一八日のF―一五C
戦闘機墜落事故についておおむね被告主張のような決議、要請等があったこ
と、同年九月三日付けの地元紙に被告主張の内容の社説が掲載されたこと、
沖縄県警察本部の犯罪検挙状況に関する資料が被告主張のとおりであること、
同年一二月末現在米兵による民間人殺害事件が一二件発生していること、被
告が「近年の事件」として掲げる刑事事件が発生していることは認める。そ
の余の事実は、不知。
3 「三 環境破壊」について
平成四年二月に、嘉手納飛行場内において昭和六一年にPCB漏出事故が発
生したという報道がされたこと、キャンプ・ハンセン内の実弾演習の着弾地周
---------- 改ページ--------11
辺に山肌をむき出した部分があり、また射撃演習により原野火災が発生したこ
とがあること、キャンプ・ハンセン内の河川から赤土の流失が認められること、
嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺で航空機による騒音が発生し、付近住民
の生活環境に影響を及ぼしていること、沖縄県が被告主張のように騒音測定を
行っていること及び沖縄県の発表した騒音測定結果の中に環境基準を上回る数
値があったことは認める。その余の事実は、不知ないし争う。
4 「四 米軍基地に起因する女性に対する人権侵害」について
平成七年九月四日に米兵による暴行事件があったこと、同年一〇月二一日に
県民集会が開かれたこと、昭和四七年五月の復帰以後、被告主張の六件の事件
が発生したこと及びその発生状況は認める。ただし、昭和四八年五月二八目に
発生した事件で有罪判決を受けた米兵の人数は「三人」であり、平成六年七月
---------- 改ページ--------12
に発生した事件の日は「一一日」が正しい。
5 「五 基地に侵害される子どもの権利」について
「ジュネーブ条約」、「日本国憲法」、「世界人権宣言」、「子どもの権利
条約」の内容は被告の主張するとおりである。その余の事実の認否は、前記2、
(三)及び3に記載したとおりである。
6 「六 振興開発の阻害」について
(一) 「1 振興開発と米軍基地」について
第三次沖縄振興開発計面が被告主張のような内容であることは認める。
(二) 「2 読谷村の振興開発の阻害」について
軍用地の概況が被告の主張するとおりであること、読谷補助飛行場の返遠
の目途がつきつつあること、被告が主張するような道路を建設する計画があ
ること、米軍基地が地域の振興開発の制約要因となっていることは認める。
---------- 改ページ--------13
その余の事実は、不知ないし争う。
7 「七 行政事務の過重負担」について
沖縄県において米軍に関連する事件・事故が起こった場合に沖縄県が那覇防
衛施設局などに対して抗議の申入れをし、あるいは同県議会を開催して抗議の
決議を行ってきたこと、周辺市町村においても、米軍基地問題を議題とした臨
時議会を開催したり、要請活動を行ったことがあることは認める。その余の事
実は、不知。
五 「第五 米軍基地、代理署名訴訟判決等に対する県民及び国民の世論」につい
て
福岡高等裁判所那覇支部が代理署名訴訟について平成八年三月二五日判決をし
たこと、沖縄県知事は、同年四月一日右判決について最高裁判所に上告したこと、
右上告事件は、最高裁第三小法廷に係属したが、同年六月大法廷に回付され、同
---------- 改ページ--------14
年七月一〇日大法廷で弁論が行われ、被告が意見陳述を行ったこと、同年四月一
二日、原告とモンデール駐日米国大使は宜野湾市にある普天間飛行場の全面返還
を打ち出し、五日後の原告とクリントン米国大統領との会談においてそれが再確
認されたこと、被告主張の新聞報道があったことは認める。
被告主張の世論調査の結果は、不知。
六 「第六 米軍基地問題に対する県の対応と二一世紀への展望」について
昨年日来両国間に「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」が設
置され、国と県で構成する「沖縄米軍基地問題協議会」が設置されたこと、今年
四月一五日に「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」の中間報告
で普天間飛行場を始めとする一一施設の返還が発表されたこと、沖縄県が基地ア
クションプログラム(素案)を作成したことは認める。その余の事実の認否は、
---------- 改ページ--------15
前記三及び四に記載したとおりである。
第三 被告第二準備書面の主張に対する反論
一 「第一 本件訴訟の審理の範囲」について
1 本件訴訟における裁判所の審査の範囲は、原告第一準備書面二記載のとおり
であり、原告(内閣総理大臣)の土地の使用の認定の適法違法はもとより有効
無効も、裁判所の審査の対象とならない。この点について、ふえんする。
行政機関は、先行行為に重大かつ明白な瑕疵がある場合には、当該行政機閣
と先行行為をした行政機関との関係、後行行為の性質、重要度等に照らして、
例外的に、後行行為を拒否することが許される場合もある。
しかし、本件の場合、被告(沖縄県知事)が、先行行為たる原告(内閣総理
大臣)の土地の使用の認定に重大かつ明白な瑕疵があるか否かについて審査し、
---------- 改ページ--------16
公告縦覧の手続の代行を拒否することができる、と解する余地はない。なぜな
らば、そもそも原告が行う土地の使用の認定は、駐留軍用地特措法に基づき、
当該土地について使用権原を取得するための一連の手続の基本となる行為であ
り、その中心となる「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合におい
て、その土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的である」(同法三
条、五条)かどうかの判断は、沖縄県を含む日本国の安全並びに極東における
国際の平和及び安全、日本の外交関係の在り方等をも考慮した高度に攻治的な
裁量判断を包含する、これに対し、被告の行う公告縦覧の手続は、収用委員会
が一応適式と認めて受理した書類を一般に告知ないし公示することに尽きるの
であって、栽決手続における付随的事務といわざるを得ないからである。
なお、最高裁判所昭和三五年六月一七日第二小法廷判決(民集一四巻八号一
---------- 改ページ--------17
四二〇べ−ジ)は、裁判所が先行行為の適法性・有効性について審査をする権
限ないし義務をもつかどうかについては触れていない。
2 被告は、裁判所の審査権の範囲が受命機関のそれと一致すべき必然性はなく、
前者が後者より広いかのように主張する。
裁判所は当該職務執行命令の内容の適杏を実質的に審査するが、右適否は、
ひとえに受命機関が法令上当該職務執行命令に係る事項を執行する義務を負う
か否かによって決まるから、裁判所は、受命機関が法令上右義務を負うか否か
を審査することになる。そして、受命機関が法令上右義務を負うか否かは、当
該法令により受命機関に付与された審査権との関連においてのみ決せられる。
したがって、裁判所は、受命機関の審査権の範囲内においてのみ当該職務執行
命令の内容の適否を審査すべきことになる。仮に被告が主張するように、裁判
所の審査権の範囲が受命機関のそれよりも広いとすると、受命機関は法令上当
---------- 改ページ--------18
該職務執行命令に係る事項を執行する義務を負うにもかかわらず、ひとり裁判
所が右職務執行命令が適法でないとして受命機関の右義務を否定する場合を生
ずることになるが、これは、まさに「司法審査の及ぶ限度」(前記最高裁判決)
を超えるものである。
二 「第二 駐留軍用地特措法の法令違憲性」について
1 「憲法前文、九条、一三条の平和主義―平和的生存権の侵害」について
(一) 被告の主張する平和的生存権は、具体的権利とはいえず、裁判規範性をも
たないから、被告の第二、一の主張は失当である。
下級審の裁判例も、「平和主義や「平和的生存権」についていえば、平和
ということが理念ないし目的としての抽象的概念であって、それ自体具体的
な意味・内容を有するものではなく、それを実現する手段、方法も多岐、多
様にわたるのであるから、その具体的な意味・内容を直接前文そのものから
---------- 改ページ--------19
引き出すことは不可能である。このことは、「平和的生存権」をもって憲法
一三条のいわゆる「幸福追求権」の一環をなすものであると理解した場合に
おいても同様であって、その具体的な意味・内容を直接「幸福追求権」その
ものから引き出すことは、およそ、望み得ない」などと判示してきた(東京
高裁昭和五六年七月七日判決・判例時報一〇〇四号三ページ。同旨札幌高裁
昭和五一年八月五目判決・行裁例集二七巻八号一一七五ページ)。最高裁判
所も、「上告人らが平和主義ないし平和的生存権として主張する平和とは、
理念ないし目的としての抽象的概念であって、それ自体が独立して、具体的
訴訟において私法上の行為の効力の判断基準になるものとはいえず」と判示
し(最高裁平成元年六月二〇日第三小法廷判決・民集四三巻六号三八五ペー
ジ)、私法上の行為の効力の判断基準になるかどうかの前提としてではある
---------- 改ページ--------20
が、いわゆる平和的生存権として主張される平和なるものが、理念ないし目
的としての抽象的概念でしかないとしている。
(二) 被告は、平和的生存権の内容として、「公権力の軍事目的追求によって平
和的経済関係が圧迫されたり、侵害されたりしないこと」、「公権力による
軍事的性質を持つ政治的・社会的関係の形成が許されないこと」、「公権力
によって軍事的イデオロギーを鼓舞したり、軍事研究を行うことは許きれな
いこと」を掲げる。
しかし、このように主張してみても、平和的生存権なるものは依然として
理念ないし目的としての抽象的概念の域を出ないのであって、それが具体的
な意味・内容をもつこととなる訳ではない。
(三) そもそも、憲法前文及び九条が規定する平和主義は決して無防備、無抵抗
を定めたものではなく、我が国が自国の平和と安全を維持しその存立を全う
---------- 改ページ--------21
するために必要な自衛のための措置を採り得ることは、国家固有の権能の行
使として当然のことである。そして、我が国の平和と安全を維持するための
安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、
国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができるのであっ
て、我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めること
は何ら禁じられるものではなく、日米安保条約及びこれに基づいて米国の軍
隊が我が国に駐留することは、憲法九条及び前文の趣旨に適合こそすれ、こ
れらの条章に反して違憲であることが明白であるとは認められない(最高裁
昭和三四年一二月一六日大法廷判決・刑集一三巻一三号三二二五べージ、最
高裁昭和四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号六八五ページ)。した
がって、同条約六条の規定に従って締結された地位協定を実施するために右
駐留軍の用に供する土地等の使用又は収用に関し規定する駐留軍用地特措法
---------- 改ページ--------22
が、憲法九条及び前文の趣旨に違反することはない。そして、そうである以
上、仮に憲法一三条が平和主義を淵源とする権利を保障しているとしても、
駐留軍用地特措法が憲法一三条に違反することもない。
2 「憲法二九条違反」について
(一) 憲法前文及び九条が規定する平和主義の意義等は、右1、(三)に記載し
たとおりである。加えて、憲法九条二項が保持を禁止した「戦力」とは、我
が国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る我が国自体の戦
力をいい、外国の軍隊は、たとえそれが我が国に駐留するとしても憲法九条
二項にいう「戦力」には該当しないし、米国の軍隊は、我が国の安全及び極
東における国際の平和と安全の維持に寄与する(日米安保条約六条)ために
我が国に駐留するが、このような駐留は、憲法九条及び前文の趣旨に適合こ
---------- 改ページ--------23
そすれ、これらの条章に反して違憲であることが明白であるとは認められな
い(前掲最高裁昭和三四年一二月一六日大法廷判決及び最高裁昭和四四年四
月二日大法廷判決)。
そして、我が国が締結した条約を誠実に遵守すべきことは憲法上の義務で
あり(憲法九八条二項)、日米安保条約六条に基づき米国に施設及び区域を
提供し米軍の駐留を許すことは、我が国の国際法上の義務でもある。
このように、日米安保条約に基づく米軍の駐留は、我が国の安全等を維持
する上で極めて重要であり、駐留軍用地特措法は、日来安保条約六条に従っ
て締結された地位協定を実施する法律であるから、同法による土地等の使用
又は収用は高度の公共性を有する。
(二) 憲法二九条三項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために
---------- 改ページ--------24
用ひることができる。」と規定するが、ここにいう「公共のために用ひる」
とは、直接公共の用に供するために特定の私有財産を収用することないし制
限することに限定されず、広く公共の利益の実現のために財産権を収用した
り制限したりする場合を含む。
このことは、最高裁判所昭和二八年一二月二三日大法廷判決(民集七巻一
三号一五二三ページ)が、耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に
享受させるため自作農を急速かつ広汎に創設し、以て農業生産力の発展と農
村における民主的傾向の促進を図ることを目的とした(自作農創設特別措置
法一条)農地買収につき、憲法二九条三項の適用を認めた趣旨に照らしても
明らかである(なお、最高裁昭和三八年六月二六日大法廷判決(刑集一七巻
五号五二一ページ)が、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者
は、奈良県「ため池の保全に関する条例」により、損失補償すら受けること
---------- 改ページ--------25
なく、その財産権の行使をほとんど全面的に禁止されるが、このような規制
は、災害を防止し、公共の福祉を保持するために、社会生活上やむを得ない
ものであって、当然受忍しなければならない、とした趣旨も参酌されるべき
であろう。)。
(三) 以上によれば、駐留軍用地特措法が憲法二九条に違反するとの被告の主張
は失当である。
(四) なお、被告の指摘する政府関係者の発言は、いずれも我が国が締結した条
約に基づき駐留する外国の軍隊に関するものではない。
なるほど、昭和二六年五月二五日の衆議院建設委員会において、澁江政府
委員は、「従来の規定におきましては、国防、その他軍事に関する事業・・
・が、公益事業の一つとして上っておりますが、新憲法のもとにおきまして、
当然不適当であると考えられますので、これは廃止することにいたしており
---------- 改ページ--------26
ます。」(第一〇回国会衆議院建設委員会議録二〇ぺージ)と答弁している
が、右答弁は、条約に基づく外国軍隊の駐留について述べたものではない。
また、河野国務大臣は昭和三九年五月二一日の衆議院建設委員会において、
「公共用地の取得に関する特別措置法」二条八号の改正(附加)に関連して、
「ただいま御指摘になりましたように、「公共の」という条件がついており
ます。軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない、これは
もう社会通念じやなかろうかと私は思います。」(第四六回国会衆議院建設
委員会議録第三一号一四ページ)と答弁している。右答弁は、岡本委員の
「一体、将来軍施設というふうなものについては、これは特定公共事業の対
象にされるのかされないのか、そういうことを、この際明らかにしていただ
きたいと思います。」(同一三ページ)という質問についてされたが、岡本
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委員が質問の対象としたのは外国の軍隊ではない。
3 「憲法三一条違反」について
(一) 被告は、駐留軍用地特措法は、土地収用法に比してその手続を著しく簡略
化しており、土地所有者等の権利保護に欠けるから、適正手続を保障した憲
法三一条に違反する旨主張する。
(二) 行政手続について、憲法三一条による保障が及ぶと解すべき場合であって
も、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があ
り、また行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の
告知、弁解、防禦の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける
権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益
の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべきものであって、常に
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必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない(最高裁平成四
年七月一日大法廷判決・民集四六巻五号四三七ページ参照)。
右の大法廷判決の趣旨によれば、行政処分の相手方以外の者からどの程度
事前に意見を聴取するかなども、行政処分により制限を受ける権利利益の内
容等、行政処分により達成しようとする公益の内容等を総合衡量して、立法
政策上の合理的な判断に基づき決定されるべきである。
(三) 被告は、駐留軍用地特措法では、土地収用法一八条で提出を義務付けられ
ている事業計画書に相当する書類の添付が要求されておらず、認定申請に係
る収用・使用の内容が具体的に明らかでない旨主張する。
確かに、土地収用法においては、建設大臣又は都道府県知事が申請に係る
事業ごとに同法二〇条所定の要件を充足するか否かを認定判断するので、申
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請書の添付書類として同法一八条により提出を義務付けられる事実計画書は
その判断の重要な資料となる。これに対し、駐留軍用地特措法における土地
の使用の認定の場合、使用者は国であり、使用の目的は駐留軍の用に供する
ことにあるから、いわば土地収用法二〇条一号及び二号の各要件は当然に充
足される(なお、駐留軍用地特措法四条一項、同法施行令一条一項一号は、
土地の使用の認定の申請をしようとするときは、「使用・・・しようとする
土地・・・の調書及び図面」等を添付することとしている。)。そこで、駐
留軍用地特措法は、その五条、三条において土地収用法二〇条三号及び四号
に相当する要件を挙げている。このように、土地の使用の認定がされるとき
は、土地収用法二〇条の要件をすべて満たすことになる。
したがって、駐留軍用地特措法に基づく土地の収用・使用であっても、収
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用・使用の内容は明らかであり、土地所有者等の権利利益の保護に欠けると
ころはないから、被告の右主張は失当である。
(四) 被告は、駐留軍用地特措法には、土地収用法二四条(事案の認定の申請書
等の縦覧)、同法二五条(利害関係人の意見書の提出)に相当する手続の定
めがない旨主張する。
しかし、駐留軍用地特措法は、防衛施設局長があらかじめ土地の所有者又
は関係人の意見書を徴し、これを使用認定申請書等に添付する(四条一項)
こととしている。確かに、駐留軍用地特措法は認定申請書等の縦覧の手続を
欠いているが、右のように土地所有者等の意見書を徴していること、土地収
用法に比して使用の主体及び目的が限定されていること等にかんがみれば、
これをもって土地所有者等の権利利益の保護に欠けるということはできない。
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(五) 被告は、駐留軍用地特措法には、土地収用法二三条に定める公聴会の制度
がない旨主張する。
しかし、土地収用法も、「建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関
する処分を行おうとする場合において必要があると認めるときは、公聴会を
開いて一般の意見を求めなければならない。」(同法二三条一項)とし、常
に公聴会の開催を義務付けているものではないし、駐留軍用地特措法では、
内閣総理大臣において、必要があると認めるときは関係行政機関の長及び学
識経験者の意見を求めることができる(六条一項)と規定している。そうす
ると、駐留軍用地特措法が公聴会に関する規定を欠いているからといって、
土地収用法に比較して、土地所有者等の権利利益の保護に欠けるということ
はできない。
(六) したがって、被告が主張するように駐留軍用地特措法が土地収用法に定め
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る手続規定を一部欠いているとしても、土地所有者等の権利保護に欠けると
いうことはできない。換言すると、駐留軍用地特措法と土地収用法との手続
上の差異は、先に述べた立法裁量の範囲内の問題にすぎず、憲法三一条違反
が問題となる余地はない。よって、被告の前記主張は失当である。
三 「第三 駐留軍用地特措法を本件土地の使用のために適用することの違憲性」
について
1 被告は、本件土地を使用するために駐留軍用地特措法を適用することは、そ
のいずれの段階の手続においても、すべて憲法違反になるから、本件公告縦覧
の手続を代行する義務はない旨主張する。
しかし、いわゆる適用違憲とは、法令の規定それ自体を違憲とする(法令違
憲)のではなく、当該事件に連用される限りにおいて法令の規定を違憲とする
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ものである。したがって、適用違憲を主張するためには、どの法令のどの条項
がどの事実に適用されるのかを具体的に特定し、かつ、それが憲法のどの条項
に違反するのかを明らかにしなければならない。
ところが、被告は、駐留軍用地特措法のどの規定がどの事実に適用されるか
ら憲法のどの条項に違反するのかを具体的に主張しないで、ひたすら「駐留軍
用地特措法の適用」が違憲状態を招来すると主張するにすぎない。これを強い
て善解すれば、被告は、(1) 原告が駐留軍用地特措法五条、三条を適用して本
件土地につき使用の認定をしたこと、(2) 原告が同法一四条一項、土地収用法
四二条四項、二四条四項及び同法四七条の四第二項、四二条四項、二四条四項
の規定を適用して被告に本件公告縦覧の手続の代行を命令したことがいずれも
憲法に違反する、と主張するものと解される。
しかし、(1) 本件訴訟における審査の範囲は、先に述べたとおりであって、
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本件使用認定の適法違法はもとよりその有効無効もその審査の範囲外であるか
ら、本件使用認定が憲法に違反して無効であることを主張しても、そのような
主張は失当である。
また、(2) 駐留軍用地特措法一四条一項、土地収用法四二条四項、二四条四
項及び同法四七条の四第二項、四二条四項、二四条四項の規定を適用して被告
に本件公告縦覧の手続の代行を命ずることが何故憲法に違反するのか被告の主
張は明確でないが、これを更に善解すれば、公告縦覧の手続の代行も、その最
終的な目的は当該土地の強制使用にあるから、その強制使用の結果が違憲であ
る以上、右代行を命ずることも当然に違憲になる旨主張するものと解される。
しかし、右公告縦覧の手続の代行は、駐留軍用地特措法の手続の中では従たる
地位をもつ告知ないし公示行為にすぎず、直ちにその権利の取得につながるも
のではないから、強制使用の結果が違憲であるからといって、公告縦覧の手続
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の代行を命ずることが直ちに違憲になるものではない。
2 被告は、米軍基地が沖縄県に集中していること及び駐留軍用地特措法が沖縄
県内の土地についてのみ適用されていること等を挙げて、このような駐留軍用
地特措法を始めとする基地提供法令の「運用」が憲法一四条、九二条及び九五
条に違反する、と主張する。
しかし、右主張は、本件に法令が適用されることが憲法に違反するか否かを
直接問題にすることなく、法令の運用一般ないしその運用の実態が違憲である
ことを主張するものであり、このような主張が失当であることは、裁判所は具
体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するもので
はない旨を判示した最高裁判所昭和二七年一〇月八日大法廷判決(民集六巻九
号七八三ページ)の趣旨に照らして明らかである。なお、いわゆる運用違憲の
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判断方法を採った裁判例(東京地裁昭和四二年五月一〇日判決・判例時報四八
二号二五ページ)は、「司法裁判所の違憲審査権は、一定の事件性・・・を前
提として、これに適用される特定の法令或は具体的処分が合憲か違憲かを判断
すべきものであって、法令の運用一般或はその運用の実態を憲法判断の対象と
すべきではなく、ただ特定の適用法令或は具体的処分についての憲法判断に当
り、その補助事実として、法令運用の実態が考慮されるに止まるべきである」
(東京高裁昭和四八年一月一六日判決・判例時報七○六号一〇三ベージ)とし
て取り消されている。
3 右のとおり、被告の主張はいずれも失当である。
四 「第四 本件強制使用認定の違法性」について
本件使用認定の適法違法ないし有効無効は本件訴訟における裁判所の審査の対
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象とならないことは、原告第一準備書面二記載のとおりである。
五 「第五 公告縦覧代行と地方自治」について
1 「問題の所在」について
本件のような公告縦覧の手続の代行が都道府県知事の義務であることは原告
第一準備書面一、1記載のとおりである。
なお、被告は、原告が「被告が駐留軍用地特措法の規定により義務付けられ
た本件公告縦覧の手続を行わないことは、地方自治法一五一条の二第一項にい
う「国の事務の管理若しくは執行が法令の規定・・・に違反する」場合又は
「国の事務の管理若しくは執行を怠る」場合に該当し、また、同法一五〇条の
指揮監督に従わないことは、同法一五一条の二第一項にいう「国の事務の管理
若しくは執行が・・・主務大臣の処分に違反する」場合又は「国の事務の管理
若しくは執行を怠る」場合に該当する」(訴状「請求の原因」八、l)と主張
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したことをもって、「土地収用法上、都道府県知事に公告縦覧代行義務を認め
ることが無理な解釈となることから、同義務が否定された場合に備えた予備的
主張の実質を有するものと解される」と、原告の主張を曲解している。
しかし、原告は、地方自治法一五〇条の指揮監督と離れて、被告が本件公告
縦覧の手続を行わないことをもって「法令違反」又は「職務懈怠」に該当する
と主張する一方、被告が同法一五〇条の指揮監督に従わないことをもって「処
分違反」又は「職務懈怠」に該当すると主張しているのであって、右の両主張
は選択的主張である(このことは、原告第一準備書面の文理上明らかであ
る。)。
2 「公告縦覧代行の法的性格」について
被告は、(1) 公告縦覧の代行規定が職務執行命令に関する規定の特則であり、
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職務執行命令手続を行うか否かは都道府県知事の裁量にゆだねられていること、
(2) 公告縦覧の代行規定が代行権限の形式をとり、代行義務の形式をとってい
ないこと、(3) 地方自治法一四八条二項、別表三、一、(三の四)及ぴ(百八)
に公告縦覧事務が掲げられていないこと、(4) 都道府県知事が公告縦覧を代行
するに先立ち当該市町村長に対し代行する旨の通知をしなけれぱならないこと
をもって、都道府県知事が公告縦覧の代行を行うか否かはその裁量にゆだねら
れている、と主張する。
しかし、(1) 被告が職務執行命令手続を行うか否かは都道府県知事の裁量に
ゆだねられているとする根拠は、地方自治法一五一条の二第一二項、二項の規
定が「都道府県知事は・・・命令することができる」となっていることにある
にすぎず、結局、(2) の点と同一に帰する。
(2) 一般に、法令が「・・・することができる」と規定した場合には、その
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趣旨は当該機関の権限を定めることにあることが多いが、そのように規定され
た事務の処理が常に当該機関の裁量にゆだねられたということはできない(権
限の付与と裁量権の付与とは同一でない。)。土地収用法二四条四項の「行な
うことができる」という文言も、単に都道府県知事に公告縦覧を代行する権限
があることを示すものにほかならないことは、原告第一準備書面一、1、(四)
で述べた。
(3) 地方自治法一四八条二項、三項に基づく別表第三、第四は、都道府県知
事又は市町村長が管理、執行しなければならない機関委任事務を掲げているが、
都道府県知事又は市町村長は、右各別表に記載されているから当該機関委任事
務を処理する義務を負うものではなく、個々の法令に基づいて当該機関委任事
務を処理する義務を負う。換言すると、右各別表は、都道府県知事又は市町村
長が管理、執行しなければならない事務のうち主たるものを明示し、例外的な
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事務、僅少な事務はこれを「等」として包括的に規定しているにすぎない。そ
して、本件で問題となっている都道府県知事の公告縦覧の手続の代行事務は、
別表第三、一、(三の四)の「等」に含まれる。
(4) 都道府県知事の市町村長に対する通知(土地収用法二四条五項)は、都
道府県知事及び市町村長によりそれぞれ公告縦覧が行われると、土地所有者及
び関係人の意見書の提出期間に混乱を生ずるため、これを避ける趣旨から行わ
れる。したがって、右通知は、都道府県知事の公告縦覧の代行が義務か否かと
は、直接かかわりのない事柄である。
なお、被告は、土地収用法は、収用高権の発動手続をすべて時の政府にゆだ
ねず、同手続中に地方公共団体の意思を反映させようとして、代行権の行使を
都道府県知事の裁量にゆだねている旨主張する。
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しかし、公告縦覧の手続は、収用委員会が一応適式と認めて受理した書類を
一般に告知ないし公示することに尽きるのであり、土地収用法が、このような
付随的な手続において例外的に生じる代行の中で「収用高権の発動手続」に地
方公共団体の意思を反映させようとしたとは考えられない。
右のとおり、被告が都道府県知事の公告縦覧の手続の代行は義務ではないと
する理由はいずれも失当である。
3 「「機関委任事務」における主務大臣の指揮監督の性格」について
被告は、都道府県知事が管理・執行の義務を負う「機関委任事務」(地方自
治法一四八条二項)は別表第三に記載された事務であり、都道府県知事は右事
務についてのみ地方自治法一五〇条の指揮監督を受けるところ、都道府県知事
の公告縦覧の手続の代行事務は別表第三に記載がないから、管理・執行の義務
を負う「機関委任事務」ではなく、都道府県知事は公告縦覧の手続の代行につ
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いて同条の指揮監督を受けない旨主張する。
しかし、地方自治法一五〇条の規定によってはもちろんその他の規定によっ
ても、機関委任事務に主務大臣が指揮監督権を行使しうるものと行使し得ない
ものとがあると解することはできず、被告の主張はその前提において失当であ
る。仮に、被告の主張する前提に立ったとしても、公告縦覧の手続の代行事務
は、別表第三、一、(三の四)の「等」に含まれるから、主務大臣(内閣経理
大臣)は、地方自治法一五〇条の指軍監督権を行使することができる。被告の
主張は、この点においても失当である。
4 「地方自治の本旨に反する「機関委任事務」の執行拒否―地方自治の保障と
知事の職務」について
被告の主張は、要するに、都道府県知事には内閣から独立した自主的な憲法・
法令解釈権があり、被告は右解釈権に基づき判断した結果、本件公告縦覧の手
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続の代行義務を負わないという判断に至った、裁判所は、被告の右判断に誤り
が存するか否か慎重に判断すべきである、というものである。
被告の右主張は、被告第二準備書面「第二 駐留軍用地特措法の法令違憲
性」、「第三 駐留軍用地特措法を本件土地の使用のために適用することの違
憲性」と同旨のものにすぎず、右主張がいずれも失当であることは、前記二、
三で述べたとおりである。
5 「本件公告縦覧代行と違憲状態―具体的内容」について
被告は、本件公告縦覧の手続の代行は、米軍基地の撤去を求める沖縄県民の
意思に反する旨主張する。
しかし、たとえそのような沖縄県民の意思があったとしても、右は、法律上
の義務の存否を左右するものでないことはいうまでもなく、被告は、そのゆえ
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をもって直ちに、本件公告縦覧の手続の代行を拒否することはできない。
6 「違法な公告縦覧申請及び代行申請」について
被告が本件公告縦覧の手続の代行をするに際して審査することができる範囲
は原告第一準備書面二、3、(一)記載のとおりであり、裁決申請(明渡裁決
申立てを含む。)の適法違法ないし有効無効はその審査の対象とならないから、
被告の主張は失当である。
なお、福岡高等裁判所那覇支部は、被告に対し、土地調書・物件調書の作成
につき立会人を指名し署名押印をさせることを命じる判決を言い渡したが、被
告が判決で示された期限までに右事務を行わなかったため、原告は、立会人を
指名し、立会・署名押印をさせた。これに続く那覇防衛施設局長の本件の裁決
申請(明渡裁決申立てを含む。)、収用委員会の関係市町村への裁決申請書等
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の写しの送付(被告がいう「公告縦覧申請」はこのことか)、那覇防衛施設局
長の被告に対する公告縦覧の代行申請に違法な点はない。
六 「第六 職務執行命令訴訟の意義と地方自治法一五一条の二の要件欠缺」につ
いて
1 「職務執行命令訴訟の意義と裁判所の審査権」について
本件訴訟における裁判所の審査の範囲・方法は、原告第一準備書面二記載の
とおりである。
2 「審査権についての原告主張に対する反論」について
必要な範囲で、被告の主張に対し反論する。
(一) 「4 地方公共団体首長の大幅な裁量権、地方自治の尊重」について
そもそも地方公共団体の長は、当該地方公共団体の執行機関として独立し
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た地位を有するが、他面、法律に基づいて委任された国の事務を執行する機
関としての地位を有する。そして、法令は、地方公共団体の長の右の二つの
地位が相容れないものとはしていない(地方自治法も、職務執行命令訴訟制
度(一五一条の二)を採用することによって、地方公共団体の長の地位の自
主独立性と国の指揮監督権の実効性との間の調和を図っているにすぎな
い。)。換言すると、地方自治の行政事務を行う義務と国から機関委任され
た事務を行う義務とが抵触を生じ、地方公共団体の長が右各事務の優劣を決
する必要が生ずることはない。ただ、後者の地位における事務処理について
は国の指揮監督権に服し(国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇
条)、地方公 共団体の長は、法令に基づいてその所掌する事務を管理執行
する(地方自治法一四八条一項)にすぎない。
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なるほど、都道府県知事は、法令に基づき委任された国の事務を執行する
ことが地方自治の本旨に反する場合には、右事務の執行を拒否することがで
きる。しかし、右の場合を除くと、都道府県知事が国の事務を処理するに当
たり一定の裁量権ないし自主的判断権を有するか否かは立法政策に係る事柄
であり、公告縦覧の手続の代行の趣旨等からすると、駐留軍用地特措法一四
条一項、土地収用法四二条四項、二四条四項等が、都道府県知事に対し、原
告第一準備書面二、3、(一)に記載した事実の有無について審査権を付与
したほかに、一定の栽量権ないし自主的判断権を付与したとは考えられない。
そして、都道府県知事に対し公告縦覧の手続の代行を義務付けることが地方
自治の本旨に反するとされる余地はない上、本件の場合右の事実が認められ
るから、被告(沖縄県知事)は本件公告縦覧の手続の代行をする義務がある
ことは明白である。
---------- 改ページ--------49
(二) 「5、(二) 他の是正措置の存在」について
被告は、国が米国と協議し、在沖米軍基地の整理・縮小、返還を要請する
などして、被告が公告縦覧の手続を代行する必要性をなくすことが可能であっ
たと主張する。
しかし、地方自治法一五一条の二第一項が規定する「本項から第八項まで
に規定する措置以外の方法」とは、指揮監督(同法一五〇条)や内閣総理大
臣の措置要求(同法二四六条の二)のように、当該都道府県知事に法令若し
くは処分違反又は職務懈怠があることを前提として、その法令若しくは処分
違反又は職務懈怠の是正を図るための直接的な方法をいう。しかるに、国が
外交交渉等の措置をとることにより本件土地の返還を受けることは、知事に
法令若しくは処分違反又は職務懈怠があることを前提とするものではないか
ら、右の「本項から第八項までに規定する措置以外の方法」に該当しない。
---------- 改ページ--------50
また、国が被告の要求に沿うべく外交交渉をするなどの措置を講ずることは、
右の是正を図るための直接的な方法ではなく、およそ同法が「本項から第八
項までに規定する措置以外の方法」として予定していないところである。
また、被告は、職務執行命令訴訟ではなく、国が、起業者としての立場で
被告に対し給付訴訟又は当事者訴訟を提起することができた旨主張する。
しかし、給付訴訟又は当事者訴訟の当事者は権利義務の帰属主体がなるの
であって、その機関(県知事)が当該訴訟の被告となることはないし、公告
縦覧の手続の代行事務は国の機関委任事務であるから、被告の主張に従えば、
国が国を訴えることとなるが、このような訴えを適法とする根拠は見出し難
い。したがって、本件を解決するには、職務執行命令訴訟以外の方法は存在
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しない。
3 「公益侵害の不存在」について
(一) そもそも、国の事務について法令若しくは処分違反又は職務懈怠がある場
合、「それを放置することにより著しく公益を害することが明らかである」
ことさえ認定されれば、「公益侵害の要件」は充足される。仮に被告がそれ
を拒否することによりもたらそうとした公益が存在するとしても、そのため
に「公益侵害の要件」が失われることはない。
そして、本件において、原告がした「公益侵害の要件」に関する判断の内
容は、訴状「請求の原因」八、3及び原告第一準備書面二、5に述べたとお
りであり、また、「公益侵害の要件」に関する裁判所の審査の範囲・方法に
ついては、原告第一準備書面二、5で述べたとおりである。なお、本件使用
認定の適法違法ないし有効無効は本件訴訟における裁判所の審査の対象とな
---------- 改ページ--------52
らないから、裁判所は、本件使用認定が駐留軍用地特措法三条、五条の要件
を充足していることを前提として審査しなければならない。
右によれば、原告が、被告が本件公告縦覧の手続を履行しないことを放置
することは、地方自治法一五一条の二第一項にいう「著しく公益を害するこ
とが明らか」な場合に該当すると判断したことは当然である。
(二) 被告は、日米安保条約及び地位協定自体の合憲性を問わないとしても、憲
法前文、九条ないし軍事的公益を排している土地収用法、森林法などに照ら
すと、被告の職務執行につき勧告、命令をすることは許されないと主張する。
しかし、日米安保条約及び地位協定の義務の履行を公益に適合しないとす
る被告の主張は、およそ理解し難い。かえって、日米安保条約及び地位協定
---------- 改ページ--------53
に基づく義務の履行が公益に適合することは、既に述べたとおりである。
なお、駐留軍用地特措法に基づく土地の使用は、土地収用法三条の「土地
を・・・使用することができる公共の利益となる事業」に掲げられていない
が、駐留軍用地特措法は土地収用法の特別法であり、駐留軍用地特措法に基
づく土地の使用が公益に適合することを否定する根拠とはならない(ちなみ
に、自衛隊が使用する土地は、土地収用法三条三一号にいう「国・・・が設
置する庁舎・・・その他直接その事務又は事業の用に供する施設」に関する
事業の用に供されるものと解されている。)。また、被告は、国防が公益に
当たらない根拠として森林法を掲げるが、同法二六条二項に定める保安林の
指定の解除の要件となる「公益上の理由」には、国防上の必要性が含まれる
と解される。
---------- 改ページ--------54
(三) 被告は、日米安保条約六条は我が国の米国に対する施設及び区域の提供義
務を定めているが、米国が要求する施設及び区域を必ず提供しなければなら
ない義務はないと主張する。
しかし、既に、日米両国間では、本件土地を含む施設及び区域を提供する
ことが合意されており、この義務を履行するために、本件土地の使用権原を
取得することが要求されている。我が国が、本件土地の使用権原と取得する
ことができなかったからといって、米国の同意を得ないで、一方的に、いっ
たん合意した施設及び区域の提供を中止することが許容されるわけではない。
(四) 被告は、本件公告縦覧の手続の代行を行わないことが米軍基地のもたらす
悪影響を解消することに資すると主張する。
確かに、被告の主張するような米軍基地のもたらす様々な影響を解消する
---------- 改ページ--------55
ために種々の施策を行っていく必要性があること自体は、原告も否定するも
のではない。国としても、基地に関する様々な施策を継続拡充するとともに、
更なる対策を講ずるために日米間で十分な協議をしていきたいと考えている。
その一方、被告が本件公告縦覧の手続の代行を行わなかったところで、基地
問題の根本的な解決につながるわけではない。
また、国の機関として委任された事務の履行を拒否するという違法な手段
に訴えて基地問題の解決を求めることは、法治国家である我が国においては
許されるものではない。
七 「第七 財産権を侵害し、クリーンハンドの原則に反する違憲違法な強制使用
手続」について
第一、一で述べたとおりであり、本件訴訟の提起が「訴権の濫用」に当たらな
いことはもとより、その請求が棄却されるべき理由はない。
---------- 改ページ--------56
第四 本件使用認定について
一 適用違憲について
仮に本件訴訟において本件使用認定の有効無効が審査の対象となるとしても、
被告第二準備書面「第三 駐留軍用地特措法を本件土地の使用のために適用する
ことの違憲性」の二ないし五の各主張は失当である。
1 「安保条約目的条項を逸脱する米軍の駐留の憲法九条、前文への違反」につ
いて
被告は、駐留軍の駐留目的ないしその活動の実態が日米安保条約六条に定め
る目的を逸脱し、憲法前文及び九条に違反しているから、本件土地に駐留軍用
地特措法を適用することは憲法前文及び九条に違反する、と主張する。
しかし、駐留軍の駐留目的ないしその活動の実態が日米安保条約六条の目的
---------- 改ページ--------57
を逸脱し、憲法前文及び九条に違反しているかどうかは、我が国の政治、外交
の根幹にかかわり、高度の政治的判断を要する事柄であって、司法裁判所の審
査には原則としてなじまない。したがって、右の点は、一見極めて明白に違憲
であると認められない限り、司法審査権の範囲外のものであって、第一次的に
は、行政権の属する内閣の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の
政治的批判にゆだねられる(前掲最高裁昭和三四年一二月一六日大法廷判決及
び最高裁昭和四四年四月二日大法廷判決)。
しかるところ、被告の主張する湾岸紛争における米軍の活動等をもって、直
ちに、米軍が我が国に駐留すること及び本件土地に駐留軍用地特措法を適用す
ることが一見極めて明白に憲法九条及び前文の趣旨に違反するとはいえず、他
にこれらが一見極めて明白に違憲であるという根拠はないから、右主張は、主
張自体失当である。
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2 「様々な基地被害ないしその危険をもたらしている在沖米軍基地の使用のた
めに駐留軍用地特措法を適用することによる平和的生存権侵害」について
被告は、沖縄県に米軍基地を存続させることが沖縄県民の平和的生存権を侵
害するとして、適用違憲ないし運用違憲の主張をする。
しかし、「平和的生存権」なるものが具体的権利でなく裁判規範となり得な
いことは第三、二、1記載のとおりであるから、被告の右主張はその前提を欠
く。
3 「憲法一四条、九二条、九五条違反」について
被告は、米軍基地が沖縄県に集中していること及び駐留軍用地特措法が沖縄
県内の土地についてのみ適用されていること等を挙げ、「沖縄県民の不平等」
及び「沖縄県の不平等」をもたらしているとして、在沖米軍基地の使用のため
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に同法を適用することが憲法一四条、九二条及び九五条に違反する、と主張す
る。
確かに、被告が主張するように、沖縄県以外の都道府県においては、昭和三
七年を最後に駐留軍用地特措法が適用された例はないが、同法は、沖縄県内の
土地についてのみ適用される法律ではない。右のような結果は、米軍基地の用
地が、沖縄県以外の都道府県では国有地約八七パーセント、民公有地約一三パー
セントであるのに対し、沖縄県では国有地約三三・二パーセント、民公有地約
六六・八パーセントであるという違いがあり、しかも、沖縄県以外の都道府県
では昭和三七年以後民公有地につきすべて賃貸借契約又は売買契約が締結され、
駐留軍用地特措法を適用する必要がなかったから生じたにすぎない。
しかして、米軍基地が沖縄県に集中し、駐留軍用地特措法が沖縄県内の土地
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についてのみ適用されているとしても、そのことから直ちに本件土地の所有者
等を差別的に取り扱ったことになるものではない(具体的な個人を捨象した
「沖縄県民の平等権」は観念することはできない。)。なお、憲法一四条は、
「国民」を平等に取り扱うことを保障しているのであって、地方公共団体(都
道府県)を平等に取り扱うことを保障していないから、「沖縄県の不平等」が
問題となる余地はない。確かに、憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各
条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用される(最高裁昭和四五年六
月二四日大法廷判決・民集二四巻六号六二五ページ)から、憲法一四条も法人
に適用されることがあるが、人権の保障規定は、個人の自由を公権力の侵害か
ら擁護することを目的とするから、地方公共団体(都道府県)に人権を享有す
る主体性を肯定することはできない。
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憲法九二条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項が、地方自治法の
本旨(すなわち、憲法九三条で具体化されている住民自治の原則及び憲法九四
条で具体化されている団体自治の原則)に基づいて、法律で定められなければ
ならない、という趣旨であるから、米軍基地が沖縄県に集中し、駐留軍用地特
措法が沖縄県内の土地についてのみ適用されているとしても、憲法九二条違反
が問題となる余地もない。
憲法九五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」とは、その
地方公共団体そのものの組織、運営又は機能に関する法律を意味する。したがっ
て、駐留軍用地特措法がこれに当たることを前提とする被告の主張も、失当で
ある。
4 「憲法二九条違反」について
被告は、本件土地に駐留軍用地侍措法を適用して強制使用手続をすることは
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憲法二九条三項の「公共のために用ひる」場合に該当せず、同条項に違反する
と主張する。
しかし、被告の主張は、その実質は、本件使用認定が駐留軍用地特措法三条
に規定する要件を満たしていないことをいうところ、本件訴訟において本件使
用認定の適法違法ないし有効無効は審査の範囲外である。なお、本件使用認定
に何ら違法性がないことは、後記三記載のとおりである。
二 使用の認定の有効無効の審査方法
仮に、被告が原告の本件使用認定に重大かつ明白な瑕疵があるか否かについて
審査をすることがてきるとしても、駐留軍用地特措法五条、三条にいう「駐留軍
の用に供するため土地等を必要とする」かどうか、「その土地等を駐留軍の用に
供することが適正かつ合理的である」かどうかの判断は、日米安保条約及び地位
協定に基づく国際法上の義務の履行と密接に関連し、高度の政治的判断を要する
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から、内閣総理大臣の広範な裁量にゆだねられている。したがって、土地の使用
の認定については、原告(内閣総理大巨)の栽量権の範囲を超え又はその濫用が
ない限り、無効の問題はもとより違法の問題も生ずる余地がない(行政事件訴訟
法三〇条参照)。
そして、裁量処分については、その違法又は無効を主張する者において、行政
庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があること(無効を主張する場合には、これに
加えて、その瑕疵が重大かつ明白であること)を主張立証することを要する(最
高裁昭和四二年四月七日第二小法廷判決・民集二一巻三号五七二ページ参照)か
ら、本件においては、被告において、原告の本件使用認定に裁量権の範囲の逸脱
又は濫用があること及びその暇庇が重大かつ明白であることを主張立証しなけれ
ばならない。
しかし、かえって、後記三、3及び4に記載した事情に照らすと、本件使用認
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定に右事由がないことは明らかである。
三 裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことについて
最後に、念のために、原告が本件使用認定の申請が駐留軍用地特措法三条の使
用の認定の要件を満たすと判断したことに、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がない
ことを明らかにする。
1 使用の認定の要件該当性の判断方法
(一) まず、駐留軍用地特措法三条にいう「駐留軍の用に供するため土地等を必
要とする場合」の必要性は、個別の土地ごとに判断すべきではなく、当該土
地を含む施設及び区域を一体として判断すべきである。すなわち、駐留軍用
地は、多数の土地によって構成され、その性質上不可分一体となって駐留軍
の施設及び区域として機能している(そのうちの大部分の土地(約九九・八
パーセント)については国が所有者との間で賃貸借契約を締結しており、残
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余の極く一部の土地(約〇・二パーセント)について本件使用認定がされて
いるにすぎない。)。したがって、駐留軍用地とする必要性については当該
施設及び区域を全体として駐留軍の用に供することが必要かどうかという観
点から判断すべきであり、本件使用認定の必要性についても、本件土地を含
む当該施設及び区域を一体として駐留軍の用に供することが必要かどうかと
いう観点から判断すべきである。
(二) 次に、駐留軍用地特措法三条にいう「土地等を駐留軍の用に供することが
適正且つ合理的である」とは、被告が主張するように「適正」と「合理的」
とに分断して解釈すべきではなく、両者を合わせて対象となる土地等を駐留
軍の用に供することによって得られる公共の利益が駐留軍の用に供すること
によって失われる利益に優っていることを意味すると解すべきである。
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そして、この「適正且つ合理的」という要件についても、右の「必要性」
の要件と同様に、本件土地を含む当該施設及び区域を一体として駐留軍の用
に供することが「適正且つ合理的」かどうかという観点から判断すべきであ
る。
2 駐留軍用地を提供するに際しての考慮要素
(一) 日米両国は、我が国が米国に駐留軍用地を提供することにより、「日本国
の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」
という共通の目的を達成しようとしているが、具体的な駐留軍用地の選定に
当たっては、平和及び安全に対する両国の認識ないし考え方の相違等により、
我が国のいかなる地域に、どのような規模、内容の施設及び区域を供与する
か等について意見を調整して、具体的な駐留軍用地の提供が決定される。
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(二) 次に、我が国が駐留軍用地の提供に際して考慮すべき要素として、実現可
能性の問題がある。すなわち、駐留軍用地の候補として幾つかの土地がある
場合、どの土地に、どのような規模、内容の施設及び区域を供与するかは、
土地所有者ないし住民の協力を得ることができるか(賃貸借契約を締結する
ことができる土地がどの程度あるか)、施設及び区域の設置、管理に要する
費用がどの程度か、等の実現可能性を考虚して決定しなければならない。
3 本件駐留軍用地提供の高度の公益性
(一) 日米安保条約上の義務の履行の公益性
我が国は、米国に対し、日米安保条約六条に基づき、「日本国の安全に寄
与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ことを目
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的として、我が国の施設及び区域を提供する義務を負っている。しかるとこ
ろ、日本国憲法九八条二項は、「日本国が締結した条約・・・は、これを誠
実に遵守することを必要とする。」と規定している。このような憲法の精神
の下において、右の義務の履行は、条約上の義務の履行として、それ自体極
めて公益性が高い。しかも、右条約上の義務の履行として施設及び区域の提
供を受けた米国の軍隊の存在は、我が国の安全のみならず、極東における国
際の平和と安全の維持に大きく貢献しているが、このためには、施設及び区
域を継続的、安定的に提供することが必要である。
このように、駐留軍用地の提供によって実現される利益は、極めて高度の
公益性を有する。
(二) 沖縄における駐留軍用地提供に至る経緯及びその後の提供の経過
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戦後、米国は、極東における沖縄の軍事的、戦略的価値に着眼し、ほぼ一
貫して、沖縄に軍事基地を建設してこれを長期的に使用する意向を強く有し
ていた(米下院軍事委員会特別分科委員会の沖縄に関する調査報告審(いわ
ゆるブライス勧告。昭和三一年六月八日)、後記共同声明等)。
我が国政府は、昭和四〇年ごろから沖縄返還の実現に向けて米国政府との
折衝を開始した。日米両国政府は、これに前向きで取り組む姿勢を示す一方、
沖縄の米軍基地の継続使用が日本を含む極東における平和と安全のための不
可欠の前提となると認識していた(佐藤内閣総理大臣とジョンソン大統領と
の間の共同声明(昭和四〇年一月一三日)一一項、右両者間の共同声明(昭
和四二年一一月一五日)七項、佐藤内閣総理大臣とニクソン大統領との間の
共同声明(昭和四四年一一月二一日)六項、第六七回衆議院本会議における
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佐藤内閣総理大臣の所信表明演説等)。
琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(い
わゆる沖縄返還協定)三条一項が、日本国が日米安保条約及びこれに関連す
る取極に従い、この協定の効力発生の日に米国に対し沖縄における施設及び
区域の使用を許す旨を定めているのも、以上のような背景に由来する。
また、沖縄の復帰に際し、佐藤内閣総理大臣は、沖縄の米軍施設及び区域
が復帰後できる限り整理縮小されることが必要と考える理由を説明し、米国
ニクソン大統領は、双方が施設及び区域の調整を行うに当たってこれらの要
素は十分に考慮に入れられる旨答えた(佐藤内閣総理大臣とニクソン大統領
との間の共同発表(昭和四七年一月七日)四項、第六八回衆議院本会議にお
ける佐藤内閣総理大臣の施政方針演説)。
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なお、沖縄の復帰に際し、従前から存在した米軍施設及び区域の復帰後の
在り方について、日米両国で覚書(昭和四六年六月一七日の「了解覚書」)
が作成され、従前の各個の施設及び区域は、駐留軍用地として提供するもの
(A表)、自衛隊や運輸省に引き継ぐもの(B表)及び沖縄の復帰の際又は
その前に全部又は一部の使用が解除されるもの(C表)の三種に区分された。
そして、右A表記載の施設及び区域については、日米両国が、別段の合意を
しない限り、復帰の日から駐留軍の施設及び区域とすることを了解した(本
件土地を含む当該駐留軍用地は、右A表に組み入れられた。)。右B表、C
表記載の施設及び区域はすべて駐留軍用地とならなかった。なお、右A表記
載の施設及び区域についても、我が国は、日米合同委員会及び日米安全保障
協議委員会の場を通じて、その整理縮小のために努力してきており、現在ま
でに返還された施設及び区域の面積は別表のとおりである。
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右のように、沖縄に一定の範囲の駐留軍用地を確保することは、沖縄の復
帰の際の日米両国の基本的な政策であり、両国とも、本件使用認定に係る平
成七年五月九日の時点においても、右基本政策を維持している。
(三) 沖縄の地理的条件
沖縄は複数の島々から成り、アジア大陸に近く、日本列島の南西端に位置
しているから、日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の
維持に寄与するという日米安保条約六条の目的を達成するための地理的条件
を満たしている。
(四) 賃貸借契約締結者の存在
駐留軍用地特措法に基づく土地の使用はその所有者等の財産権の制限をも
たらすから、できるだけ任意の協力が得られることが望ましいので、国は、
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従前から、駐留軍の用に供すべき土地の所有者との合意(賃貸借契約等)に
よりその使用権原を取得することに努めてきている。その結果、本件使用認
定時である平成七年五月九日でみると、沖縄の全駐留軍用地(総面積約一億
五八二三万平方メートル)の約九九・八パーセントの土地の所有者との間に、
既に賃貸借契約を締結しているか、賃貸借の予約が成立している(もとより
新たに駐留軍用地として同様の面積の土地を確保しようとすれば、このよう
に多くの賃貸借契約等を締結することはできない。)。そして、残るわずか
約〇・二パーセントの土地(約三七万平方メートル)の所有者が、国との賃
貸借契約を締結することを拒否しているだけである(本件土地の所有者はこ
れに含まれる。)。
したがって、これらの賃貸借契約の締結に応じない所有者に係る土地につ
いて駐留軍用地特措法に基づく使用権原が取得されれば、従前の駐留軍用地
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をそのまま一体として提供することができる。
(五) 財政的な負担
従前から駐留軍用地として提供してきた土地を継続して提供すれば、維持
費が必要になるだけであるが、新たな土地を駐留軍用地として提供するとす
れば、右維持費のほかに新しい土地の確保にかかる経費並びに施設及び区域
の建設費、設置費が必要になるので、両者の問には財政的な負担において大
きな差がある。
したがって、従前から駐留軍用地として提供してきた土地を継続して提供
する方が、施設及び区域として新たな土地を提供する場合に比べ、財政的な
負担が少ない。
4 駐留軍用地の提供によって失われる利益
(一) 国が賃借した土地が駐留軍用地として提供されたとしても、ここでは、こ
---------- 改ページ--------75
れによって失われる利益を問題にする必要はほとんどない。
ある土地が駐留軍用地として駐留軍用地特措法に基づく使用の対象となり、
使用の裁決がされた場合、その土地の所有者に対しては、法令に基づいて正
当な補償金が支払われるから、当該土地の所有者が経済的な面で損失を受け
ることはない。
(二) もっとも、駐留軍用地の提供に際しては、このような駐留軍用地特措法に
基づく使用の対象となる土地ができる限り少ないことが望ましい。そのため
には、第一に駐留軍用地として提供する土地をできるだけ少なくすることが
必要であり、第二に国と駐留軍用地のために賃貸借契約を締結する所有者の
土地をできるだけ多くすることが必要であるが、国は、これらの点について
できる限りの努力を続けている。
5 被告は、本件土地を含めた駐留軍用地の過去の使用の違法性を主張するが、
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沖縄の復帰前の米軍用地又は復帰後の駐留軍用地としての土地の利用の違法性
は、本件使用認定の適法性の問題に何ら影響を与えるものではない。
6 右に述べたところを総合考慮すれば、本件使用認定が駐留軍用地特措法五条、
三条に規定する要件を優に充足していることは明らかである。
第五 被告平成八年七月二九日付け求釈明書について
一 「第二 求釈明事項」一について
国が本件土地を駐留軍用地として提供してきた経緯はこれまでに述べてきたと
おりであり、それ以上に釈明する必要はない。
二 同二について
日米安保条約六条は、米軍が我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与
するために我が国の施設及び区域を使用することを認めているところ、沖縄県を
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含め我が国に駐留する米軍が、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与
していることは明らかである。
右以上に釈明する必要はない。
三 同三について
1 1、(1)について
本件訴訟の争点と関係がないので、釈明する必要はない。
2 1、(2)ないし(4)について
国が、本件土地について、昭和四七年五月一五日から「沖縄における公用地
等の暫定使用に関する法律」二条一項一号ロに基づいて、昭和五一年からは賃
貸借契約に基づいてその使用権原を取得し、米国に対し駐留軍の用地として提
供してきたことは当事者間に争いがなく、また、本件土地が「楚辺通信所」内
に存し、昭和四七年五月一五日以前から駐留軍の用地として提供されできたこ
---------- 改ページ--------78
とは被告が第二準備書面の一九九ページ以下で認めている。そして、昭和四七
年五月一五日の日米合同委員会において、それまで「楚辺海軍通信補助施設」
及び「楚辺方向探知東サイト」として使用されてきた施設及び区域をそのまま
「楚辺通信所」の施設及び区域として使用することに合意したのであり、右合
意に係る施設及び区域に本件土地が含まれることは明らかである。
右以上に釈明する必要はない。
四 同四について
釈明する必要はない。
五 同五について
公益侵害の要件については、訴状「請求の原因」八、3及び原告第一準備書面
二、5で主張したとおりであり、釈明する必要はない。
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六 同六について
本準備書面で述べる以上に釈明する必要はない。
---------- 改ページ--------
別表
沖縄における駐留軍施設及び区域の年度別返還状況
平成8年7月1日現在
(単位:千平方メートル)
┌─────┬─────────────────┬────────┐
│ │ 区 分 │ │
│ 年 度 ├────────┬────────┤ 計 │
│ │ 民 有 │ 公 有 │ │
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│昭・47 │ 228│ 107│ 334│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 48 │ 3.424│ 630│ 4.054│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 49 │ 5.557│ 293│ 5.850│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 50 │ 2.037│ 94│ 2.131│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 51 │ 3.236│ 223│ 3.491│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 52 │ 2.236│ 470│ 2.706│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 53 │ 174│ 0│ 175│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 54 │ 991│ 50│ 1.042│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 55 │ 142│ 8│ 151│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 56 │ 2.659│ 74│ 2.733│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 57 │ 447│ 438│ 885│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 58 │ 296│ 7│ 304│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 59 │ 87│ 8│ 95│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 60 │ 98│ 52│ 150│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 61 │ 277│ 23│ 300│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 62 │ 1.998│ 33│ 2.031│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 63 │ 9│ 0│ 9│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 平・元 │ 13│ 4│ 17│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 2 │ 59│ 1│ 60│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 3 │ 4│ 22│ 26│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 4 │ 59│ 2│ 61│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 5 │ 32│ 0│ 32│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 6 │ 201│ 561│ 763│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 7 │ 544│ 483│ 1.026│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 8 │ 21│ 1│ 22│
├─────┼────────┼────────┼────────┤
│ 計 │ 24.863│ 3.582│ 28.445│
└─────┴────────┴────────┴────────┘
注1:本表は、地位協定2条1項(a)に基づき米軍に提供している施設及び
区域(いわゆる専用施設)について返還された民公有地を示す。
注2:計数は、4捨5入によっているので符合しないことがある。
runner@jca.or.jp